下請が自ら運搬できる条件が明らかに
先にお伝えしている、「第13回廃棄物処理制度専門委員会」において、改正法の条文からはわからなかった、政省令の詳細案が明らかにされました。
上記の委員会では、「帳簿の作成対象事業所の拡大」や「産業廃棄物収集運搬手続きの合理化」など、様々な論点が挙げられていましたが、今回は、多くの方が注目しているであろう「建設廃棄物を下請が運搬する際の取扱い」について解説します。
専門委員会では、環境省から、下請が産業廃棄物収集運搬業の許可無しに、即ち「自ら運搬」できる廃棄物の条件として、施行令を次のように改正したいという提案がされました。
下請が排出事業者として自ら運搬できる廃棄物は、次のすべての条件に該当する場合のみとする
- 建築物に係る修繕維持工事(新築、増築、解体を除く)、又は工事完成引渡し後に工事の一環として行われる軽微な修繕工事で、請負代金が500万円以下の工事
- 特別管理産業廃棄物以外の廃棄物であること
- 1回に運搬する廃棄物の容積が1㎥以下であることが明確な廃棄物
- 積替えのための保管を行わないもの
- 運搬先が元請業者の指定する保管場所又は処理施設で、廃棄物が排出される現場と同一の都道府県内にあること
- 下請が自ら運搬する廃棄物の種類、性状及び量、廃棄物が排出された現場、及び運搬先、廃棄物の運搬を行う期間を具体的に記載した「別紙」(元請と下請の両方の押印が必要)と、「請負契約の写し」を携行すること
※瑕疵補修工事の場合は、建築物その他の工作物の引渡しがなされた事実を確認できる資料も必要
というものでした。
ご覧いただくとわかるように、工作物の維持修繕工事などの場合にしか認められない条件となっていますので、世の中のすべての建設会社が恩恵を受けられるわけではありません。
事実上、「3」の条件にあるとおり、フレコンパック1袋分(1立方メートル)という、非常に少量の廃棄物をささやかに運ぶような場合しか想定していません。
現行案のまま施行令が改正されると、実務上大きな混乱が予想される条件としては、「5」と「6」に注意が必要です。
専門委員会でも、建設業界の委員から苦言が呈されていましたが、「5」の建設現場と同一の都道府県の保管場所か処理施設に運搬する場合に限るという制約をしてしまうと、県境のぎりぎりの場所で工事をしている場合、例えば東京都の江戸川区で工事をしているような場合は、隣県の千葉県で保管をした方が効率的な場合が多いのに、それが(収集運搬業の許可無しに)できないということになります。
環境省はこの条件を、「都道府県の監視の実効性を担保するため」と説明し、変更するつもりが無いと回答しましたが、まったく意味不明な論理です(笑)。
東京都と千葉県の間には関所や壁があるわけではないので、無理矢理行政管轄で分類する意味は本来ありません。
千葉県に東京都の現場で発生した廃棄物が流入することに何の問題があるのでしょうか?
(実際のところは、千葉県はそれを問題視し、流入規制をしていますが・・・)
注:あくまでも、廃棄物を自ら運搬する場合に限っての話で、収集運搬業の許可が無意味だと言っているのではありません。
同一の都道府県内に限るという条件は、現実無視の机上の空理空論に過ぎません。
不適切な保管や流入を防ぎたいのであれば、「発生場所から30km内の距離にある保管場所に限る」など、少量の廃棄物を運搬するのに無理がない範囲を指定する方が実効的です。
「6」の「保管場所等を記載した別紙」や「請負契約の写し」の携行という条件も厳しすぎます。
産業廃棄物の収集運搬車両には、委託契約書の写しの携行を義務付けていないのに、自ら運搬には、「請負契約の写し」の携行を義務付けるというのはアンバランスです。
これでは規制緩和ではなく、純然たる規制強化です。
環境省にそのような意図は無いのかもしれませんが、現実的に非常に使いにくい条件をわざわざ設定し、法律違反を増やそうとしているように感じられます。
これから、8月下旬から9月上旬にかけて、政省令の改正に関するパブリックコメントが募集されるそうですので、関係する業界の方は一致団結してコメントを提出する必要がありそうです。
色々な意味で、2010年の廃棄物処理法改正は、実務や日本の廃棄物処理制度に大きな影響を与えることになりそうです。
その他の政省令改正素案は、当ブログでも順に解説してまいりますが、明日発行するメルマガでは、一足先に総合的に解説いたします。
購読は無料で可能ですので、関心がある方は読者登録をしておいてください。
タグ
2010年8月5日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
