昭和48年8月4日付環整61号 PCB使用部品を含む廃棄家電製品の処理について

いまだにこの通知が公開、つまり有効な通知として環境省のHPに掲載されていること自体が驚きです。

PCB対策の歴史的経緯を知るためには、この通知を見ることも少し役に立つかもしれません。
通知を読んでいると、当時の各省庁が縄張り争いをしている様子をうかがうことができます。

しかしながら、肝心の廃家電に含まれるPCB処理対策については、何も書かれていないに等しい通知です。

  1. 家電メーカーが廃家電からPCB使用部品を取り除き
  2. その後に残ったものを市町村が回収する

という回収スキームが主眼となっていますが、「家電リサイクル法」制定以前に、このようなスキームが当時の日本で成立していたとはとても思えません。

現実的には、市町村が廃家電としてPCB使用部分も一緒に回収し、それを不燃物として処分していたのが大半だと思われます。

PCBの毒性については、既に当時の政府には現在と同じくらいの知見があったはずですので、「政府はスキームを示すだけで、後は家電業界任せ」という姿勢は、無責任と言わざるを得ません。

ひょっとすると、環境省は、過去の失敗に学ぶ「反面教師」として、この不名誉な通知を掲載し続けているのかもしれませんね(苦笑)。

【 PCB使用部品を含む廃棄家電製品の処理について 】

公布日:昭和48年8月4日
環整61号

(都道府県廃棄物処理主管部(局)長あて厚生省環境衛生局環境整備課長通達)

PCB(ポリ塩化ビフエニール)は、昭和二九年以降四六年末までの間に、わが国で約五三、〇〇〇トンが使用されたが、その大口の使用先については、現在PCBの使用。保管状況の届出による管理体制の強化ならびに新規需要への出荷停止等の措置によりその処理対策が図られている。
いつぽう、一部のPCBは、家庭用電気製品(以下「家電製品」という。)にも使用されており、その実態は別添資料―一のとおりであつて、現在のところ環境汚染上の問題はないと考えられるが、今後の家電製品の廃棄傾向等を考慮し、将来の環境汚染の防止に万全を期すため、今回通商産業省において家電製品中のPCB使用部品の使用状況がとりまとめられたことを機会に、PCB使用部品を含む廃棄家電製品の処理に関し、左記要領に基づいて貴管下市町村を指導されたく通知する。
なお、同要領三によりメーカーがPCB使用部品の取りはずしを行なう対象製品のリストは別添資料|二(略)のとおりである。また、同要領八に関連し、メーカーにおけるPCB使用部品の取り外し実施の窓口は別添資料|三(略)のとおりであり、協議に際しては、メーカーと市町村の具体的な協力体制、PCB使用部品の取り外しのために著しい処理費用の増加があつた場合の費用分担のあり方等、同要領の具体的な実施細目がその対象となるものと考える。
本件に関し、厚生省環境衛生局長、通商産業省機械情報産業局長連名をもつて関係家電メーカー団体に協力を要請したので念のため申し添える。

(PCB使用部品を含む廃棄家電製品の処理要領)
一 一部の家電製品に使用されたPCB使用部品は、閉鎖型のものであるので、当該家電製 品が一般家庭で使用されている間は、環境汚染のおそれはない。しかしながら、これが 廃棄された場合における環境汚染の防止に万全を期するため、今後PCB使用部品を含む家電製品の廃棄処分に際しては、あらかじめPCB使用部品を取り外すことを原則とする。
二 PCB使用部品を含む家電製品のうち、当面の対策の対象とするものは、テレビ(白黒、カラー共)、ルームクーラー及び電子レンジ(以下「対象製品」という。)とする。
三 廃棄家電製品については、原則として従来どおり市町村が収集、運搬および処分を行なうものとするが、PCB使用部品を含む対象製品については、処分に際してあらかじめメーカーによりPCB使用部品の取り外しを行なうものとする。
四 市町村は、PCB使用部品の取り外し状況について必要に応じてチエツクする。
五 取り外したPCB使用部品は、当分の間メーカーがこれを保管する。
六 取り外したPCB使用部品の適正な処理については、環境庁・厚生省・通産省が協議の 上その方法を定め、これに基づいて通産省がメーカーを指導する。
七 PCB使用部品の取り外し、保管について通産省は、メーカーを指導する。
八 本要領実施に係る具体的方法等について、県・市町村・メーカーの間で協議の場を設けることとする。

別表
一部の家電製品に使用されたPCB使用部品の実態等
一 家電製品にPCB入りコンデンサー等の部品を使用することは、行政指導により昭和   四七年八月末をもつて事実上禁止されているが、それ以前において一部の家電製品にこれが使用されていた。その使用量は八〇〇トン程度(わが国PCB総使用量の一・四%)と量的には少なく、かつ製品単位の含有量も微量である。
二 家電製品にPCBが使用されたのは、古くは昭和二八年からであり、製品の耐用年数   等を勘案すれば現在なお各家庭で保有されているものは五四〇トン程度と推計され、そのうち、電子レンジ、ルームクーラー、テレビの三品目で九五%程度を占めている。
三 一部家電製品に使用されていたPCB入りコンデンサーは、PCBを含浸させたペーパー をアルミ箔で重ねて巻き、それをアルミ板、鉄板等で外側を覆い密封したものであり、 製品のキヤビネツト等の内側にビス等でもつて固くしめ取付けられている。従つて、製品の使用中においては、PCBが空気中にもれたり、発散することはなく、環境汚染のおそれはない。
四 現在、各市町村で行なつている埋立て等の処理によつて家電製品による環境汚染は 発生していないと考えられるが、全体としてのPCBの回収処理対策の一環として将来の汚染防止に万全を期する意味で別紙〔略〕の対策を講ずることとしたのである。
(注)使用量等の数値については、通商産業省機械情報産業局の資料によつた。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