排出事業者が措置命令の対象になるケース Vol.1

講演終了後にいただく質問や意見の中で結構な頻度で現れてくるものが、「排出事業者が措置命令の対象になるケース」です。

法律の条文としては明確にその契機と対象者が示されているのですが、いかんせん読みづらい表現であるため、多くの方が読解を断念されるようです。

そこで、今回から、措置命令に関する条文や通知を分解し、詳細な解説を加えたいと思います。

連載の終盤では、措置命令の対象になるリスクを負わないための方策を提示したいと考えております。

それでは、今回は第1回目の記事ですので、まずは措置命令に関する条文を見ていただきます。

第十九条の五  産業廃棄物処理基準又は産業廃棄物保管基準(特別管理産業廃棄物にあつては、特別管理産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物保管基準)に適合しない産業廃棄物の保管、収集、運搬又は処分が行われた場合において、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるときは、都道府県知事(第十九条の三第三号に掲げる場合及び当該保管、収集、運搬又は処分を行つた者が当該産業廃棄物を輸入した者(その者の委託により収集、運搬又は処分を行つた者を含む。)である場合にあつては、環境大臣又は都道府県知事。次条及び第十九条の八において同じ。)は、必要な限度において、次に掲げる者(次条及び第十九条の八において「処分者等」という。)に対し、期限を定めて、その支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。

一  当該保管、収集、運搬又は処分を行つた者(第十一条第二項又は第三項の規定によりその事務として当該保管、収集、運搬又は処分を行つた市町村又は都道府県を除く。)
二  第十二条第五項若しくは第六項、第十二条の二第五項若しくは第六項、第十四条第十六項又は第十四条の四第十六項の規定に違反する委託により当該収集、運搬又は処分が行われたときは、当該委託をした者
三  当該産業廃棄物に係る産業廃棄物の発生から当該処分に至るまでの一連の処理の行程における管理票に係る義務(電子情報処理組織を使用する場合にあつては、その使用に係る義務を含む。)について、次のいずれかに該当する者があるときは、その者
イ 第十二条の三第一項(第十五条の四の七第二項において準用する場合を含む。以下このイにおいて同じ。)の規定に違反して、管理票を交付せず、又は第十二条の三第一項に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして管理票を交付した者
ロ 第十二条の三第三項前段の規定に違反して、管理票の写しを送付せず、又は同項前段に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして管理票の写しを送付した者
ハ 第十二条の三第三項後段の規定に違反して、管理票を回付しなかつた者
ニ 第十二条の三第四項若しくは第五項又は第十二条の五第五項の規定に違反して、管理票の写しを送付せず、又はこれらの規定に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして管理票の写しを送付した者
ホ 第十二条の三第二項、第六項、第九項又は第十項の規定に違反して、管理票又はその写しを保存しなかつた者
ヘ 第十二条の三第八項の規定に違反して、適切な措置を講じなかつた者
ト 第十二条の四第二項の規定に違反して、産業廃棄物の引渡しを受けた者
チ 第十二条の四第三項又は第四項の規定に違反して、送付又は報告をした者
リ 第十二条の五第一項(第十五条の四の七第二項において準用する場合を含む。)の規定による登録をする場合において虚偽の登録をした者
ヌ 第十二条の五第二項又は第三項の規定に違反して、報告せず、又は虚偽の報告をした者
ル 第十二条の五第十項の規定に違反して、適切な措置を講じなかつた者
四  前三号に掲げる者が第二十一条の三第二項に規定する下請負人である場合における同条第一項に規定する元請業者(当該運搬又は処分を他人に委託していた者(第十二条第五項若しくは第六項、第十二条の二第五項若しくは第六項、第十四条第十六項又は第十四条の四第十六項の規定に違反して、当該運搬又は処分を他人に委託していた者を除く。)を除く。)
五  当該保管、収集、運搬若しくは処分を行つた者若しくは前三号に掲げる者に対して当該保管、収集、運搬若しくは処分若しくは前三号に規定する規定に違反する行為(以下「当該処分等」という。)をすることを要求し、依頼し、若しくは唆し、又はこれらの者が当該処分等をすることを助けた者があるときは、その者

産業廃棄物の排出事業者に対する措置命令の根拠はもう1つあります。

第十九条の六  前条第一項に規定する場合において、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあり、かつ、次の各号のいずれにも該当すると認められるときは、都道府県知事は、その事業活動に伴い当該産業廃棄物を生じた事業者(当該産業廃棄物が中間処理産業廃棄物である場合にあつては当該産業廃棄物に係る産業廃棄物の発生から当該処分に至るまでの一連の処理の行程における事業者及び中間処理業者とし、当該収集、運搬又は処分が第十五条の四の三第一項の認定を受けた者の委託に係る収集、運搬又は処分である場合にあつては当該産業廃棄物に係る事業者及び当該認定を受けた者とし、処分者等を除く。以下「排出事業者等」という。)に対し、期限を定めて、支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。この場合において、当該支障の除去等の措置は、当該産業廃棄物の性状、数量、収集、運搬又は処分の方法その他の事情からみて相当な範囲内のものでなければならない。

一  処分者等の資力その他の事情からみて、処分者等のみによつては、支障の除去等の措置を講ずることが困難であり、又は講じても十分でないとき。
二  排出事業者等が当該産業廃棄物の処理に関し適正な対価を負担していないとき、当該収集、運搬又は処分が行われることを知り、又は知ることができたときその他第十二条第七項、第十二条の二第七項及び第十五条の四の三第三項において準用する第九条の九第九項の規定の趣旨に照らし排出事業者等に支障の除去等の措置を採らせることが適当であるとき。

この条文が読みにくくなっている最大の理由は、「第十二条」という数字がやたらたくさん出てくるためです。

法律の条文であるため、措置命令の対象を曖昧にするわけにはいかず、具体的にどんな行為が対象になるかを明示する必要があります。

そのため、たとえば委託基準違反が命令の対象になり得ることを示すためには、
「委託基準違反」と書かずに、
「第十二条第五項若しくは第六項(略)の規定に違反する委託により当該収集、運搬又は処分が行われたときは、当該委託をした者」と、命令の対象と条件を根拠条文を引用する形で具体的に表現することになります。

「第十二条第五項」が「委託基準のことだ」とわかるようになるためには、
・法律の条文を2つ用意し、右と左に並べ置いて読み比べる
・根拠条文が示されるたびに、その根拠条文の箇所を参照し直す
・「第十二条第五項」で要求される行動を一言で要約して、頭の中で置き換えておく
ことが必要となります。

一般的なビジネスマンには、ここまでして廃棄物処理法を読解する必要性や必然性はほとんどありません。

そのため、多くの方が条文の詳細を理解することを諦めている状況です。

次回の記事では、措置命令の条文をもう少し読みやすく加工します。

目指すところは、

「第十二条第五項」で要求される行動を一言で要約して、頭の中で置き換えておく

で、法律のモジュール化にあります。

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