委託契約書のアーカイブ

テナントビルのビル管理会社への契約委任の可否

排出事業者と処理業者の双方のクライアントから頻繁にいただく質問なのですが、
「行政刷新会議資料に、『テナントは産業廃棄物処理委託契約をビル管理会社に委任できる』と書いてありますので、ビル管理会社が排出事業者として契約できるんですよね」というものがあります。

個人的には、私もその方が社会効率性が高いと思うし、問題もないと思いたいです。

しかし、廃棄物処理法を忠実に解釈・運用すると、上記の方法には問題があります。

その理由を解説する前に、まずは行政刷新会議資料そのものを見ておきましょう。

行政刷新会議グリーンイノベーションWG資料 p79 

行政刷新会議事務局からの問題提起

 テナントビル、ショッピングモール、商店街など、複数の事業者が共同して3Rを推進することが適切かつ可能な場合がある。このような場合、マニフェストはビルの管理会社等が自らの名義で交付等の事務を行ってもよいとされているが、委託契約は個々の事業者が締結する必要がある。しかし、個々のテナントが処理委託契約を締結することは現実的ではなく、かつ複数の排出事業者の連携による3Rを阻害している。
 したがって、当事者間の契約に基づき、これらのグループを代表するものが排出事業者となることで、全体の廃棄物の3R促進および適正な処理委託を可能とするべきである。

環境省の回答

・契約締結に関し、委任状を交付し委任するのであれば、各テナント会社はその排出事業者責任までをも転嫁しうるものではないが、ビル維持管理会社等が一括して委託契約を締結することは可能である。
・なお、廃棄物処理法上、産業廃棄物の処理を委託する場合には、当該産業廃棄物の処分の場所や、受託者の許可の範囲等を記載した委託契約書により行うことを義務付け、委託者である排出事業者に、受託者が適切に当該産業廃棄物の処理の事業を行えるかどうかを確認させ、排出事業者責任の徹底を図っているところであり、この趣旨からは、委託者である排出事業者が受託者と自ら直接契約を締結することが望ましい。

環境省の回答を斜め読みすると、「委任状を交付したらOKなのね」と解釈する人が多いと思います。

しかし、本質的に重要な部分は、赤字の部分「各テナント会社はその排出事業者責任までをも転嫁しうるものではない
ここなんです。

「委任状交付したらOK」と解釈する人は、
「ビル管理会社と処理業者の2者契約で良いのだ」と考えていると思いますが、

それだと、各テナントの排出事業者責任を、全面的にビル管理会社に転嫁していることになります。

環境省の解釈を正確に理解するためには、「委任」の定義を理解する必要があります。

法律的には、委任とは、「ある事務の処理を自分以外の他人に任せること」になります。

私の業務で言うと、許認可申請事務の委任を受け、行政庁に申請書を提出する行為が委任にあたります。

で、このケースを例にしてお話しすると、
100社から産業廃棄物収集運搬業の許可申請事務の委任を私が受けたとします。

私は100通りの許可申請書を作ることになりますが、
その時、許可を受けようとするそれぞれの申請者は100通とも「尾上雅典」になるのでしょうか?

違いますね。依頼者の100社の名称をそれぞれ書くことになります。

私は、あくまでも申請書提出の委任を受けただけであり、尾上雅典名義の許可を受けることを頼まれたわけではありません。

環境省が念押ししている、「排出事業者責任の転嫁」というのは、尾上雅典名義で100個の許可を取ることを指します。
※現実的には、同一行政の許可を同一人物が同内容で取るのは不可能ですが、たとえ話ですので(笑)。

おそらく、環境省が言いたいのは、
「委任状」をビル管理会社に交付すれば、ビル管理会社にテナントと処理業者の契約代理をしてもらうことは可能
ということだと思われます。

