実務で最大の弱点となるものは?

産業廃棄物管理実務において、排出事業者と産業廃棄物処理業者の別を問わず、「そこを突かれると痛い!」というポイントは何だと思われますか?

筆者の見解では、それは間違いなく「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」です。

もちろん、
排出事業者の場合は、「法定記載事項を網羅した委託契約書の作成・保存」
産業廃棄物処理業者の場合は、「産業廃棄物処理基準を遵守した操業」
が根本的に重要なことは言うまでもありません。

しかしながら、下記の3つの理由により、マニフェストは、後々の行政等からの責任追及や、最悪の場合は逮捕に結びつく決定的な証拠にもっともなりやすいものであるため、最大の注意が必要な実務と言えます。

理由その1 間違いやすい

nayamiマニフェスト自体はシンプルな様式ですが、シンプルであるがゆえに、記載方法に迷いが生じやすいのも事実。

「数量」しかり、「産業廃棄物の種類」しかり。

複数の種類の分別された産業廃棄物を1通のマニフェストの交付で済ませて良いか?
排出段階では「重さ」がわらかないので、「数量」欄は空欄のままで良いか?
等々、真面目に取り組めば取り組むほど、悩みが尽きない実務です。

また、マニフェストを交付した段階では記載をしてはいけない「最終処分の場所」(※直接最終処分を委託する場合を除く)等の存在もあり、担当者の混乱に拍車をかけています。

その結果、法的には間違った方法を正しいと思い込むようになると、後はそれを愚直に継続し、自分が担当の任を外れる際には、後任者に間違った内容を正しい方法として教え込む、という恐るべき負の拡大再生産フローに入ります。

一度この拡大再生産フローにはまってしまうと、担当者あるいは組織としては正しい方法と思い込んでいる以上、その間違いに自ら気付くということはほとんどありません。

マニフェストに関する誤解に気付くには、健康診断と同じく、外部の、しかも経験を積んだ専門家から定期的なチェックを受けるしかありません。

「ISOの審査員から定期的にチェックしてもらっている」という企業も多いと思いますが、審査員のすべてがマニフェストの運用について熟達しているわけではありませんので、指摘が無いことをもって適法とは言い難いのが現実です。

理由その2 数が多い

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「理由その1 間違いやすい」と相乗効果を発揮する要因ですが、委託契約書とは違い、マニフェストは日々交付・運用されるものですので、一月単位で見ると膨大な量になりがちです。

言うまでもなく、この傾向は、排出事業者よりも、産業廃棄物処理業者において顕著です。

さて、そのように日々発生する実務で、一度間違った方法を正しいと思い込んでしまうと、間違った(=違法な)運用証拠を毎日生産し続けることになります。

たとえて言うならば、「設計にミスがあるのに、それを修正せずに製品を大量生産し続ける」ようなものです。

不良品の製造なら、返品や交換で対処できるかもしれませんが、
マニフェストの場合は、行政処分や警察に逮捕される時の証拠となりますので、間違った方法でマニフェストを運用し続けることがどれだけ危険なことか、ご理解いただけると思います。

理由その3 関わる当事者も多い

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マニフェストは一度動き出すと、収集運搬業者から中間処理業者へと複数の事業者を経て流通することになります。

再委託等の違法行為を企図している当事者がいると、契約書には載っていない(委託先ではない)事業者のところに、排出事業者が交付した(ことになっている)マニフェストが流出することもあります。

また、自社以外の事業者が同じマニフェストの写しを保存しているということは、マニフェストの改ざんや隠匿等ををすると、違法行為の証拠になってしまうということでもあります。

排出事業者の場合は、自分自身が法定記載事項に注意をし、適切な記載をして交付をする。そして、返ってきたマニフェストの記載内容を確認し、契約どおりの処理が行われたかをチェックするだけで十分ですが

中間処理業者の場合は、最低でも「排出事業者自身の持込み」と「収集運搬業者による持込み」の2種類のパターンがありますので、より複雑な対応が必要となります。

その具体的な注意点については、これから回を分けて連載していきます。

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