内部の人間が通報するというリスク

15年以上前の話になりますが、兵庫県職員であった時に、環境審議会の水環境部会の事務局を務めていたことがあります。

その部会の中で、元大阪大学教授の高名な学識者の方(当時すでにご高齢でしたが、まだご存命なのだろうか?)が、
「路上で洗剤を使って自動車の洗車をする人が多いが、側溝に入った洗剤は未処理のまま公共用水域に流れ込むので、規制をするべきだ」という趣旨の発言をされたことがあります。

それを聞いて、「規制をするのは無理そうだが、環境汚染している事実については確かにそのとおり」と思ったので、それ以降、路上では洗剤を用いて洗車をしなくなりました。

もっとも、筆者の場合は、ものぐさのこじつけに使っているだけかもしれませんが(笑)。

さて、今回ご紹介するニュースは、浄化槽汚泥の回収の際に汚水を道路側溝に不法投棄していたことが発覚し、行政処分の瀬戸際に追い込まれた事例です。

2015年7月7日付 中日新聞 浄化槽の水を違法処理 江南の業者、市が処分検討

 愛知県江南市の廃棄物処理業者「倉衛工業」が、今春までの数カ月間、市内のマンションなど5カ所の浄化槽から汚泥を回収する際、汚泥の上にたまった水を運搬せずに側溝などに流す行為を繰り返していたことが、市などへの取材で分かった。浄化槽法に違反し、廃棄物処理法にも違反する可能性がある。市は事実を確認し、業務停止を含めた処分の検討を始めた。

 市などによると、同社が違法に流していたとされるのは、浄化槽の底に沈んだ汚泥の上にたまる「中間水」と呼ばれる水。浄化槽法では、浄化槽で処理される前の排水を公共用水域に流すことを禁じている。吸い上げた中間水は汚泥などと一緒に廃棄物として処理しなければならないのに、同社は近くの側溝などに流し、運搬する量を減らしていたとみられる。

 同社の従業員が5月、市に違法行為を告発。市が会社への聞き取りなどの調査を進め、会社側が事実を認めたという。市によると、現時点で市民から健康被害などの訴えはない。

 社長は本紙の取材に「運搬に十分な車の台数を用意できないときや、現場に多くの車を止められないときに、現場責任者の判断で中間水を流していたことが分かった。関係者に謝罪し、二度とこのようなことはしない」と語った。

 東京商工リサーチによると、倉衛工業は1972年設立で従業員は29人。2014年9月期の売り上げは3億9400万円だった。

「汚水と言っても、元々は人間が排出した物なので、側溝に流しても害はない」と思いがちですが、
そもそも側溝は雨水を河川に放流するための道ですので、汚水を流すべき場所ではありません。

ゆえに、一般廃棄物である汚水の不法投棄に該当する可能性が非常に高いと思われます。

同様の事例としては、2013年に東京都北区でパッカー車に溜まった汚水を道路側溝に捨てていた運転手が、不法投棄罪で有罪になったケースがあります。

同業他社ではなく、従業員からの告発を契機として、違反が発覚した点が泣けてきます。

告発をした従業員が、
「環境汚染をしてはいけない!」という意識の高い人だったのか、
それとも、社内の待遇その他に不満を持っていたのかどうかはわかりませんが、
行政が約1か月で結論を出すほどの強力な証拠(写真等)を持参して、通報をしたものと思われます。

廃棄物処理法違反で法人が罰金刑に処せられた場合、許可取消を免れることができなくなります。

そのため、従業員に確実な証拠とともに通報を行われるというのは、非常に大きなリスクとなります。

「人の口に戸は立てられぬ」という言葉のとおり、経営者の強権をもって従業員の口をふさぐことはできません。

中小企業の場合は、経営者自身が、現場で違法な行動が行われていないかをチェックし続ける必要があります。

経営者自身が違法行為を指示するというのは論外ですが、
かの松下幸之助も生前言っていたように、「経営者の仕事は心配をすること」ですので、従業員の不満や勤務態度の異変を含めた社内の異常を感知するのが義務と言えます。

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