具体的にはこういうイメージですね。

甲 テナント
乙 甲代理人 ビル管理会社
丙 処理業者

上記の場合、ビル管理会社に委任状を交付しているので、
「乙 甲代理人 ビル管理会社」という表記は無くても良いと思います。

甲 テナント
乙 処理業者 という形式でも可という意味です。

逆に、こういうのはダメよというイメージはこうなります。

甲 ビル管理会社
乙 処理業者

「現実と乖離している」という批判や意見があることは重々承知しておりますし、私も実務的には、ビル管理会社と処理業者の直接契約でも問題は発生しないだろうと思います。

しかし、法律で委託契約書の作成が排出事業者に義務付けられている以上、やはり勝手な解釈は危険だと言えます。

もっとも、現状では、テナントが廃棄物処理費を個別に負担しているケースは少なそうですから、
上記の方針を徹底した場合でも、実質的にはテナントは契約書にハンコを押すだけとなります。

本当に大変なのは、テナントごとの委託契約書を用意するビル管理会社だけですね。

通常の賃貸借契約時に一緒に準備しておけば、それほど大変な手間でもありませんが。

※下記バナーの応援クリック投票をよろしくお願いします。
にほんブログ村 環境ブログ 廃棄物・リサイクルへ

委託契約書に関する誤解集

今回は委託契約書に関してよく耳にする誤解についての特集です。

誤解1 「契約書」ではなく、「覚書」というタイトルで委託契約をするのは廃棄物処理法違反だ。

正解 契約書のタイトルが、「契約書」であっても、「覚書」であっても、当事者が合意をし、法定記載事項を満たした文書であれば、法的な効力は一緒です。
 肝心なのは、法定記載事項を網羅した文書を取り交わすことです。

誤解2 印紙を貼っていない委託契約書は廃棄物処理法違反だ。

正解 印紙の添付がないからといって、契約書の効力には影響がありません。そのため、印紙の添付がない委託契約書も、法定記載事項さえ満たしていれば有効です。
 ただし、契約書文書に印紙の添付がないということは、印紙税の脱税になります。

誤解3 排出事業者側のみで契約書正本を保存。処理業者側では正本のコピーのみを保存しているような場合、正本のコピーには印紙の添付不要だ。

正解 国税庁のタックスアンサーには以下のように記載されています。

 契約書は、契約の当事者がそれぞれ相手方当事者などに対して成立した契約の内容を証明するために作られますから、各契約当事者が1通ずつ所持するのが一般的です。この場合、契約当事者の一方が所持するものに正本又は原本と表示し、他方が所持するものに写し、副本、謄本などと表示することがあります。しかし、写し、副本、謄本などと表示された文書であっても、おおむね次のような形態のものは、契約の成立を証明する目的で作成されたことが文書上明らかですから、印紙税の課税対象になります。

(1) 契約当事者の双方又は文書の所持者以外の一方の署名又は押印があるもの

(2) 正本などと相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの

 なお、所持する文書に自分だけの印鑑を押したものは、契約の相手方当事者に対して証明の用をなさないものですから、課税対象とはなりません。
 また、契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名若しくは押印又は証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません。
 このように、印紙税は、契約の成立を証明する目的で作成された文書を課税対象とするものですから、一つの契約について2通以上の文書が作成された場合であっても、その全部の文書がそれぞれ契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべて印紙税の課税対象となります。

 重要なのは赤字の部分なのですが、処理業者のところで契約書のコピーを保存するのは、「契約の成立を証明する目的」であるはずです。
 そうである以上、「単なるコピー」ではなく、印紙の課税対象である文書ということになりますので、印紙の添付が必要です。

 「いや、処理業者には委託契約書の保存義務がないので、これはただの“趣味”でコピーを保存しているのだ!」という場合なら、印紙の添付が不要となるかもしれませんが、
 取引の当事者として、トラブルがあった時の証拠資料にするためにコピーを保存しているのが一般的ですので、そのような詭弁が成立するとは思えませんね。

 今のところ
 「契約書 コピー 印紙不要」というキーワードで検索をすると、
 「契約書の単なるコピーには印紙不要」と説明している税理士のHPがたくさんヒットします。

 しかし、それらのHPをよく見ると、「単なるコピー」=「印紙不要」と言っているだけですので、
 実務的にコピーを保存している実態とはかい離した机上の空論となっています。

