廃棄物の野外焼却は犯罪です

青森県大鰐(おおわに)町というと、「大鰐温泉もやし」で有名です。

大鰐町役場 「大鰐温泉もやし」  より文章と画像を転載

 青森県の中南地域に位置する大鰐町には、古くから伝わる幻の冬野菜「大鰐温泉もやし」があります。

 温泉熱と温泉水のみを用いる温泉の町ならではの独特の栽培方法により、およそ350年以上前から栽培されてきた津軽伝統野菜の一つで、津軽三代藩主・信義公が大鰐で湯治する際は必ず献上したとされております。

 秘伝の大鰐温泉もやしは、 独特の芳香とシャキシャキとした歯触り、味の良さ、品質の高さで人気が高い大鰐町自慢の味です。

秘伝の温泉もやし

大鰐温泉もやしには、「豆もやし」と「そばもやし」の二種類があります。
豆の種類は 、先人が選び伝えてきた地域在来種で、豆もやしは 「小八豆(こはちまめ)」 という大豆の品種です。

他の品種では美味しいもやしになりません。「小八豆」は門外不出です。

そばもやしは、そばの品種を使用しています。
栽培の秘訣は、温泉もやしの名の通り「温泉」が栽培過程でふんだんに使用されているところにあります。
温泉の熱だけで地温を高めて栽培する土耕栽培で、栽培はもちろん洗浄・仕上げに至るまで水道水を一切使わず、温泉水のみを使用して育てます。

全行程一週間ほどで収穫となる大鰐温泉もやしの品質の良し悪しは種を蒔いてから4日後の成長で決まるため、土床の温度調節には熟練を要します。
大鰐温泉もやしは、「ワラ」で束ねているのが目印です。
昔と変わらず手作業で行い、伝統を受け継いでいます。

昨年6月、仕事がてらに東北地方を電車でほぼ1周した際、JR奥羽本線の「大鰐温泉駅」を通過した次の日、「大鰐町で製材所が木くずの野外焼却で失火をしたため、付近一帯の住居に引火して大火事になった」というニュースに接しました。

たまたま前日に大鰐温泉駅で電車が停車待ちとなったため、駅付近の様子をじっくりと見ることができましたので、「田畑のど真ん中というわけではない場所でなぜ野外焼却?」と大いに疑問を感じたものですが、あろうことか、その製材所は日常的に木くずの野外焼却を行っていたようです。

2025年1月7日付 NHK 「大鰐町の大規模火災 火元の製材所と役員ら書類送検

警察の捜査の結果、製材所が廃棄物処理の許可を得ていなかったにもかかわらず従業員がスギを加工したあとの皮、およそ11キロをドラム缶で焼却し、その場を離れたすきに火の粉が近くの木材に燃え移った可能性が高いことが分かったということです。

このため警察は7日、法人としての製材所と56歳の代表役員、それに59歳の従業員を廃棄物処理法違反と重過失失火の疑いで書類送検しました。

警察の調べに対し代表役員は「いつも焼却処分をしていた。火事になるかもしれないという認識はあった」と容疑を認めているということです。

報道では、廃棄物処理法の「野外焼却」と、刑法の「重過失失火罪」の2つの容疑で書類送検されたとあります。

「野外焼却」の場合は、「5年以下の懲役、もしくは1千万円以下の罰金、またはこの併科」の対象となり、
「重過失失火」の場合は、「3年以下の禁錮(2025年6月1日以降は拘禁刑)または150万円以下の罰金」の対象となります。

「重過失失火罪」よりも「野外焼却」の方が重い罰であることが、なかなかの衝撃です。

現在は、「廃棄物の野外焼却」は直罰(ちょくばつ)の対象であるため、行政の改善命令等を経ることなく、すぐさま逮捕される犯罪行為です。

ちなみに、20世紀においては、「野外焼却」は直罰の対象ではなかったため、行政の改善命令を経た後でないと、警察が逮捕できないという状況があったため、野外焼却を取り締まることが困難でした。

その反省もあって、2000年の廃棄物処理法改正で、野外焼却は直罰の対象になったわけです。

さて、このように厳罰で処される可能性の高い野外焼却については、すぐに苦情や通報の対象となり、今回の事件が起きた住居密集地の場合、煙が上がった段階で保健所や警察署に通報が行くことが多いように思います。

しかしながら、行為者は「いつも焼却処分をしていた。火事になるかもしれないという認識はあった」と、長年このような野外焼却を続けていたようですので、近隣の関係者の間でトラブルになっていた様子がうかがえません。

野外焼却が直罰の対象である以上、かくも長くの間野外焼却を放置し続けた責任は、行政と警察の双方にあると言わざるを得ませんが、苦情や通報が寄せられていなかったのであれば、それらの機関が管轄エリアをあまねくカバーし続けることは物理的に不可能であるため、盲点となっていた可能性もあります。

いずれにせよ、失火で我が家まで燃やされてしまっては割に合いませんので、「野外焼却は犯罪行為なので、見かけたらすぐ通報」を日本の常識としたいところです。

ただし、「農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却」等の違法とはならない除外規定がありますので、それらに該当しない野外焼却が犯罪となります。

※参考 当ブログ 2013年12月13日付記事 「野外焼却禁止の除外規定

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