最新情報

  • 2025年2月6日 · · · 改善命令違反への行政の対抗策Vol.2「実際の選択結果」
  • 2025年2月3日 · · · 改善命令違反への行政の対抗策
  • 2025年1月27日 · · · 公務員=無謬のスーパーマン説の破綻
  • 2025年1月20日 · · · 愛知労働局が建設廃棄物の不適正保管を行った業者を書類送検
  • 2025年1月16日 · · · 2024年12月分の「廃棄物実務クエスト」への寄稿記事
  • このエントリーを含むはてなブックマーク

    改善命令違反への行政の対抗策Vol.2「実際の選択結果」

    一つ前の記事 「改善命令違反への行政の対抗策」を更新したその日に、早速続報のニュースが入りました。

    2025年2月3日付 tbc東北放送 「「お金がないので今はできません」産業廃棄物処理会社『砂押プラリ』期限までに“感染性廃棄物”全体の2割しか処理しきれず 宮城・加美町

    「お金がないので今はできません」の一言に報道の核心が凝縮されています。

    少し待てば資金調達できる見込みがあるのかどうかはわかりませんが、現実問題として、「資金が無い」ため「撤去作業を行えない」ことはわかります。

    「今は」と、「将来的には善処する可能性を残している」ところを見ると、
    不適正処理事案に対する一般的な先入観とは異なり、件の社長さんは根っからのアウトローなどではなく、極々フツーの経営者という印象を受けました。

    とは言え、産業廃棄物処理業者として、感染性廃棄物の処分や、産業廃棄物管理票の運用方法に大きな不備があったことも事実です。

    フツーの人が懲役刑付きの重罪となる法律違反を容易に起こしてしまうところが、廃棄物処理法の怖さでもあります。

    マニフェストという言ってしまえば紙切れの不用意なミスで、社長のみならず、雇用されていた従業員及びその家族までが不幸になってしまいますので、当ブログ読者の皆様におかれましても、今一度、社内で廃棄物処理法違反が起きていないかをご確認いただけると幸いです。

    さて、今回の本題の、宮城県の今後の対応方針は

    (宮城)県は、今のところ刑事告発や更なる行政処分を下す予定はなく現場の監視と指導を続けていくということです。

    前回の記事では、

    1. 「改善命令違反」として告発する
    2. 自主的な撤去を指導し続ける
    3. 新たな行政処分を科す

    の3つの選択肢が考えられると書きました。

    報道内容によると、「1」の刑事告発は採らず、当面の間は、「2」の「自主的な撤去を指導し続ける」ことをベースとしているように見えますが、

    実際のところは、

    ほかの産業廃棄物業者への委託については排出事業者さんが自主撤去されているという形で進んでいる

    と担当課長が答えていることから、
    「3」に近い「排出事業者への措置命令の可能性」を示唆しつつ、排出事業者の負担に基づく撤去要請を基本路線としているのでは?と、個人的には憶測しています。

    以下は余談です。
    上記の「排出事業者への撤去要請」については、委託基準違反をしていない排出事業者の場合は、従う義務は一切ありません。

    しかしながら、実際には、「委託基準違反はしていないが、協力金の寄付を要請されたので、とりあえず何万円か寄付しておこう」という意思決定を行う企業が結構多くあります。

    企業の自由意志に基づき、社会貢献(?)として、なにがしかの寄付を行うこと自体は問題ありませんが、
    委託基準違反をしていないのであれば、ビタ一文支払うべき理由はありません。

    逆に、「委託契約書の不備」や、今回の事件のように「マニフェストの記載不備を放置していた」場合は、委託基準違反や産業廃棄物管理票の運用義務違反をしていたことになり、廃棄物処理法第19条の5の措置命令の対象になる可能性が高くなります。

    その場合は、自主的な撤去要請には真摯に対応し、排出事業者としての最低限の事後処理責任を果たさないと、措置命令が発出され、自治体HPで社名と代表者氏名が公開される可能性があります。

    余談のまとめ

    委託基準違反をしていた排出事業者は、撤去要請に応じた方が得策
    委託基準違反をしていない排出事業者は、報告徴収に虚偽の報告をしていない限り、撤去要請に応じる義務無し

    タグ

    2025年2月6日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    改善命令違反への行政の対抗策

    当ブログ 2024年3月28日付記事 「あなたは”紙”を信じますか?」の続報が入りました。

    感染性廃棄物の処分(滅菌)を行っていた業者が、滅菌処理以外の方法で処分をしたという理由で許可を取消された後、「事業場内に残った感染性廃棄物の保管容量を減らせ」という改善命令を受けていましたが、最終履行期限までに後片付けが間に合わなかったそうです。