 特に、「本契約書の成立の証として本書を1通作成し、甲乙記名捺印の上、甲(排出者)が原本を保有し、乙(処理業者)は本書の写しを1通保有する。」と契約書に記載しているような場合は、
 もろに上述した「契約の成立を証明する目的」に抵触することになりますので、コピーにも印紙の添付必要と自認していることになります。

 HPの情報や専門家の意見をむやみに鵜呑みにせず、1次情報(この場合は、国税庁のタックスアンサー)を参照するのが一番安全です。

※今回の記事の内容を気に入った方は、下記のバナーのクリック投票をよろしくお願いします。
にほんブログ村 環境ブログ 廃棄物・リサイクルへ 

タグ

事前の再委託承諾契約は合法か?

最近、処理業者側の立場から、「委託契約書に最初から再委託承諾書を添付しておけば、自由に再委託できるのか?」という相談を、立て続けに受けています。

結論を解説する前に、再委託の法的根拠を見ておきましょう。

廃棄物処理法第14条
14  産業廃棄物収集運搬業者は、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を、産業廃棄物処分業者は、産業廃棄物の処分を、それぞれ他人に委託してはならない。ただし、 事業者から委託を受けた産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を政令で定める基準に従つて委託する場合その他環境省令で定める場合は、この限りでない。

原則的には、処理業者は排出事業者から頼まれた産業廃棄物の処理を、他社に委託(再委託)することはできないが、
事業者から委託を受けた産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を政令で定める基準に従つて委託する場合
環境省令で定める場合
に当てはまる場合のみ、再委託が例外的にできるという構成になっています。

まずは、 事業者から委託を受けた産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を政令で定める基準に従つて委託する場合の条件を見てみます。

廃棄物処理法施行令

(産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者の産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分等の再委託の基準)
第六条の十二  法第十四条第十四項 ただし書の政令で定める基準は、次のとおりとする。

一  あらかじめ、事業者に対して当該事業者から受託した産業廃棄物の運搬又は処分若しくは再生を委託しようとする者(以下「再受託者」という。)の氏名又は名称(法人にあつては、その代表者の氏名を含む。)及び当該委託が第六条の二第一号又は第二号に掲げる基準に適合するものであることを明らかにし、当該委託について当該事業者の書面(環境省令で定める事項が記載されたものに限る。)による承諾を受けていること。
二  再受託者に当該産業廃棄物を引き渡す際には、その受託に係る契約書に記載されている第六条の二第三号イからニまでに掲げる事項を記載した文書を再受託者に交付すること。
三  前二号に定めるもののほか、第六条の二第一号から第四号までの規定の例によること。

「あらかじめ、排出事業者から書面で承諾を受ければ再委託しても良い」と書かれています。
この条文単独だけを見ると、「なんだよ事前承諾さえ得ておけば、再委託も自由自在じゃないか!」と思われるかもしれませんが、それは間違いです。
その理由を解説する前に、残された「環境省令で定める場合」を見ておきましょう。
環境省令で定める場合

廃棄物処理法施行規則
(産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を再委託できる場合)
第十条の七  法第十四条第十四項 ただし書の規定による環境省令で定める場合は、次のとおりとする。

一  中間処理業者から委託を受けた産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除くものとし、当該中間処理業者が行つた処分に係る中間処理産業廃棄物に限る。以下この条において同じ。)の収集若しくは運搬又は処分(最終処分を除く。以下この条において同じ。)を次のイからトまでに定める基準に従つて委託する場合
イ 産業廃棄物の運搬にあつては、他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者であつて委託しようとする産業廃棄物の運搬がその事業の範囲に含まれるものに委託すること。
ロ(以下、略)
二  法第十九条の三 (第二号に係る部分に限る。)、第十九条の五又は第十九条の六の規定に基づき命令を受けた者が、当該命令を履行するために必要な範囲で、当該者に当該命令に係る産業廃棄物の処理を委託した者の承認を得て他人にその処理を委託する場合

