農業者による野焼きの是非

兵庫県にある「みた」ではなく「さんだ(三田)」市が、市内の農業者による野焼きに対し、所轄の三田警察署が急に取り締まりを強化したことに苦慮しているそうです。

2017年9月13日付 神戸新聞 「野焼き違法? 三田市と警察の見解相違に農家困惑

 稲わらや刈り取った草を屋外で焼く「野焼き」を巡り、兵庫県三田市内の農家に困惑が広がっている。廃棄物処理法はごみの野焼きを禁止しているが、農業を営む上でやむを得ない場合は例外とし、市は「農家の野焼きは違法ではない」という立場だ。一方、ここ1、2年、市には、三田署の取り締まりに対する農家からの苦情が急増している。12日の市議会一般質問でもこの問題は取り上げられ、森哲男市長が「市と三田署の見解に相違があり、協議が必要」との認識を示した。

 廃棄物処理法に基づき、市は8月下旬、焼却できるものを具体的に例示したチラシを市内の全農家に配布。稲わらのほか、田んぼのあぜや農地の斜面で刈り取った草、農道に繁茂する木や枝を伐採したものを挙げ、プラスチックや段ボールなどは全て違法とする。

 しかし9月に入り、市内の農地で草を燃やしていた60代男性は、三田署員に火を消すよう指導された。「昨年以降、近隣の農家も頻繁に指導を受け、困っている」と男性。風向きや時間帯など近隣への配慮は必要とした上で、「野焼きは害虫駆除にも効果があり、灰も肥料になる。これができないと農業が成り立たない」と打ち明ける。

個人的な体験として、産業廃棄物の仕事を担当した初日に初めて掛かってきた電話が、三田市環境課係長の「野焼きが野外焼却禁止から除外されている法的根拠の確認」でしたので、記事を感慨深く読みました(笑)。

肝心の電話は、配属初日で廃棄物処理法のハの字も知らない状態でしたので、先方の言う条文を取りあえず紐解き、「ハイ そうですね」と追認するだけという情けない状態でしたが(苦笑)。

さて、農業者による“農業を行う上でのやむを得ない”野焼きについては、廃棄物処理法第16条の2によって、罰則の対象から明確に除外されています。

(焼却禁止)

廃棄物処理法第十六条の二  何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。

一 一般廃棄物処理基準、特別管理一般廃棄物処理基準、産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物処理基準に従つて行う廃棄物の焼却
二 他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却
三 公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの

(焼却禁止の例外となる廃棄物の焼却)

廃棄物処理法施行令第十四条 法第十六条の二第三号の政令で定める廃棄物の焼却は、次のとおりとする。

一 国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却
二 震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却
三 風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却
四 農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却
五 たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの

しかしながら、神戸新聞の報道によると、三田署は、廃棄物処理法の条文を下記のように厳重に解釈しているようです。

 一方、8月末以降、市には、三田署に指導されるなどした農家から約20件の相談があった。市によると、三田署からは「草はクリーンセンターなどで処分できる。農業者の野焼きでも『やむを得ない』と認められる条件が必要」との見解が伝えられたという。

たしかに、廃棄物処理法施行令第14条第四号には、「やむ得ないものとして行われる廃棄物の焼却」と書かれていますので、論理的には、三田署の考えも正しいと言えなくもありません。

しかし、草の処理を清掃工場でできるとしても、「農地で刈った草をかき集めて、遠く離れた自宅に梱包して持って帰り、ゴミの日にまとめて出せ」というのは、現実的には非常に困難です。

それができないからこそ、また、記事でも農家の方がコメントしているように、野焼きは耕作上も不可欠の工程なのですから、「やむを得ない」範囲での野焼きは、取り締まりの対象としないというのが常識と思います。

野焼きと称しながら、ビニールハウスのビニールや、農作業とは無関係の木製パレット等を燃やしているのであれば、それを犯罪として取り締まるのは当然ですが、純然たる農作業に伴う野焼きまで取り締まるのはやり過ぎという感があります。

また、記事ではこう書かれていますが、

 同日の一般質問は多くの農家も傍聴。森市長は「市民を混乱させた」と陳謝し、今後、三田署と法解釈などについて協議する方針を示した。一方、三田署は「署が単独で判断できる問題ではなく、今後、県警本部の解釈を伝える」としている。

兵庫県警全体の判断ではなく、三田署、あるいは生活安全課の独自判断のような気がしてなりません(苦笑)。

警察が違法行為の取り締まりを行うこと自体はまったく否定しませんが、
せっかく頑張るのであれば、違法ではない農業者の野焼きよりも、「廃品の無許可回収業者」を捕まえる方が、公共の利益にも合致し、住民を犯罪から守ることにもたやすくつながると思います。

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