    2025年1月31日付 仙台放送 「医療廃棄物を“放置” 処分業の許可を取り消された加美町の業者 宮城県が設けた期限までに処理できず

    注射器など医療用の廃棄物を大量に保管し続けている宮城県加美町の業者が、県から1月31日までに廃棄物を減らすよう命じられたものの、処理しきれずにいることが分かりました。敷地内では未だに多くの廃棄物が放置されたままになっています。

    (略)

    県は去年3月、敷地内に保管され続けている約4900立方メートルの廃棄物を31日までに400立方メートルまで減らすよう命じる行政処分を出しました。しかし、県によりますと、23日の時点で、未だ3900立方メートルの廃棄物が残っていて、期限の31日までに処理が完了するめどは立っていないということです。

    こうした産業廃棄物撤去に関する改善命令の場合、
    命令に従って撤去される産業廃棄物の量は非常に少ない、あるいはゼロというケースが非常に多いため、「約1千立方メートル」は自主的に撤去されている点が意外でした。

    どのような撤去及び処分を行ったかは報道されていませんが、放置されていた1千立方メートルの感染性廃棄物を適切に処分するコストは決して安くはありません。

    もっとも、その業者には、最初から適切に感染性廃棄物を処分する義務があったわけですから、自主撤去の姿勢を「真面目」とか「善性の発露」等と評価することはできませんが。

    業者が自主撤去した時期や期間はよくわかりませんが、最初の自主撤去以降、作業が断絶している状態なのであれば、その企業の資金が限界を迎えた可能性があります。

    県は近く、改めて現地の状況を確認し、処理の方策について業者と話し合いを進めることにしています。

    話し合いの結論は、「無い袖は振れない」しかないような気がしますが、
    宮城県が取ることができる対応方針は次のようなものになります。

    1. 「改善命令違反」として告発する
    2. 自主的な撤去を指導し続ける
    3. 新たな行政処分を科す

    「告発」は被処分者に対する最大のプレッシャーにはなりますが、告発によって、現状以上の廃棄物撤去が進むとは考えにくい状況です。

    もちろん、改善命令違反が続く場合は、いつかは改善命令違反として告発すべき時期が必ずやってきますが、「罰金刑」程度で終わることがほとんどであり、それ以上の撤去は全く進まなくなりがちです。

    「自主撤去を指導し続ける」は、改善命令を発出済みである現状では、ただの行政の不作為でしかありませんので、もっとも労力が要らない行動ではありますが、行政として積極的に取れない対策です。

    となると、残りは「措置命令」等の新たな行政処分を科すこととなります。

    手続き的には、被処分者に措置命令を発出する必要がありますが、先述したとおり、被処分者によるこれ以上の自主撤去が期待できない以上、「排出事業者」に「措置命令」を発出し、排出事業者に委託者としての責任を負わせるという手法も選択肢に入ってきそうです。

    先行報道にあったとおり、

    排出事業者に返ってきた産業廃棄物管理票の記載内容に明らかにおかしな点があった以上、法で定められた委託者としての責任を果たしておらず、「処分業者が勝手にやったこと」とは決して言えないからです。

    ただし、排出事業者の場合、いきなり措置命令が発出されることはほぼ無く、事前に「排出事業者負担での自主撤去」や「撤去事業への資金協力」を要請されるのが通例となっており、その要請に協力すれば、「委託者の責任をなんとか果たした」とみなされ、措置命令の対象から外していただけるようになります。

    以上の行政が取り得る3点の対抗手段を頭に入れておくと、今後の続報が10倍面白く聞けることと思います(笑)。

    タグ

    2025年2月3日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    公務員=無謬のスーパーマン説の破綻

    2025年1月26日付 読売新聞 「民家の庭に廃棄物269トン、流山市が3123万円投じ撤去…一般家庭から出された家具や家電などを無許可で収集

     千葉県流山市は2023年5~6月の行政代執行で、約3123万円を投じて同市美原の民家から廃棄物を撤去した。その後、市が土地所有者らから回収できたのは約27万円。大半は市民が税金を通じて負担した形になっている。市は支払いを求めているが、回収の見込みはたっていない。

    (略)

     撤去した一般廃棄物は269トンで、撤去料は約3084万円に上る。冷蔵庫や洗濯機などの家電は63台で、約39万円を費やした。

    一般廃棄物の不法投棄であるため、千葉県ではなく、流山市が行政代執行を行ったものの、行為者から回収できた経費は代執行費の1パーセントにも満たない状況という、なかなかトホホな報道。

    回収に掛かったコストは1トンあたり約11万4千円と、作業費込みではあるものの、適切に分別された廃棄物を処分する場合と比較するとかなり高く付いた模様。
    ※何もかもかごちゃ混ぜの不法投棄であるため、行政代執行費の相場としては、妥当な金額ではあります。

    記事の指摘のとおり、流山市民の税金が廃棄物の不適正処理に伴う原状回復に充てられるという事態は褒められたものではありません。

    当局としての流山市の責任が問われることは避けられませんが、昨今よく見られる「○○市職員は仕事しろ」等の公務員個人を批判することが適切かどうか?