これも、事前の書面承諾さえ取っておけば、再委託可能であるという趣旨に読めます。

ここからが重要なポイントなのですが、
再委託に関する条文だけを読むと、「何にも異常がないときの事前再委託承諾は可能かも?」と思えてしまいますが、
そもそも、排出事業者がそのような条件で最初から委託契約ができるかという問題があります。

白紙委任と同様の承諾書を、事の是非を理解していない排出事業者に書かせることが、再委託の方法として望ましいとは思えません。

もしこのような方法が認められるということになれば、
形式さえ整えれば、処理業者の裁量で、自由に廃棄物の横流し(再委託)が可能となり、
排出事業者と処理業者が直接契約する意味がまったくなくなります。

また、法律の条文には、直接具体的には書かれていませんが、
排出事業者の義務としては、委託先処理業者の能力を正確に理解して、その業者が間違いなく処理できる種類・量のみを委託するのが当然の責務です。

2010年改正で、委託先業者の処理状況の確認(現地確認など)が努力義務化されたことからも、最初から横流しを前提とした再委託承諾書付きの契約は、廃棄物処理法の趣旨に照らすと、「無効」と評価せざるを得ません。

再委託は、施設の故障等で、本来なら可能であった廃棄物処理が困難になった場合に、緊急避難措置としてのみ認められる例外的な手段です。

例外はあくまでも例外ですので、形式だけ整えて、例外を基本原則化するというのは、コンプライアンスとかけ離れた行為です。

処理業者の方は、くれぐれも、我田引水の法律解釈を強行しないようご注意ください。

判断に迷ったときは、法律の基本理念や、制度の存在理由に立ち戻り、客観的に認められるかどうかを自分で考えてみることです。

ブログランキング参加中 応援クリックよろしくお願いします。にほんブログ村 環境ブログ 廃棄物・リサイクルへ

タグ

e-文書法と産業廃棄物処理委託契約書の関係

平成16年12月に制定された法律ですので、今更ながらの感もいたしますが、実務的には(地味に)重要なトピックであるため、はじめて取り上げます。

通称「e-文書法」、正式な名称を「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と言いますが、
保存するのにかさばる契約書などを、書面ではなく電磁的記録として保存するのを認める法律です。

廃棄物処理法では、産業廃棄物の委託契約書などを書面として作成・保存する義務が定められていますが、
「e-文書法」と、「環境省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則(←長! (-_-;)」に基づき、委託契約書を書面ではなく電磁記録で運用保存することが認められています

大手の処理業者になるほど、膨大な委託契約書の作成保存が必要となりますので、e-文書法のメリットを受けることができそうです。

ただし、e-文書法の適用対象は、上記の施行規則によって限定列挙されていますので、全ての書類が電子保存可能というわけではありません!

具体的に施行規則で電子保存が認められている文書は下記のとおりです。

電子保存可能な文書(上記施行規則第3条及び別表1)

    一般廃棄物処理業者の帳簿
    産業廃棄物処理業者の帳簿
    産業廃棄物処理施設の設置事業者の帳簿
    特別管理産業廃棄物排出事業者の帳簿
    情報処理センターの帳簿
    一般廃棄物を船舶で運搬する際に備え付ける書類
    産業廃棄物を船舶または車両で運搬する際に備え付ける書類
    産業廃棄物処理委託契約書とその添付書類(許可証の写しなど)
    産業廃棄物の再委託承諾書、再受託者に渡す文書

※2011年2月1日追記
1月28日の上記施行規則改正により、「処理困難通知の写し」も追加されました

実務上のポイントとしては、上記の9種類の文書のみが、電子保存可能な文書であることです。

上記の9種類には、産業廃棄物管理票(紙マニフェスト)が含まれていないことに注意が必要です。

紙マニフェストを電子化して運用する人はいないと思いますが、
「保存スペースがかさばるから」という理由で、交付後5年未満の紙マニフェストをスキャン後に捨て、PDFデータでしか保存しないというのは、廃棄物処理法違反になります!

