廃棄品が転売されやすい状況とは(ケース1 社長の意思が絶対的な会社)
前回(2016年1月14日)付の「処分済みだったはずの食品廃棄物がスーパーで売られるというリスク」の記事には、非常にたくさんの方からコメントを頂戴しました。
廃棄したはずの食品が、そのままスーパーで売られたという事実にそれだけ多くの方が衝撃を受けたということになりましょうか。
このような衝撃的な事件が起こるたびに、産業廃棄物処理業界全体に対する目が、一時的にせよ非常に厳しくなり、個々の企業にとっては謂れのない誹謗中傷がなされることもありますので、そちらの影響を大変危惧しております。
そこで、今回から、廃棄品が転売されやすい状況を挙げますので、商品を確実に処分委託したい場合の参考としてください。
ケース1 社長の意思が絶対的な会社
このケースには、上記以外にも複数の特徴があります。
- 社長がオーナーでもある
- 年商1億円以下の比較的零細な企業規模
- 慢性的な債務超過状態である
- 社長の金遣いが荒い
- 業歴が15年以上
- 従業員に社長の指示に従う従順性はあるが、主体性はない
これらの条件のすべてが当てはまっている場合は、廃棄処分を頼んだ商品や機器が勝手に横流しされる確率が高まります。
※上記はビーフカツを転売した処理業者に関する言及ではなく、筆者の経験則から導き出した一般論です。
大部分の産業廃棄物処理企業の経営者は、たとえ企業規模が零細であったとしても、今回の事件のように廃棄予定の食品を食材として売却するようなことはしません。
廃棄品を自分の私利私欲のために他人に食べさせても平気という経営者は滅多にいません。
仮に売ろうと思っても、一度産業廃棄物処理場に入った食品を、一般的な常識を持ったバイヤーが買うわけはありませんので、売却先を探そうと思う気持ちすら湧かないという方が正確でしょう。
今回のビーフカツ転売事件のようなことは、産業廃棄物処理業者と(最初の)バイヤーが共謀しなければ起こりようがない、という点は強調しておきたいと思います。
しかしながら、実際には、そのようなほとんど有り得ない事件が起こってしまいましたが、
その背景には、件の処理業者ならではの特殊な事情があったものと思われます。
2016年1月18日付 産経WEST 「元は0円→33円→スーパー店頭では80円 4卸業者仲介し流通」
カレーチェーン店「CoCo壱番屋」が廃棄した冷凍ビーフカツが横流しされた事件で、カツは、四つの卸業者を経て愛知県内のスーパーで販売されていたことが18日、分かった。委託料を受け取りカツを廃棄するはずだった産業廃棄物処理業者「ダイコー」(愛知県稲沢市)が、0円のカツを製麺業者「みのりフーズ」(岐阜県羽島市)に1枚約33円で売り、さらに3社が転売。愛知県津島市のスーパーで店頭に並んだ際には約80円になっていた。
各紙の報道では、ビーフカツを約3万枚転売したとのことなので、1枚当たり33円ということは、転売をした処理業者には約100万円の現金収入があったことになります。
一般的な感覚からすると、100万円の現金収入は非常に高額に見えますが、
この現金収入は表に出せない収入であるため、「会社の帳簿に記載しない収入として処理する」か、「社長が個人的に懐した」のいずれかになりそうです。
いずれにせよ、食品としては売ってはいけない物を流通させている以上、後日悪事が発覚するリスクがある金です。
たとえば、年商が5億円以上ある処理企業の場合、わずか100万円の現金で会社の将来をすべて台無しにするよりは、会社の継続を重視して、そのような危ない取引には手を出さないというのが合理的な結論になります。
我々は日常的に「メリット」と「デメリット」を比較衡量して判断をしていますが、
常識からすると有り得ない事件を起こす人は、「メリットを極大化」し、「デメリットを極小化、あるいはゼロと見る」傾向にあります。
会社の経営状況が悪くなればなるほど、表に出せない現金収入の「メリット極大化」と「デメリット極小化」が同時に起きやすくなります。
倒産間近の会社が借金を重ねるのに抵抗が無くなるのと同様です。
目先の現金に目がくらみ、「会社や従業員の将来をなげうってでもそれが欲しい!」
と思う、あるいは思いやすい状況にある社長は、リスク要因そのものと言っても過言ではありません。
しかしながら、公然とそのような恥ずかしい動機を公言する社長はいませんので、取引をする排出事業者としては、財務諸表や社長の趣味嗜好等の様々な指標から、廃棄品が横流しされる確率を類推するしかない、ということになります。
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2016年1月18日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:危機対応