広報のコメントに見る企業のリスク耐性
10月21日に配信したメールマガジンを転載します。
熊本県南関町で、西部ガス関連企業の化学メーカーとその子会社の担当者が不法投棄をした疑いで逮捕されました。
http://news24.jp/nnn/news868929.html
いまどきこのような大胆、というよりはあまりにも無知な犯罪が行われたことに、まず驚きました。
化学メーカーはなぜ汚泥の処理を、処理業の許可を持っていない子会社の機械保守管理会社にさせたのでしょうか?
西部ガスという九州では有力な上場企業のグループ企業であるにも関わらず、なぜこんな犯罪ができたのでしょうか?
極めつけは、「産業廃棄物ではなく一般に処理できる廃棄物だと聞いていた」という広報のコメント。
一般に処理できる廃棄物というものがあるのか??
一般廃棄物のこと?
このコメント、間違った法律認識をさらに上塗りしていることになります。
わざわざ間違った認識を改めてメディアに表明する必要はまったくありません。言い訳にもなっていない危険なコメントをするよりも、
「経緯については現在調査中です。事情が判明次第、改めてお伝えいたします」
と、その場で経緯を明言することを避けるべきでした。責任者の逮捕という非常事態で混乱していたこともあると思いますが、広報たる者 非常時こそ落ち着いてメディアなどに対処する責任があります。
今回はたまたま廃棄物の不法投棄という、一般大衆の関心が薄い事件であったため、マスメディアから強烈な批判がなされることはありませんでしたが、
「遊園地での死亡事故」や「産地偽装」等に対して、マスメディアがいかに激烈な反応をしたかを思い出すと、大きな批判を受けなかったのは、ただ単に幸運だったと言わざるを得ません。
部長が逮捕された化学メーカーの「業務方針」を見ると、
3.法令遵守と公正な取引
関係法令および社内標準を守り、透明で公正な取引を行い、社会の一員としての信頼を獲得します。と書かれてありました。
法令遵守が単なるお題目と化していることに空しさを感じます。
しかし、日本企業の多くは、このメーカーと同じような環境認識をしているのではないでしょうか?
最近では、「反社会的勢力の排除条項」を契約書の中に入れる企業が増えてきましたが、これも単なるお題目で終わってしまうようでは無意味です。
契約書の中に一文を設けただけで安心してしまうのではなく、
経営者と企業で働く全社員が認識を共有できるようになるまで、繰り返し繰り返し、行動基準を説き続ける必要があります。企業のリスク耐性を高めるためには、出たとこ勝負の瞬発力に頼るのではなく、平常時から、誰からも後ろ指を指されないように気を付けるのが最善です。
廃棄物管理もその例外ではありません。
廃棄物管理に習熟するための一番の近道は、
行政や他社に責任転嫁せず、自ら廃棄物リテラシーを身につけることです。
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2011年10月24日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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