紙マニフェストは返送後5年間(A票は交付後5年間)の保存義務があるからですね。

廃棄物処理法の規制趣旨からいっても、
紙マニフェストはそれぞれの当事者が保存する唯一無二の記録になりますので、万が一電子データが消失した場合、産業廃棄物を適切に処理したという記録が一切残らないことになります。

委託契約書の場合は、排出事業者と処理業者の双方が同じ文書を保存しているため、万が一のバックアップも可能ですが、紙マニフェストの場合はそうもいきません。

応用問題として、返送後7年を経過したマニフェストの場合はどうなるでしょうか?

この場合は、本来の5年間の保存義務の対象からは外れるため、スキャン後にPDFなどで保存しても何ら問題ありません。

え? 保存義務がないなら保存しなくてもいいんじゃないのか? 

確かに法律的な義務としてはそのとおりですが、行政処分の対象には時効がありませんので、過去の不法投棄が新たに発覚した場合、5年以上前の委託状況を報告聴取される可能性は十分あります。

そのような場面で、「5年前の書類だから全部捨てました<`~´>」では、措置命令の対象には絶対にならないとは言い切れません。

数万円で便利なスキャナが買える時代ですので、法律の保存期間を超えて、できるだけ長期間マニフェストや委託契約書は電子保存しておきたいものです。

三者一括契約の可否(3) 推奨できない理由その2

関連記事
三者一括契約の可否(1)
三者一括契約の可否(2)

前回は、三者一括契約をお薦めできない実質的な理由を解説いたしました。

今回はもう一つの実質的な理由を解説します。

再度言うまでもありませんが、三者契約とは、それぞれ属性が違う別人格の3つの主体が、一本の契約書によって、一括契約をすることです。

したがって、契約書の中身、例えば「収集運搬料金」などを変更したい場合は、契約書に登場する三者全員で協議し、合意をする必要があります。

場合によっては、収集運搬料金の決定とは関係が無い中間処理業者の一存で、収集運搬料金の変更が認められないという可能性も考えられます。

ただ単に、「三者一括契約にすると、契約書作成の手間が省けて楽」という理由だけならば、後々の契約変更の手間を考えると、三者一括契約は割に合う方法ではないと思われます。

あなたはどう考えますか?

タグ

三者一括契約の可否(2) 推奨できない理由その1

関連記事
三者一括契約の可否(1)

前回は、三者一括契約を一通の契約書で行っても違法ではないとご説明しました。

廃棄物処理法第12条第3項は、収集運搬は収集運搬業者に、中間処理は中間処理業者に、「それぞれ委託しなければならない」と決めているだけであり、契約書をそれぞれの業者と1通ずつ交わさなければならないとは書いていないからです。

しかし、だからといって、産業廃棄物の処理委託契約書をすべて1通の契約書で済ませてしまうことには、大きな問題があります。

今回は、その理由の解説です。

三者一括契約をお奨めできない理由 その1
「現地確認がおざなりになりやすい構造だから」

平成6年2月17日衛産20号という通知で、当時の厚生省から、三者契約の可否について、以下のような疑義解釈が示されています。

(三者契約)
問16 排出事業者が産業廃棄物処分業者Aと直接接触してAの能力等を確認することなく、産業廃棄物収集運搬業者Bの説明を聞いたのみで、AとBを契約相手とする、いわゆる三者契約を締結することは委託基準に反すると考えるがどうか。

答 お見込みのとおり。

この通知以後の行政の運用事例から判断すると、問の後段の部分、「いわゆる三者契約を締結することは委託基準に反する」が一人歩きしてしまった感があります。

重要なのはその前提条件で、「排出事業者が産業廃棄物処分業者Aと直接接触してAの能力等を確認することなく、産業廃棄物収集運搬業者Bの説明を聞いたのみで、AとBを契約相手とする」ことが委託基準違反なのだということです。