    筆者自身は、「個々の公務員を批判すれば済むという問題ではない」と考えています。

    その理由は、廃棄物の不適正処理対策は、その担当者になったからといって、いきなり完璧な仕事ができるわけではないからです。

    書類の受付等の単純な業務であれば、大部分の公務員の人は、短期間でほぼ完璧な水準の仕事をこなせるものと思います。

    しかし、廃棄物の不適正処理対策となると、
    ・「廃棄物処理法の正確な理解」のみならず
    ・「実行者に対処するための対人コミュニケーションスキル」と「胆力」
    ・役所内の意思決定を迅速に進めるための「段取り」と「事務処理能力」
    ・刑法その他の概括的な理解
    ・行政手続法の正確な運用
    ・廃棄物処理法に基づく行政処分手続き etc

    およそ、市役所職員にとっては、普通なら必要とされない特殊(?)スキルをすべて身につけている必要があります。

    特に問題となるのが、「実行者に対処するための対人コミュニケーションスキル」と「胆力」で、本を読んだり、研修を受けたりするだけで一朝一夕に身につくものではない資質です。

    その人の持って生まれた志向性が根本的に重要であり、「サラリーマン金太郎」のような特殊な人材でもない限り、それなりの場数を踏まないと「胆力」と呼べるまでの精神状態に至ることはできません。

    「それなりの場数を踏む」ためには、数年以上の職務経験を積むことが不可欠ですが、近時は行政機関も人手不足であるため、20年前は数人で担っていた作業を、たった一人でこなすというワンオペやマルチタスクが当然となり、一人の人間に同一の職務を担当させ続ける余裕が無く、3年程度で人事異動することが通例となっています。

    言わば、日本の市町村の大部分(都道府県を含めても良いかもしれない)の不適正処理対策は、個々の職員のやる気や能力といった、有るか無いか分からない曖昧模糊なリソースに依存していることになります。

    現状では、多くの市町村で問題が起きているわけではありませんが、それはたまたま管内で不適正処理が起きていないだけであり、一度それが起きてしまうと、制御不能な状態へとすぐに悪化する構造にあります。

    さて、ではどうすべきかという話になりますが、
    余剰人員が無い以上、現有戦力で最大限の効果を発揮するためには、ある程度の対処手順と対処方針を事前に定めておくことが不可欠です。

    「対応マニュアル」や「指導方針」等の名称で、何らかの方針を定めている自治体も多いかと思いますが、実体験に基づかないマニュアルは実際には役立たないことがほとんどです。

    大事なことは、マニュアルのブラッシュアップを常に続け、進化させることです。

    事態の悪化にうまく対処できなかったという経験は無駄ではなく、その反省を次の機会に活かせるように、組織内で新たな対策を共有する契機としなければなりません。

    タグ

    2025年1月27日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    愛知労働局が建設廃棄物の不適正保管を行った業者を書類送検

    2025年1月16日付 NHK 「アスベスト含む廃棄物放置などの疑いで書類送検 愛知労働局

    愛知県一宮市で健康被害のおそれがあるアスベストを含む廃棄物を、飛散を防ぐ対策を取らずに放置したなどとして、愛知労働局は名古屋市の産業廃棄物収集運搬会社とその社長を労働安全衛生法違反の疑いで16日に書類送検しました。

    労働局が産業廃棄物の不適正保管に関与した業者を書類送検するという、極めて珍しい報道です。

    通常は、今回の報道対象のような建設廃棄物の不適正保管の場合は、廃棄物行政が警察と連携をし、警察が事件化するのが一般的ですが、労働局としては、アスベスト(石綿)が絡む事件だけに「これ以上の遅延は許されない!」という危機感があったものと思われます。

