2010年改正の逐条解説 第21条の3第4項

(建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外)
第21条の3
4 建設工事に伴い生ずる廃棄物について下請負人がその運搬又は処分を他人に委託する場合(当該廃棄物が産業廃棄物であり、かつ、当該下請負人が産業廃棄物収 集運搬業者若しくは産業廃棄物処分業者又は特別管理産業廃棄物収集運搬業者若しくは特別管理産業廃棄物処分業者である場合において、元請業者から委託を受 けた当該廃棄物の運搬又は処分を他人に委託するときを除く。)には、第六条の二第六項及び第七項、第十二条第五項から第七項まで、第十二条の二第五項から 第七項まで、第十二条の三並びに第十二条の五の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)の適用については、第一項の規定にかかわらず、当該下請負人を事業 者とみなし、当該廃棄物を当該下請負人の廃棄物とみなす。

第21条の3第4項のエッセンスを抽出すると、次のような意味になります。

(建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外)
第21条の3
4 建設工事に伴い生ずる廃棄物について下請負人がその運搬又は処分を他人に委託する場合(再委託を除く。)には、当該下請負人を排出事業者とみなし、下請人 に対し、委託基準の遵守と、マニフェストの運用を義務付ける。

2010年5月20日付の事務連絡 建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理責任の元請業者への一元化について(事務連絡) では、21条の3第4項の趣旨を次のように解説しています。

(4) 改正法第21条の3第4項について
本項は、下請負人が廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、下請負人に委託基準及びマニフェストを交付等する義務を適用し、廃棄物処理法の規定に基づく適正な処理が確保されるよう措置することとするものである。

下請負人が元請業者から受託した産業廃棄物の処理を再委託する場合には、従前どおり、当該元請業者には委託基準等が、当該下請負人には再委託基準等が適用されるものであり、本規定の適用は除外されることとなる。

改正法第21条の3第1項の規定によって元請業者が排出事業者となることにより、下請負人が廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する際には、下請負人が元請業者から受託した廃棄物の処理を再委託する場合を除き、何ら廃棄物処理法に基づく規定の適用がないこととなる。本項は、そのような場合であっても下請負人が不適正な委託を行わないように委託に関する諸規制を下請負人に課すものであり、下請負人が請け負った建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理を委託することを推奨する趣旨ではない。

なお、下請負人が廃棄物の運搬又は処分を他人に委託した場合であっても、それが元請業者の指示又は示唆により行われた場合には、元請業者から下請負人に対して当該運搬又は処分の委託があったと考えられ、元請業者に委託基準等が適用されることとなる。

本条は、識者の間でも、解釈がわかりにくいという悪評が高い条文です(笑)。

第1項で、「元請が排出事業者である」と言っているのに、第4項で、「下請に委託基準遵守とマニフェストの発行を義務付ける」と書いているため、余計に混乱してしまいます。

本条のキモは、上掲の事務連絡文書の赤字部分、「下請負人が不適正な委託を行わないように委託に関する諸規制を下請負人に課すもの」にあります。

具体的に言い換えると、第4項を規定することによって、下請業者の不適切な委託行為をあらかじめ防止したことになります。

このような事例を元に考えるとわかりやすいと思います。

「元請」と「下請」が一体となって施工している工事現場で、「下請」が独断に懇意の処理業者Xに廃棄物処理を委託し、処理業者Xが廃棄物を不法投棄してしまった!
このようなケースでは、誰を排出事業者として責任追及すれば良いのだろうか?
という場合です。

法律改正前でも、「元請」が建設廃棄物の排出事業者であることには違いがありませんが、今回のケースでは、「下請」が「元請」の意思とは関係なく委託行為をしました。

こうなると、「下請」は排出事業者ではないため、直接下請に排出事業者責任を問うことはできそうにありません。
また、「元請」は排出事業者ですが、言わば、現場で保管していた廃棄物を第三者によって持ち出され、勝手に不法投棄されたと言えなくもありませんので、「元請」に対して、直接排出事業者責任を問うのも難しそうです(委託行為や不法投棄に一切関与していないという前提でが)。

環境省としてみれば、「せっかく法律上で、元請に排出事業者責任を規定したのに、下請を間に挟むことによって、自由に脱法行為をされてはたまらない!」ということになりますので、あえて、第4項を規定し、下請に対しても法律の網の目をかぶせたということです。

常識的に考えると、上記の事例のような言い訳は、単なる屁理屈でしかありませんが、不適正処理が起こっている現場では、日々そのような屁理屈が横行し、行政がそれに反論するための証拠集めが必要となっています。

その意味では、今回解説した第4項は、行政にとっては大変使い勝手の良い条文ということが可能です。

環境省担当者のインタビュー記事を拝見していると、第4項の適用対象となるケースとして、

  • 元請が排出事業者責任を全く果たさないため、下請が元請の代わりに当事者として、委託契約を結ぶ必要がある現場

という、少し現実離れした事態を想定しているようです。

杞憂ではないかと笑うことも可能ですが、現実問題として、屁理屈が猛威をふるっているのも事実ですので、行政には、せっかく加えた条文を有効に活用し、今まで以上に迅速な取締りを期待したいと思います。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