法改正のための検討項目(1)-4(まだまだ不十分なマニフェスト制度の浸透)

中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「廃棄物処理法」改正のための具体的な論点整理が図られています。
排出事業者責任に関する検討項目としては、下記の内容が挙げられています。

・排出事業者の産業廃棄物保管行為を行政が把握できるようにするべき
・建設系廃棄物の排出事業者は誰になるかを明確化するべき
・マニフェストをもっと適切に運用させるべき
・委託先の現地確認を義務付けよ!
・電子マニフェスト使用を義務付けよ!

今回は、「マニフェストをもっと適切に運用させるべき」について解説します。
まだまだ不十分なマニフェスト制度の浸透
マニフェストは、平成3年度から特別管理産業廃棄物に、平成9年度からすべての産業廃棄物に対して運用することが義務付けられました。
誤解している方が多いのですが、マニフェストの発行義務は産業廃棄物の排出事業者にあり、処理業者が発行すべき書類ではありません。
このことからも、マニフェスト本来の趣旨が浸透していないことがよくわかりますが、マニフェストは、産業廃棄物の処理状況を記録するための伝票ですので、適切に運用されないことには存在意義がなくなってしまいます。
近年、マニフェストの運用に関する締め付けは強化される一方です。
平成18年の政令改正により、2008年4月1日からは、マニフェストの交付実績(枚数や相手方など)を都道府県知事に報告する義務が発生しました。
ただし、この報告義務は「紙のマニフェスト」の発行者のみにかかり、「電子マニフェスト」の場合は、電子マニフェストの電子情報を管理している情報処理センターが、各都道府県知事に報告してくれるので、改めて報告する必要はありません。
産業廃棄物の適切な処理を進めるためには、「電子マニフェストの義務化が不可欠!」と考えている有識者や政府関係者は多いのですが、今回の専門委員会でも、少しその論調が表に現れていました。
電子マニフェストを義務化したところで、それを運用する当事者が不正に運用してしまうと、紙マニフェストと同じ結果になるだけですので、安易に義務化をするのは反対ですが
電子マニフェストには、「保存スペースが不要」「マニフェストの返送が不要」「処理終了後3日以内に報告があがる」など、メリットが多々あるのも事実ですので、今後普及が一層進むのは間違いなさそうです。
その他「委託先処理業者の現地確認を義務付けよ」という強硬な意見も出ているようですが、電子マニフェストの義務化と同様、法律によって規制すべきものではありません。
規制よりも、「現地見学をすることによって、委託先とのコミュニケーションが円滑に進む」など、具体的なメリットを得る方法を教えてあげる方が、より望ましい方向に社会は動いていくと思われます。
今回解説した、「電子マニフェストの義務化」や「現地確認の義務化」が、法律改正によって盛り込まれる可能性はほとんど無いと思われますが、法律の規制の有無に関係なく自社の廃棄物処理責任を果たすためには、少しずつシステムに取り込んでいくのが良さそうです。

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