    2025年1月16日付 愛知労働局発表 「労働安全衛生法違反の疑いで書類送検

    3.被疑内容
    被疑者(略)は、(中略)産業廃棄物の収集運搬業を営んでいたものであるが、同センターにおいて、その重量の0.1パーセントを超えて石綿を含有する疑いのある物(以下「石綿含有物」という。)に関する以下1~3の労働安全衛生法違反の疑いが認められたもの。
    1. 令和5年8月10 日以降、石綿含有物を、石綿等の粉じんが発散するおそれがないように、堅固な容器を使用し、又は確実な包装をすることなく貯蔵した。(労働安全衛生法第22条第1号、石綿障害予防規則第32条第1項)
    2. 令和5年8月24日、石綿含有物を労働者に重機で破砕させるにあたり、労働者に石綿粉じん用の呼吸用保護具を使用させなかった。(労働安全衛生法第22条第1号、石綿障害予防規則第14条第1項)
    3.令和5年10月12日から令和5年12月18日の間に、石綿含有物を取引業者へ譲渡した。(労働安全衛生法第55条、労働安全衛生法施行令第16条)

    上記の「2」は、たとえ呼吸用保護具を使用させていたとしても、積替え保管業者が重機で石綿含有産業廃棄物を破砕を行うことは廃棄物処理法違反となります。

    上記の「3」は、廃棄物処理法に照らすと、(排出事業者への無断)再委託に該当しそうです。

    愛知労働局によりますと、この会社は、一宮市千秋町の屋外施設でおととし8月以降、健康被害のおそれのあるアスベストを含む廃棄物を、飛散を防ぐ対策を取らずに放置したほか、ほかの業者に譲り渡したなどとして、労働安全衛生法違反の疑いがもたれています。
    この施設では現在も、アスベストを含む廃棄物が野ざらしの状態で放置されています。

    「おととし8月以降」とあるので、これまで少なくとも2年間は不適正保管の状態が放置されていたようです。

    今後、2年間におよぶ行政庁の不作為が問題視されるかもしれません。

    愛知労働局監督課の下田隆貴課長は会見で、「アスベストを含む廃棄物は、直ちに粉じんが飛散するおそれは少ないが、長期的に見れば周辺住民への影響も否定できない。撤去など今後の対応については一宮市と連携をとっていきたい」と述べました。

    筆者は大阪の人間ですので、「なぜ愛知県ではなく、一宮市?」と疑問に思ってしまいましたが、2021年4月1日から、一宮市は中核市になっていたそうです。

    ということは、今回の建設廃棄物の不適正保管は、一宮市が中核市になった2021年以降の事案ですので、行政として一宮市に監督責任があったことになります。

    公文書ではなく、口頭での取材対応のせいかと思いますが、下記報道における一宮市のコメントには不適切な部分があります。

    一宮市は「現時点でアスベストの飛散は確認されていないので、まずは行政指導を行って会社に対応を求めている段階だ。今後も監視を続ける中で、風化などでアスベストの飛散のおそれが認められれば、カバーをかけるなど行政代執行による対応を検討していきたい」としています。

    産業廃棄物の再委託が判明しており、壁の高さを超えた状態(のように映像では見えた)の不適正保管が続いている現状では、行政指導を何度も繰り返すことは無意味です。

    少なくとも、石綿含有産業廃棄物の存在を当局として認知しているのであれば、最低でも、廃棄物処理法どおりの石綿含有産業廃棄物の保管基準を順守させるために「改善命令」を発出すべき状況です。

    行為者が改善命令に従わない場合は、改善命令違反という事実に基づき、改めて警察が立件することが可能になりますので、業者側にも大きなプレッシャーになります。

    司法警察職員である労働基準監督官とは異なり、産業廃棄物所轄行政庁の担当官には犯罪捜査や刑事事件として立件する権限はありませんが、廃棄物処理法の枠内で「できること」「やらなければならないこと」はたくさんあります。

    地方自治体職員の皆様には、愛知労働局の対応スピードを見習い、自らに課された職責を迅速に果たしていただくことを期待しています。

    タグ

    2025年1月20日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    2024年12月分の「廃棄物実務クエスト」への寄稿記事

    当ブログとは別に、北海道の橋本先生と一緒に運営しているサイト「廃棄物実務クエスト」にも2週に1回の頻度で産業廃棄物実務に関する記事を投稿しております。

    短文に見えますが、2人ともかなりの執筆時間を掛けて執筆していますので、当ブログでも更新状況をお知らせさせていただきます。

    2024年12月(※これ以前も投稿しており、記事としては2024年6月以降の蓄積があります)分の尾上の寄稿記事を新しい順に掲載
    ・2024年12月27日 「産業廃棄物管理票(マニフェスト)の照合確認日が空欄のままだと廃棄物処理法違反となる?