2010年改正の逐条解説 第21条の3第3項
(建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外)
第21条の3
3 建設工事に伴い生ずる廃棄物(環境省令で定めるものに限る。)について当該建設工事に係る書面による請負契約で定めるところにより下請負人が自らその運搬を行う場合には、第七条第一項、第十二条第一項、第十二条の二第一項、第十四条第一項、第十四条の四第一項及び第十九条の三(同条の規定に係る罰則を 含む。)の規定の適用については、第一項の規定にかかわらず、当該下請負人を事業者とみなし、当該廃棄物を当該下請負人の廃棄物とみなす。
第21条の3第3項のエッセンスを抽出すると、次のような意味になります。
(建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外)
第21条の3
3 建設工事に伴い生ずる廃棄物(環境省令で定めるものに限る。)について下請負人が自らその運搬を行う場合には、第7条第1項(一般廃棄物の収集運搬許可)、第12条第1項(産業廃棄物 処理基準)、第12条の2第1項(特別管理産業廃棄物処理基準)、第14条第1項(産業廃棄物の収集運搬許可)、第14条の4第1項(特別管理産業廃棄物 の収集運搬許可)及び第19条の3(改善命令)の規定の適用については、(第21条の3)第1項の規定にかかわらず、当該下請負人を(排出)事業者とみな し、当該廃棄物を当該下請負人の廃棄物とみなす。
2010年5月20日付の事務連絡 建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理責任の元請業者への一元化について(事務連絡) では、21条の3第3項の趣旨を次のように解説しています。
(3) 改正法第21条の3第3項について
本項は、今後環境省令で定めることとなる少量の一定の廃棄物の運搬については、処理基準を遵守した上で自ら運搬(運搬に当たって行う保管を除く。)することを例外的に許容することとするものである。下請負人が本項により排出事業者とみなされるのは、本項の規定に基づいて下請負人が運搬を行う場合のみであり、かつ、本項の規定により適用されることとなる各規定に関する限りである。
すなわち、下請負人が自ら廃棄物の運搬を行う旨を含む請負契約が書面で確認できない場合は下請負人は運搬を行うに当たり許可が必要となり、本規定に基づき運搬を行えることとはならない。また、当該廃棄物が生じた建設工事の下請負人以外の者が運搬を行う場合には、改正法第21条の3第1項に基づき元請業者が排出事業者となる。
なお、当該規定により下請負人が行えることとなるのは運搬のみであり、処分や他人への委託(委託時のマニフェストに関する事務を含む。)については元請業者が行わなければならない。
また、本項の規定に基づいて下請負人が請負契約で定めるところにより運搬を行う場合は、元請業者から委託を受けて行うのではなく自ら運搬を行っているものと整理されることとなる。
本条のキモは、条文の中で赤字で囲った部分、「(環境省令で定めるものに限る。)」です。
6月3日現在、まだその環境省令の内容が明らかになっていませんが、環境省の担当者のインタビューなどを読む限り、対象となる廃棄物の範囲が非常に狭く限定されそうです。
そのため、下請業者が許可なしに広く建設廃棄物の運搬が認められるようになるわけではなく、
- ごく少量の廃棄物で
- かつ特定の範囲にあてはまるもので
- 「請負契約」で下請が運搬することが明示されている
場合に限り、下請の自ら運搬(=収集運搬業の許可不要)が認められることになりそうです。
環境省は、本条文の適用ケースとして
- 廃棄物を保管するのに十分なスペースが無い建設現場から
- 「請負契約」で、「元請」が指定した廃棄物保管場所まで
- 環境省令にあてはまる内容の廃棄物を「下請」が運搬する
ような、超具体的な事例しかあてはまらないと考えているようです。
今後注視すべきポイントは、「環境省令の内容」と「請負契約での定め方」です。
恐らく、これまでの実績を考えると、今年の9月か10月頃に、政省令の改正に関する通知が出されるはずです。
条文からは素直に読み取れない運用になりそうですので、規制の詳細が明らかになるのは当分先になりそうです。
タグ
2010年6月3日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |



