罰当たりな不法投棄

映画「リング」の影響が大きいと思いますが、飲み水を提供してきた「井戸」を汚すことに身体的な畏れを持っています。

井戸を敬い、畏れる人間からすると、「石綿含有産業廃棄物を井戸に不法投棄」という荒っぽい犯罪は、人としてやってはいけない行為に思いますが、それを実行した結果、逮捕されたという事例が報道されました。

2023年7月13日付 NHK 「アスベスト含む産業廃棄物を不法投棄か 解体業者2人を逮捕

警視庁によりますと、去年8月、住宅の解体工事で出たアスベストを含む産業廃棄物を小平市の工事現場に運び込んで井戸の跡地に埋めたなどとして廃棄物処理法違反の疑いが持たれています。

廃棄物は「スレート」と呼ばれる外壁に使われる建築資材などで、アスベストが使われていたため専用の処分場で処理する必要がありましたが、業者は作業にあたって処分場と契約していなかったということです。

調べに対しいずれも容疑を認め、このうち統括工事部長は「アスベストを含む資材の処分に困っていた。別の現場で井戸を埋める作業が入ったので捨てるよう指示した」などと供述しているということです。

現在の東京都小平市において、井戸水だけで暮らしている人はほぼ居ないと思われますので、井戸水を利用する人に危険が及ぶことは少ないのかもしれませんが、「よりにもよって、石綿含有産業廃棄物を井戸に捨てるなよ~」と嘆息してしまいました。

「井戸に不法投棄」というケースは、不法投棄としては珍しい事例かと思います。

そもそも、井戸自体が非常に小さな場所で、私有地内にあることから、不法投棄の対象として選ばれにくい状況にあります。

今回は、
・たまたま井戸の埋立工事も受任していた
・たまたま石綿含有産業廃棄物が手元に残っていた
そもそも、石綿含有産業廃棄物の処理委託契約をしていなかった
という条件が重なり、井戸にゴミを投げ捨てるという暴挙が起きてしまったものと思われます。

このうち、「そもそも、石綿含有産業廃棄物の処理委託契約をしていなかった」は、排出事業者として絶対にあってはならない法律違反ですので、厳重に処罰することが必要と思います。

現行法のままでは不可能ですが、
「『不法投棄』や『野外焼却』で有罪になった人は、欠格要件者として、一定期間建設業に携われない」くらいの厳しい制裁を科さないと、この手の犯罪はいつまで経っても無くならないようにも思います。

現行法では、役員や代表者でない限り、従業員として働く分には、不法投棄の前科が問題になることはありません。

上記のような措置を取るためには、複数の法律の改正が必要となりますので、実現する可能性は非常に低いと言わざるを得ません。

それにしても、「井戸にゴミを捨てると、何かの罰が当たるのじゃないか?」と、他人事ながらザワザワした気持ちになったことで、自分にそのような迷信的心情があることに初めて気がつきました(笑)。

国際日本文化研究センターが公開している「怪異・妖怪伝承データベース」によると、
イド(井戸)」では、

池田家に1人の美しい娘がいたが、とある事情により屋敷内の井戸に飛び込んで死に、その頃から同家の没落が始まったという。その後池田家の地は北日本相互銀行の用地となり、同行建設の折に井戸も無くなった。それ以降同行の行員で病弱になるものが少なくないという。遠野地方では井戸を埋めることは不吉の徴とされる。

という、岩手県の伝承事例が掲載されています。

井戸を塞いだり、汚したりすると、周辺にある他の井戸にも悪影響が出る可能性があるので、「タブー」として、井戸の埋立を禁止していたのでしょうか?

岩手県以外でも同様の伝承があると思いますので、ご存知の方がいらっしゃいましたら、是非当記事への「コメント」でご教示くださいませ。

※「怪異・妖怪伝承データベース」は、科学研究費補助金を元に作成された、「怪異」や「妖怪」を切り口にした、真っ当な民間伝承のデータベースなので、時間を忘れて読み耽ってしまいました。

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