    Q:産業廃棄物管理票(マニフェスト)の照合確認日が空欄のままだと廃棄物処理法違反となる?
    A:産業廃棄物管理票(マニフェスト)の「照合確認をした日付」は、マニフェストの法定記載事項ではないため、仮に空欄であったとしても、廃棄物処理法違反にはなりません。

    ・2024年12月12日 「行政職員の立入検査を拒んだ場合でも、暴力行為に訴えなければ刑事罰の対象にはならない?

    Q:行政職員の立入検査を拒んだ場合でも、暴力行為に訴えなければ刑事罰の対象にはならない?
    A:暴力行為の有無とは関係なく、廃棄物処理法第19条に基づく行政機関の立入検査を拒否した場合は、「30万円以下の罰金」の適用対象となります。

    橋本先生の寄稿記事

    ・2024年12月20日 「管理型最終処分場には、全ての産業廃棄物を埋め立てることができる?

    Q:管理型最終処分場には、全ての産業廃棄物を埋め立てることができる?
    A:✕、一部ダメな廃棄物がある!

    ・2024年12月6日 「「廃棄物」の定義は、ごみ等の汚物または不要物であって固形状、液状、気体状のものである?

    Q:「廃棄物」の定義は、ごみ等の汚物または不要物であって固形状、液状、気体状のものである?
    A:✕、「気体状のもの」は廃棄物処理法では、「廃棄物」として定義されていません。

    ブログ 廃棄物実務クエスト のブックマークと
    X 廃棄物実務クエスト のフォローを
    よろしくお願いします。

    タグ

    2025年1月16日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:活動記録

    廃棄物の野外焼却は犯罪です

    青森県大鰐(おおわに)町というと、「大鰐温泉もやし」で有名です。

    大鰐町役場 「大鰐温泉もやし」  より文章と画像を転載

     青森県の中南地域に位置する大鰐町には、古くから伝わる幻の冬野菜「大鰐温泉もやし」があります。

     温泉熱と温泉水のみを用いる温泉の町ならではの独特の栽培方法により、およそ350年以上前から栽培されてきた津軽伝統野菜の一つで、津軽三代藩主・信義公が大鰐で湯治する際は必ず献上したとされております。

     秘伝の大鰐温泉もやしは、 独特の芳香とシャキシャキとした歯触り、味の良さ、品質の高さで人気が高い大鰐町自慢の味です。

    秘伝の温泉もやし

    大鰐温泉もやしには、「豆もやし」と「そばもやし」の二種類があります。
    豆の種類は 、先人が選び伝えてきた地域在来種で、豆もやしは 「小八豆(こはちまめ)」 という大豆の品種です。

    他の品種では美味しいもやしになりません。「小八豆」は門外不出です。

    そばもやしは、そばの品種を使用しています。
    栽培の秘訣は、温泉もやしの名の通り「温泉」が栽培過程でふんだんに使用されているところにあります。
    温泉の熱だけで地温を高めて栽培する土耕栽培で、栽培はもちろん洗浄・仕上げに至るまで水道水を一切使わず、温泉水のみを使用して育てます。

    全行程一週間ほどで収穫となる大鰐温泉もやしの品質の良し悪しは種を蒔いてから4日後の成長で決まるため、土床の温度調節には熟練を要します。
    大鰐温泉もやしは、「ワラ」で束ねているのが目印です。
    昔と変わらず手作業で行い、伝統を受け継いでいます。

    昨年6月、仕事がてらに東北地方を電車でほぼ1周した際、JR奥羽本線の「大鰐温泉駅」を通過した次の日、「大鰐町で製材所が木くずの野外焼却で失火をしたため、付近一帯の住居に引火して大火事になった」というニュースに接しました。

    たまたま前日に大鰐温泉駅で電車が停車待ちとなったため、駅付近の様子をじっくりと見ることができましたので、「田畑のど真ん中というわけではない場所でなぜ野外焼却?」と大いに疑問を感じたものですが、あろうことか、その製材所は日常的に木くずの野外焼却を行っていたようです。

    2025年1月7日付 NHK 「大鰐町の大規模火災 火元の製材所と役員ら書類送検

    警察の捜査の結果、製材所が廃棄物処理の許可を得ていなかったにもかかわらず従業員がスギを加工したあとの皮、およそ11キロをドラム缶で焼却し、その場を離れたすきに火の粉が近くの木材に燃え移った可能性が高いことが分かったということです。

