広島県が「小型家電リサイクル事業の採算性OK」と発表したが・・・

4月16日付 中国新聞 家電リサイクル「採算OK」

中国新聞の記事は「小型家電リサイクル事業の採算性OK」というタイトルですが、
その実態は、「破砕機を既に持っている処理業者が参入する場合のみ」という留保条件付きです。

しかも、どんな破砕機が必要なのかが書かれていませんので、広島県の公表を期待しながら待ちたいと思います。

記事を読んでも、採算性があるという事業モデルの詳細はわかりませんが、
「採算性がない」という事業モデルの詳細は明らかにしてくれています。

 広島県は、レアメタル(希少金属)や貴金属を含む小型家電をリサイクルする事業の採算性を探るため、呉、東広島両市で実施したモデル事業の結果をまとめた。破砕機などの設備を既に持つ業者が参入すれば、利益を出せると分析。呉市は今秋にもリサイクル事業を始める方針でいる。

 廃棄物の減量と資源の再利用を目的にした小型家電リサイクル法が1日、施行された。市町村は小型家電を分別収集し、国が認定したリサイクル事業者に引き渡す責務を負う。現在は大半を不燃物として市町村が収集、埋め立て処分している。

 県内で小型家電のリサイクルを推進するには、事業者の採算が合う必要がある。実験では呉市役所や両市の家電量販店など計6カ所に回収箱を設置。昨年8月から不要な小型家電を募った。1月末までの半年間で、携帯電話やデジタルカメラ、アダプターなど1・9トンが寄せられた。

 県内のリサイクル業者が手作業で分解し、基板225キロを選別。それを金属精錬所に持ち込み、レアメタルや貴金属を取り出した。

 携帯電話の「小型S基板」と呼ばれる基板1トン当たりで、バリウム13・5キロ▽ニッケル12・6キロ▽チタン5・2キロ―のレアメタルや、金0・5キロ▽銀3・1キロ▽銅261・1キロ―の貴金属を回収できることが分かった。県はコストや精錬所への売却額を試算、事業化の可能性を探った。

 分解作業に使う破砕機を既に持つ業者が参入し、無償で小型家電を引き取る場合、1トン当たり3万~7万8千円の利益が出るとの結果が出た。

 一方、1台7500万円するとされる破砕機を新たに購入して参入する業者は、月100トン以上集めないと採算が合わないとした。県内で月100トンを集めるのは不可能とされ、手作業だけで分解する場合も人件費がかさみ、1トン当たり35万8千~56万4千円の赤字になるとした。

 県立広島大生命環境学部(庄原市)の西村和之教授(環境衛生工学)は「民間事業として成り立つことが示された。ごみ減量化にもつながるリサイクルに市町は積極的に取り組むべきだ」と話す。

1台7,500万円というかなり具体的な値段が書かれていますが、一体どこのメーカーの破砕機なのでしょうか?(笑)

言うまでもなく破砕機メーカーはかなりの数がありますし、中古が流通することもありますので、値段だけでは能力や仕様がわかりません。

また、基盤ごと粉々に破砕をしてはリサイクルができませんので、どういった破砕方法で、どの工程で破砕をするのかという詳細な情報がないと、「破砕機の設置=採算性問題なし」とは評価ができません。

「手作業だけで分解する場合も人件費がかさみ、1トン当たり35万8千~56万4千円の赤字になる」という、ここだけ正直かつリアルな表現です。

部品を一つずつ解体すると時間が膨大にかかりますので、人件費が高騰して赤字ということだと思われます。

ただ、上述したように、破砕機にかければ解体時間が一気に短縮できるのかと言う疑問が残ります。

解体の時間が短縮するのは事実ですが、基盤などをうまく避けて破砕ができるのかということです。

破砕ではなく、切断をする機械であれば、うまく基盤を避けて分解ができるのかもしれませんが、記事には「破砕機」と書かれてありますので、実証実験に使ったのは破砕機なのでしょう。

既設の破砕機がある事業者なら採算性OKなのだとしても、
それでは新規参入が事実上不可能と言うことですから、現実的には、国全体で小型家電リサイクルが盛り上がりを見せるまで、かなりの時間がかかりそうです。

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