廃棄物処理法施行規則改正(令和7年4月22日)Vol.4「委託契約書の追記事項(具体例)」
廃棄物処理法施行規則改正(令和7年4月22日)Vol.1「委託契約書の法定記載事項の追加」の続きとなります。
電子マニフェストに関する改正の最後の解説はもう少々お待ちください。
第1回目の記事に、ブログの読者の方から質問コメントをいただきました。
PRTR法で第1種指定化学物質の1種類(ニッケル)を届出していますが、
それは製品として出ていくので排出量は「0」です。
また年間の取扱量が1tonに満たない物も分析しなけらばならないのでしょうか。契約書に記入は不可能です。
顧問先のお客様からも同様の質問をいただいたことがありますので、おそらく、多くの方が共通の疑問を持っているテーマと思いましたので、改めて記事で整理することにしました。
まず、「ニッケルだけがPRTR法の届出対象」という点が非常に重要です。
今回のPRTR法関連の委託契約書の追記事項の条文を再掲します。
(R8.1.1以降の)廃棄物処理法施行規則第8条の4の2
令第六条の二第四号ヘ(令第六条の十二第四号の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の環境省令で定める事項は、次のとおりとする。
一~五 (略)
六
イ~ホ(略)
ヘ 委託者が特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律第2条第5項に規定する第一種指定化学物質等取扱事業者である場合であつて、かつ、委託する産業廃棄物に同条第二項に規定する第一種指定化学物質(同法第5条第1項の規定により第一種指定化学物質等取扱事業者が排出量及び移動量を把握しなければならない第一種指定化学物質に限る。)が含まれ、又は付着している場合には、その旨並びに当該産業廃棄物に含まれ、又は付着している当該物質の名称及び量又は割合
ト(略)
七~九(略)
これを読みやすくするため、「追記が必要となる委託者(排出事業者)の条件」と「追記すべき事項」の項目別に箇条書きにしました。
※無断転載防止措置として、オリジナル(ChatGPT作成)画像の透かしを入れております(笑)。
判断ポイントの要点は、「追記が必要な委託者の条件」の両方にあてはまるかどうかです。
質問いただいた読者の方の場合、
「1」の「委託者が特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律第2条第5項に規定する第一種指定化学物質等取扱事業者」には該当していますが、
「2」の「委託する産業廃棄物に第一種指定化学物質(同法第5条第1項の規定により第一種指定化学物質等取扱事業者が排出量及び移動量を把握しなければならない第一種指定化学物質に限る。)が含まれ、又は付着している」については、「排出量は0」とのことですので、委託する産業廃棄物には「ニッケル」が含まれず、この条件に該当していないものと思われます。
「追記が必要な委託者の条件」は、「1」と「2」の両方を満たさない限り、PRTR法に関する追記が必要な委託者には該当しません。
これが第1のポイント。
第2のポイントは、「PRTR法に基づく届出をした化学物質は何か?」です。
ご質問では、「年間の取扱量が1tonに満たない物も分析しなけらばならないのでしょうか?」とお書きいただいています。
具体的な生産状況を承知しておりませんが、「ニッケルのみが届出対象」という前提からは、「ニッケル以外は年間取扱量1t未満(特定第一種指定化学物質の場合は0.5t未満)のため、PRTR法の届出対象外」と考えられますので、「PRTR法の届出対象ではない指定化学物質については、産業廃棄物処理委託契約書への追記は不要」となります。
まとめ
産業廃棄物処理委託契約書への追記が必要となるPRTR法に基づく対象事業者かどうかを判断するためのポイントは2つあり
第1 「追記が必要になる委託者の条件2つに該当するかどうか」
第2 「PRTR法に基づく届出をした化学物質は何か?」
上記の2条件をすべて満たす場合は、
令和8年1月1日以降、「第一種指定化学物質(第一種指定化学物質等取扱事業者が排出量及び移動量を把握しなければならない第一種指定化学物質限定)が含まれ、または付着している旨」と「当該産業廃棄物に含まれ、または付着している当該物質の名称及び量又は割合」を委託契約書に追記する義務が生じます。
逆に、「PRTR法の届出対象はニッケルのみ」という企業で、「エチルベンゼンを含んだ塗料」を廃棄処分する場合は、「エチルベンゼン」自体はPRTR法の指定化学物質ではありますが、その企業の製造・使用量はPRTR法の規定値以下であるため、改めて産業廃棄物処理委託契約書に「エチルベンゼン」に関する追記をする必要は無い、となります。
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2025年8月3日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:2025年改正