    このため警察は7日、法人としての製材所と56歳の代表役員、それに59歳の従業員を廃棄物処理法違反と重過失失火の疑いで書類送検しました。

    警察の調べに対し代表役員は「いつも焼却処分をしていた。火事になるかもしれないという認識はあった」と容疑を認めているということです。

    報道では、廃棄物処理法の「野外焼却」と、刑法の「重過失失火罪」の2つの容疑で書類送検されたとあります。

    「野外焼却」の場合は、「5年以下の懲役、もしくは1千万円以下の罰金、またはこの併科」の対象となり、
    「重過失失火」の場合は、「3年以下の禁錮(2025年6月1日以降は拘禁刑)または150万円以下の罰金」の対象となります。

    「重過失失火罪」よりも「野外焼却」の方が重い罰であることが、なかなかの衝撃です。

    現在は、「廃棄物の野外焼却」は直罰(ちょくばつ)の対象であるため、行政の改善命令等を経ることなく、すぐさま逮捕される犯罪行為です。

    ちなみに、20世紀においては、「野外焼却」は直罰の対象ではなかったため、行政の改善命令を経た後でないと、警察が逮捕できないという状況があったため、野外焼却を取り締まることが困難でした。

    その反省もあって、2000年の廃棄物処理法改正で、野外焼却は直罰の対象になったわけです。

    さて、このように厳罰で処される可能性の高い野外焼却については、すぐに苦情や通報の対象となり、今回の事件が起きた住居密集地の場合、煙が上がった段階で保健所や警察署に通報が行くことが多いように思います。

    しかしながら、行為者は「いつも焼却処分をしていた。火事になるかもしれないという認識はあった」と、長年このような野外焼却を続けていたようですので、近隣の関係者の間でトラブルになっていた様子がうかがえません。

    野外焼却が直罰の対象である以上、かくも長くの間野外焼却を放置し続けた責任は、行政と警察の双方にあると言わざるを得ませんが、苦情や通報が寄せられていなかったのであれば、それらの機関が管轄エリアをあまねくカバーし続けることは物理的に不可能であるため、盲点となっていた可能性もあります。

    いずれにせよ、失火で我が家まで燃やされてしまっては割に合いませんので、「野外焼却は犯罪行為なので、見かけたらすぐ通報」を日本の常識としたいところです。

    ただし、「農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却」等の違法とはならない除外規定がありますので、それらに該当しない野外焼却が犯罪となります。

    ※参考 当ブログ 2013年12月13日付記事 「野外焼却禁止の除外規定

    タグ

    2025年1月14日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    金沢市での講演の御案内

    1年ぶりに金沢市で講演をさせていただきます。

    石川県内にお住まい・お勤めの方は是非いらっしゃってください。

    一般社団法人石川県産業資源循環協会の告知ページより転載

    【講習会のご案内】産業廃棄物は適正に処理しましょう講座

    標記講習会を令和7年2月13日(木)開催します。

    お申し込みは「参加申込書」に必要事項をご記入のうえ、FAXにてお送りください。

    建設業、製造業等、産業廃棄物を排出する方にお勧めの講習会です。

    廃棄物処理法を基礎から学べる内容となっておりますので、産業廃棄物処理業に携わる方のご参加もお待ちしております。

    参加申込書

    タグ

    「後は野となれ山となれ」で良いのだろうか

    新年明けましておめでとうございます。今年も当ブログを御愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

    昨年はブログの更新頻度がめっきり下がってしまいましたので、年初に当たり、本年はもっと更新頻度を上げるという目標を設定しました(笑)。

    ブログを開設した2009年当時は毎日更新していた気がしますので、無名の弱者としては、その当時の気概を思い出し、修行のためにも更新頻度を上げるべきと、現段階では固く誓っております。

    2025年最初の記事は、20世紀の負の遺産の一つであるPCB廃棄物の処理問題について。

    2025年1月25日付 NHK 「室蘭の施設 PCB廃棄物6月から搬入 年内に処理終了の予定

    西日本で新たに見つかった高濃度PCB廃棄物について、国はことし6月から7月ごろに室蘭市の施設に搬入し年内に処理を終える見通しを示しました。

    国は全国5か所の施設で有害物質のPCB=ポリ塩化ビフェニルを含む廃棄物の無害化を進めてきましたが、北九州市など3か所での事業が終了し西日本で新たに見つかった廃棄物については室蘭市にある施設で処理することになりました。

    国内最後の高濃度PCB廃棄物処分施設がある室蘭市。

    2026年3月末で完全に処分を終え、処分場は解体後に更地に戻されるようです。

    市外の厄介者を受入れていただいた室蘭市の皆様には感謝しかありません。

    ただ、2026年以降に日本のどこかで高濃度PCB廃棄物が絶対に発生しないとは言い切れない点が少し気になります。

    もちろん、現段階でPCB特措法に基づく届出が出されている廃棄物については、法律の規定どおりに処分される予定であるとは思います。

    しかしながら、存在すら認識されていなかったトランスやコンデンサが倉庫の一角から急に出現するという事態は、実はよくある話です。

    最後に残った室蘭の施設が撤去された後は、急に出現した高濃度PCB廃棄物の処分をどうやって行うのでしょうか?

