第三セクターによる許可証の偽造

ほぼ確実に発覚するにもかかわらず、後先考えない人が実行してしまう犯罪が公文書偽造と言えましょう。

公文書偽造を行う動機やきっかけは人それぞれですが、「結果を得るためならその手段を問わない」というパーソナリティの人が多いように思います。

許可証の偽造の場合、組織的に行われることはほぼ無く、個人がその場逃れの保身のために行う傾向にあると感じています。

今回ご紹介する福岡県豊前市の第三セクターで発覚した許可証の偽造も担当者の個人的犯罪なのでしょうか?それとも組織的犯罪なのでしょうか?

2021年12月4日付 西日本新聞 「福岡・豊前の三セク、バイオマス焼却灰を無断処理 県の許可証偽造か

 福岡県豊前市の第三セクター「豊前開発環境エネルギー」(白石康彦社長)が、木質バイオマス発電の焼却灰を受け入れる許可を得ないまま取り扱っているとして、同県環境部が指導していることが3日、分かった。同社の許可証は、一部について県発行の文書ではないと県が認めており、偽造した疑いも出ている。焼却灰の処理施設は現在停止中で、指導を受け同社が自主的に止めたとみられる。

 同社は2014年6月、企業10社と同市が出資して設立。九州電力の石炭火力発電所から排出される石炭灰を建材や水質改善などに役立つ石炭灰造粒物として再資源化するのを業務としてきた。

 ところが同市で20年1月に営業運転を始めた豊前バイオマス発電所、今年操業を始めた苅田バイオマス発電所(同県苅田町)などの焼却灰処分も請け負ってきた。その際、偽りの許可証を示し契約していたという。

「許可が無い品目の処理を過失で受ける」ということはよくある話ですが、「許可証を偽造した上で処理を受託する」という状況はあまり聞きません。

論理的には、契約書に添付された許可証の写しが福岡県の許可内容と異なるということは、「偽造の疑い」ではなく、「偽造した」としか考えられません。

よくある偽造手法は、許可の更新申請を怠ったために、旧許可証の有効期間を改ざんし、いまだに許可業者であるかのように装うというものですが、豊前開発環境エネルギーの偽造手法は次のようなものだったそうです。

 同県京築保健福祉環境事務所(行橋市)によると、廃棄物処理法では、石炭火力発電所の焼却灰の再生処分で許可を受けた場合、その取り扱いに限定される。木質バイオマス発電所の焼却灰の再生処分をするためには、新たに処分内容を拡大、変更することが必要と定めている。

 同社の許可証は、裏面にバイオマス発電の焼却灰受け入れを追記する形で示しており、通常の許可証にはないスタイルという。

「許可の履歴」欄に、取り扱う産業廃棄物の種類を拡大する内容を何らかの方法で書き足したようです。

通常の許可事務においては、記事にあるとおり、「〇年〇月〇日 変更許可」と変更許可の日付を書くだけとなりますので、「〇年〇月〇日 木質バイオマス発電所から発生する焼却灰を追加」などと改ざんすると、知識がある人からすると違和感がある表記となりますので、すぐに犯行がバレます。

と、ここで「許可内容は『燃え殻』であれば、石炭火力発電所の焼却灰と木質バイオマス発電所の焼却灰のいずれも『燃え殻』なので、変更許可を受ける必要はないんじゃね?」という疑問が出ます。

豊前開発環境エネルギーはHPを開設していませんし、福岡県の処分業者一覧を見ても、許可品目に燃え殻があることしかわかりませんので、実際の許可内容が単なる「燃え殻」だったのか、それとも「燃え殻(火力発電所から発生したものに限る)」という、限定されたものだったのかはわかりません。

新聞に掲載された福岡県のコメントからすると、後者の「燃え殻(〇〇に限る)」という、燃え殻(焼却灰)全般ではなく、性状や発生元が細かく限定された許可内容なのだろうと思います。

またここで疑問が出ます。
「なんで そんなに細かく限定した内容で許可申請したの?」

石炭がらのみならず、木くずの焼却灰の処理を(違法に)実際にしていたわけですから、取扱う品目を石炭焼却灰に限定する必要は無かったように思われます。

このあたりの事情は、実際の設備の仕様や、行政庁の許可方針によって大きく左右される内容ですので、何か特殊な事情があった可能性もあります。

いずれにせよ、設備としては木くずの焼却灰も処理する能力があったならば、適切に変更許可申請をすれば、ある程度の日数は掛かるものの、福岡県からフツーに変更許可を取得できたはずです。

その当たり前の手間を掛けずに、公文書偽造という重大な犯罪に手を染めた背景には、
「許可内容のミスが発覚すると、組織内での自分の地位が危うくなる」等の個人的な焦りがあり、
「許可証の裏に一文を追記するだけなので、誰にもバレないだろう」と、安易な現実逃避をした結果なのではないかと考えています。

福岡県には厳正な処分を期待します。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