そのため、排出事業者が個々の委託先をキチンと訪問し、適切な確認作業を行ったうえで、三者一括契約をすること自体はこの通知でも否定していません。

問題は、三者一括契約をすることで、委託先の確認が適切に行われるようになるかどうかです。

先ほど紹介した疑義解釈は、排出事業者責任の不徹底が不法投棄の温床であることに鑑み発出されたものです。

三者一括契約は、ともすれば収集運搬業者が窓口として動き回ることで、排出事業者と中間処理業者が一度も会うことなく、契約行為だけが行われることがほとんどでした。

現在でも、排出事業者の所を訪問するのは収集運搬業者のみで、排出事業者と中間処理業者の間は、意識的に接点を持たない限り、直接会うことはほとんどありません。

二者契約が指導されている現状でもそうなのに、三者一括契約を基本的な契約スタイルとした場合は、さらに状況が悪くなることは間違いありません。

三者一括契約の方が、収集運搬業者がすべての判子を揃えてくれるので楽ですしね。
しかし、2010年の廃棄物処理法改正では、排出事業者の委託先業者の現地確認が(努力)義務化されます。

そうなると、三者一括契約は、違法ではないものの、中間処理業者の処理能力を実際に確認したという補強材料にはなりえません。むしろ、行政や警察の心象的には、ネガティブな印象を与えてしまいます。

人間は誰しも、放っておけば楽な方向に流れてしまいがちです。

あなたに三者契約を厳格に運用する自信があったとしても、あなたの後を引き継ぐ、知識と経験が不足している他人に対しても、あなたと同様の厳格な運用を求めることは無理です。

このように、三者一括契約は、書式そのものよりも、実際の運用結果から生じるリスクを考えると、まったくお奨めできない契約方式です。

違法か合法かという二者択一の判断ではなく、

「合法だけども、使う人によっては致命的なミスを起こしかねない不十分なツール」と、とらえる方が安全なのではないでしょうか。

タグ

三者一括契約の可否(1)

産業廃棄物処理委託契約をする際には、排出事業者と収集運搬事業者、排出事業者と中間処理事業者といった具合に、排出事業者がそれぞれの処理事業者と直接契約を締結するように指導されています。

このような契約形態を、「二者契約」と呼びます。

そのように指導される根拠としては、廃棄物処理法第12条第3項において、

3 事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。

と定められているからです。

ここで問題が一つ発生します。

上記の赤字の部分では、「それぞれ委託しなければならない」とされていますが、委託契約はそれぞれの事業者と締結するものの、委託契約書は「排出事業者」、「収集運搬事業者」、「中間処理事業者」の三者一括で契約、つまり一通の契約書で三者全てが契約を締結することは違法なのでしょうか?

合法か違法かという観点のみからすると、一通の契約書で三者をすべて揃えて契約をすることは違法ではありません。

廃棄物処理法では、三者一括契約を禁止する条項が存在しないからです。

ただし・・・

合法だからといって、実務的には、三者一括契約を積極的にはお奨めできません。

(続く)