    そのような事態は絶対に起きます。

    「戦略は大胆に 戦術は緻密に」とよく言われます。

    大胆な戦略目標を掲げること自体は悪くはありませんが、必ず発生することが予測できる事態を想定していない戦略は、「大胆」を通り越して「無謀」でしかありません。

    最低でも、日本のどこか1箇所には高濃度PCB廃棄物処分施設を残しておく必要があったと考えますが、JESCOが設置したそれらの処分施設は、期限後に撤去することが最初からの規定方針でした。

    やはりPCB廃棄物の処分戦略は、当初から「法律の想定外の事態は絶対に起きない」という前提の下、謀無しのものだったようです。

    しかし、戦略目標が「国内で安全にPCB廃棄物処分をし続ける」ではなく、「とにかく法律の規定どおりに高濃度PCB廃棄物の処分を進めるのだ」であったのであれば、その目標自体は達成したと言えるかもしれません。

    はたして、それがPCB特措法の基本理念に合致するのかどうかには疑問の余地がありますが、「一日も早く地元関係者に施設設置を納得させる」ことだけを目標にすると、「処分期限終了後は更地に戻します」という空手形を切ることに躊躇が無くなります。

    実際には、国としては空手形にするわけにはいきませんので、高濃度PCB廃棄物処分施設を約束どおりに順番に解体し、それによって生じた歪みを室蘭市の施設に押しつけることになったわけですが。

    昨今の年金改革や税制改正を見ていると、日本の政治には、「後は野となれ山となれ」がはびこっている気がしてなりません・・・

    考えてみれば、千年以上前の昔から、政治上の意思決定の大部分がそうでしたね(苦笑)。

    タグ

    2025年1月7日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和5年度)

    2024年12月6日に、環境省から「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和5年度)について」が発表されました。

    環境省の発表内容によると、

    (1) 令和5年度に新たに判明した不法投棄事案
     ・不法投棄件数  100件    (前年度134件)    [-34件]
     ・不法投棄量   4.2万トン  (前年度4.9万トン)   [-0.7万トン]

    (2) 令和5年度に新たに判明した不適正処理事案
     ・不適正処理件数 121件    (前年度107件)    [+14件]
     ・不適正処理量  5.0万トン  (前年度2.6万トン)   [+2.4万トン]

    (3)令和5年度末における不法投棄等の残存事案
     ・残存件数    2,876件   (前年度2,855件)    [+21件]
     ・残存量     1011.2万トン(前年度1013.5万トン)  [-2.3万トン]

    でした。

    不法投棄の件数と量ともに、前年度よりも減少しました。

    ただし、不法投棄ではない「不適正処理」については、件数と量ともに前年度よりも増加しています。

    毎年書いていることですが、
    本統計は

    1件あたりの投棄量が10t以上の事案(ただし、特別管理産業廃棄物を含む事案は全事案)を集計対象

    としているため、「10トン未満の不法投棄」は集計の対象になっていません。

    そのため、不法投棄実体に関する正確な統計というよりも、「“比較的大規模な”不法投棄事案に関する統計」として受け止めていただく必要があります。

    令和5年度も、「投棄件数」別の内訳で見ると、「排出事業者」がトップでした。

    令和5年度の「投棄量」では、これまで比較的少量に留まっていた「複数」による不法投棄が、全体の74.6%に急増するという不気味な変化を見せています。

    「排出事業者」であり、「許可業者」あるいは「無許可業者」という複数の属性を持つ実行者による不法投棄が増えたということになりましょうか。

    不法投棄された産業廃棄物の内訳としては、令和5年度は全体の72.6%が建設廃棄物でした。

    建設系ではない「汚泥」の不法投棄量が6,440トンとかなり多かった点も少し気になります。

    タグ

    2024年12月8日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:統計・資料

    一般廃棄物清掃工場へ受入不可の産業廃棄物を搬入すると不法投棄になる理由

    2024年11月29日付 NHK 「産業廃棄物を不法に処分疑いで小樽の産廃業者社長を逮捕

    食品製造工場から出た産業廃棄物を一般のごみに混ぜて不法に処分した疑いで、小樽市の廃棄物処理業者の社長が逮捕されました。産業廃棄物を一般ごみに混ぜて処分にかかる費用を浮かせる手口で1000万円近くの差額を不正に受け取っていたとみられるということで、警察が詳しく調べています。

    「食品製造工場」から発生した産業廃棄物ということなので、おそらく「動植物性残さ」と思われますが、それを一般廃棄物に混ぜて、そのまま小樽市の清掃工場へ搬入していた容疑で社長が逮捕されたことになります。

    「清掃工場」って、廃棄物を燃やす場所なわけだから、そこで廃棄物を燃やしてもらうことがなぜ不法投棄になるの?

    という、根本的な疑問を抱いた方が多いかもしれません。

    この手の逮捕報道は珍しいものではないため、当ブログでも何度か取り上げたことがある題材なのですが、今回は根拠条文の引用から始め、その意味するところを一つずつ見ていこうと思います。

    まずは根拠条文から

    廃棄物処理法第16条(投棄禁止)
     何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。

    句読点を入れてもわずか21文字です。

    「何人(なにびと)も」は、「誰もが」「誰も」という意味ですね。

    「廃棄物を捨ててはならない」は、読んで字のごとく「廃棄物を捨てることを禁止する」という意味ですね。

    重要な部分は「みだりに」となりますが、
    公益財団法人日本漢字能力検定協会のHPでは、「みだりに」の同訓異字として4つの例が紹介されています。
    https://www.kanjipedia.jp/sakuin/doukunigi/items/0006609600

    「みだりに」

    • 妄りに しっかりした根拠もなく。むやみやたらに。
      「妄りに人を信用するな」「妄りに論ずべからず」「妄りに会社を休む」
    • 漫りに しまりなく。だらだらと。勝手きままに。
      「漫りに時間を過ごす」「漫りに女性を口説く」「漫りに軽口をたたく」
    • 濫りに 抑制しないでむやみに。度を超して。
      「濫りに原生林を伐採する」「濫りに酒を飲むな」「濫りに金を遣う」
    • 猥りに 正当な意味もなく、原則を押しまげてやたらに。
      「猥りに禁句を口にする」「猥りに立ち入ることを禁止する」

    法律の条文上の表現としては、「みだりに」としか書かれていませんが、
    上記の廃棄物処理法第16条の「みだりに」は、「正当な理由なく」、あるいは「正当な理由があるとは認められない場合」と説明されることが多いため、漢字としては「猥りに」となりそうです。

    一部の方が大好きな「猥褻」の「猥」の字ですね。

    よって、「みだりに」を無理やり口語訳すると、
    廃棄物処理法第16条は、

    「何人も、そうする正当な理由が無いのに廃棄物を捨ててはならない」

    となりますが、逆に若干読みづらくなった感があります。

    さて、報道事例に話を戻すと、
    小樽市の清掃工場は、小樽市内で発生した「生活系一般廃棄物」と「事業系一般廃棄物」を処分(焼却)するために、小樽市が税金を使って設置した施設です。

    その清掃工場に、「事業系一般廃棄物」ではない「産業廃棄物」を持ち込み、小樽市にそれを焼却してくださいと依頼したとしても、
    小樽市にしてみれば、排出事業者に処理責任がある産業廃棄物の「動植物性残さ」を受け入れる理由や必然性がありませんので、小樽市は産業廃棄物の搬入を当然断ることになります。

    よって、小樽市に知られないように産業廃棄物を一般廃棄物の中に混ぜ込み、小樽市に産業廃棄物を焼却をさせるという行為は、「本来なら産業廃棄物を持ち込む権限がない場所に正当な理由なく産業廃棄物を持ち込み、置き去る」ことに該当し、「不法投棄」になります。

    類似のケースをさらに挙げると、
    「粗大ごみ」を、「粗大ごみ」の回収日ではない日に「ごみ回収ステーション」に放置した場合、
    「ごみ回収ステーション」という場所自体は「元々廃棄物を置いても良い場所」ではありますが、
    「ごみ回収ステーション」は「24時間365日いつでも使える場所」ではなく、「特定のごみ回収日限定で、常識の範囲内の特定の時間帯のみ、ごみステーションとして使える場所」ですので、「粗大ごみ」を「粗大ごみ回収日以外の日」に出すと、「正当な理由なく、廃棄物を捨てた」ことになり、やはり「不法投棄」に該当します。

    今回は、廃棄物処理法第16条の「みだりに」の定義で終わりにしておきます。

    次回の記事では、「委託物を不法投棄された排出事業者への責任追及の有無」について解説します。

    タグ

    2024年12月2日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    このページの先頭へ