タグ

廃棄物管理における重要な内部監査ポイント

ISO14001などの内部監査に有効なチェックポイントを解説します。
まずは委託契約書から
1.委託契約を結んだ上で、産業廃棄物の処理委託をしているかどうか
2.委託先の処理業者の許可は現在でも有効か
許可期限が満了している許可証を、そのまま委託契約書に添付している事例がよく見受けられます。
3.契約書に「単価」「数量」が記載されているか
月ごとに単価が変動するような場合は、「単価」の欄に「別途覚書で決定する」などと記載し、契約書と覚書を一緒に保存しておきましょう。
4.委託する産業廃棄物の種類は適法か
委託先業者の許可証をよく確認し、許可を持っていない産業廃棄物を委託しないよう注意します。
5.中間処理の委託の場合は、中間処理後の産業廃棄物の処分場所に注意
木くずなどの管理型品目の中間処理を委託しているのに、中間処理後の最終処分場所として「安定型処分場」が記載されていることがよくあります。
次はマニフェストについて
1.マニフェストがキチンと所定の場所に保存されているか
当り前の話ですが、まずはマニフェストが排出事業者によって発行され、排出事業者自身がチェックをすることが大原則です。
マニフェストがは、返送されてきたとき」から5年間保存しなくてはなりません。
2.委託契約書のとおりに、マニフェストが運用されているかどうか
運搬受託者や、処分受託者として、委託契約の相手方処理業者を記載しているかどうか
3.マニフェストの数量欄に記載はあるか
産業廃棄物の引き渡し時点に正確な重量がわからない場合でも、おおよその目安、たとえば「8立方メートルコンテナ分」などの、ある程度数量を把握できる記載をしておくことが重要です。
委託先処理業者で検量をしている場合は、返送されてくるマニフェストに、正確な重量を記載してもらいましょう。
廃棄物の重量(あるいは容量)は、料金の支払い根拠となる重要な数値です。
4.1枚のマニフェストで複数の産業廃棄物の処理を委託していないか
分離が著しく困難な混合廃棄物でない限り、産業廃棄物の各種類ごとに1枚のマニフェストを発行する必要があります。
パレット(木くず)とポリ袋(廃プラスチック類)の2つの処理を委託する場合、1台のトラックで両方を一緒に運搬することは可能ですが、「木くず」のマニフェスト、「廃プラスチック類」のマニフェストと、2枚のマニフェストを発行することが必要です。
5.マニフェスト発行後90日以内に、運搬終了報告が返ってきているか
特別管理産業廃棄物の場合は、発行後60日以内に返送されていなければなりません
6.マニフェスト発行後180日以内に、最終処分終了報告が返ってきているか
「5」と「6」が満たせていない場合は、排出事業者が委託先業者に確認をし、適切な措置を講じた上で、都道府県知事に報告する必要があります。

タグ

委託契約書の記載事項(2)

収集運搬の委託契約の場合には、中間処理場や最終処分場などの、具体的な運搬先を必ず記載しなければなりません。積替え・保管を行う場合は、積替え・保管を行う場所の所在地、その場所で保管できる産業廃棄物の種類や保管量の上限などを記載しなければなりません。また、積替え保管場所において、安定型産業廃棄物と他の産業廃棄物とを混合させてもよいかどうかを、契約書上で明らかにしておかなければなりません。

中間処理や最終処分を委託する場合は、「どのように」処理をするのかを特に明確にしなければなりません。具体的には、中間処理や最終処分を行う場所の所在地、「破砕」や「埋立」などの産業廃棄物の具体的な処理方法、処理施設の処理能力(例:1日当たり10トン)などを記載しなければなりません。

タグ

委託契約書の記載事項(1)

産業廃棄物処理の委託契約書に、記載しなければならない事項を大別すると、「誰と誰の契約なのか」「何を」「どのように」の3種類になります。

まず、「誰と誰の契約なのか」を明らかにするため、委託者である排出事業者と、受託者である産業廃棄物処理業者の名称などを記載します。

また、委託する産業廃棄物を処理するのに必要な、その処理業者が有している許可の内容を契約書に記載しなければなりません。

契約書の末尾に産業廃棄物処理業の許可証のコピーを添付し、適切な処理業者への委託であることを明確にすることも必要です。

次に、「何を」委託するのかを契約書上で明らかにするため、「木くず」や「廃油」などの具体的な産業廃棄物の種類とその数量を記載します。

「契約の時点では処理費の単価を決められない」という理由で、委託料金を記載していない契約書がよく見受けられますが、委託料金を記載しない契約書では、不適切な委託契約とみなされてしまいますので、注意が必要です。

契約時点で単価などを決定できない場合は、契約書には「別途覚書による」と記載し、後日覚書を取り交わした際に、契約書と覚書を合わせて綴るようにしておきましょう。

「どのように」委託するのかという点に関しては、産業廃棄物の発生工程や、性状・荷姿など、産業廃棄物を安全に処理するのに必要な情報提供の方法を、契約書に明記する必要があります。

産業廃棄物の処理後に、処理業者から排出事業者にその報告を行う方法を、契約書で定めておく必要があります。

通常は、マニフェストを返送することで報告を行うこととしています。

その他、契約の期間や、万が一契約解除になった場合に、残された産業廃棄物をどうやって処理するのか、なども必ず契約書に記載しなければなりません。

タグ