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廃棄物の野外焼却は犯罪です
青森県大鰐(おおわに)町というと、「大鰐温泉もやし」で有名です。
大鰐町役場 「大鰐温泉もやし」 より文章と画像を転載
青森県の中南地域に位置する大鰐町には、古くから伝わる幻の冬野菜「大鰐温泉もやし」があります。
温泉熱と温泉水のみを用いる温泉の町ならではの独特の栽培方法により、およそ350年以上前から栽培されてきた津軽伝統野菜の一つで、津軽三代藩主・信義公が大鰐で湯治する際は必ず献上したとされております。
秘伝の大鰐温泉もやしは、 独特の芳香とシャキシャキとした歯触り、味の良さ、品質の高さで人気が高い大鰐町自慢の味です。
大鰐温泉もやしには、「豆もやし」と「そばもやし」の二種類があります。
豆の種類は 、先人が選び伝えてきた地域在来種で、豆もやしは 「小八豆(こはちまめ)」 という大豆の品種です。他の品種では美味しいもやしになりません。「小八豆」は門外不出です。
そばもやしは、そばの品種を使用しています。
栽培の秘訣は、温泉もやしの名の通り「温泉」が栽培過程でふんだんに使用されているところにあります。
温泉の熱だけで地温を高めて栽培する土耕栽培で、栽培はもちろん洗浄・仕上げに至るまで水道水を一切使わず、温泉水のみを使用して育てます。全行程一週間ほどで収穫となる大鰐温泉もやしの品質の良し悪しは種を蒔いてから4日後の成長で決まるため、土床の温度調節には熟練を要します。
大鰐温泉もやしは、「ワラ」で束ねているのが目印です。
昔と変わらず手作業で行い、伝統を受け継いでいます。
昨年6月、仕事がてらに東北地方を電車でほぼ1周した際、JR奥羽本線の「大鰐温泉駅」を通過した次の日、「大鰐町で製材所が木くずの野外焼却で失火をしたため、付近一帯の住居に引火して大火事になった」というニュースに接しました。
たまたま前日に大鰐温泉駅で電車が停車待ちとなったため、駅付近の様子をじっくりと見ることができましたので、「田畑のど真ん中というわけではない場所でなぜ野外焼却?」と大いに疑問を感じたものですが、あろうことか、その製材所は日常的に木くずの野外焼却を行っていたようです。
2025年1月7日付 NHK 「大鰐町の大規模火災 火元の製材所と役員ら書類送検」
警察の捜査の結果、製材所が廃棄物処理の許可を得ていなかったにもかかわらず従業員がスギを加工したあとの皮、およそ11キロをドラム缶で焼却し、その場を離れたすきに火の粉が近くの木材に燃え移った可能性が高いことが分かったということです。
このため警察は7日、法人としての製材所と56歳の代表役員、それに59歳の従業員を廃棄物処理法違反と重過失失火の疑いで書類送検しました。
警察の調べに対し代表役員は「いつも焼却処分をしていた。火事になるかもしれないという認識はあった」と容疑を認めているということです。
報道では、廃棄物処理法の「野外焼却」と、刑法の「重過失失火罪」の2つの容疑で書類送検されたとあります。
「野外焼却」の場合は、「5年以下の懲役、もしくは1千万円以下の罰金、またはこの併科」の対象となり、
「重過失失火」の場合は、「3年以下の禁錮(2025年6月1日以降は拘禁刑)または150万円以下の罰金」の対象となります。
「重過失失火罪」よりも「野外焼却」の方が重い罰であることが、なかなかの衝撃です。
現在は、「廃棄物の野外焼却」は直罰(ちょくばつ)の対象であるため、行政の改善命令等を経ることなく、すぐさま逮捕される犯罪行為です。
ちなみに、20世紀においては、「野外焼却」は直罰の対象ではなかったため、行政の改善命令を経た後でないと、警察が逮捕できないという状況があったため、野外焼却を取り締まることが困難でした。
その反省もあって、2000年の廃棄物処理法改正で、野外焼却は直罰の対象になったわけです。
さて、このように厳罰で処される可能性の高い野外焼却については、すぐに苦情や通報の対象となり、今回の事件が起きた住居密集地の場合、煙が上がった段階で保健所や警察署に通報が行くことが多いように思います。
しかしながら、行為者は「いつも焼却処分をしていた。火事になるかもしれないという認識はあった」と、長年このような野外焼却を続けていたようですので、近隣の関係者の間でトラブルになっていた様子がうかがえません。
野外焼却が直罰の対象である以上、かくも長くの間野外焼却を放置し続けた責任は、行政と警察の双方にあると言わざるを得ませんが、苦情や通報が寄せられていなかったのであれば、それらの機関が管轄エリアをあまねくカバーし続けることは物理的に不可能であるため、盲点となっていた可能性もあります。
いずれにせよ、失火で我が家まで燃やされてしまっては割に合いませんので、「野外焼却は犯罪行為なので、見かけたらすぐ通報」を日本の常識としたいところです。
ただし、「農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却」等の違法とはならない除外規定がありますので、それらに該当しない野外焼却が犯罪となります。
※参考 当ブログ 2013年12月13日付記事 「野外焼却禁止の除外規定」
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2025年1月14日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:news
金沢市での講演の御案内
1年ぶりに金沢市で講演をさせていただきます。
石川県内にお住まい・お勤めの方は是非いらっしゃってください。
一般社団法人石川県産業資源循環協会の告知ページより転載
【講習会のご案内】産業廃棄物は適正に処理しましょう講座
標記講習会を令和7年2月13日(木)開催します。
お申し込みは「参加申込書」に必要事項をご記入のうえ、FAXにてお送りください。
建設業、製造業等、産業廃棄物を排出する方にお勧めの講習会です。
廃棄物処理法を基礎から学べる内容となっておりますので、産業廃棄物処理業に携わる方のご参加もお待ちしております。
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2025年1月9日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:セミナー等のお知らせ
「後は野となれ山となれ」で良いのだろうか
新年明けましておめでとうございます。今年も当ブログを御愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。
昨年はブログの更新頻度がめっきり下がってしまいましたので、年初に当たり、本年はもっと更新頻度を上げるという目標を設定しました(笑)。
ブログを開設した2009年当時は毎日更新していた気がしますので、無名の弱者としては、その当時の気概を思い出し、修行のためにも更新頻度を上げるべきと、現段階では固く誓っております。
2025年最初の記事は、20世紀の負の遺産の一つであるPCB廃棄物の処理問題について。
2025年1月25日付 NHK 「室蘭の施設 PCB廃棄物6月から搬入 年内に処理終了の予定」
西日本で新たに見つかった高濃度PCB廃棄物について、国はことし6月から7月ごろに室蘭市の施設に搬入し年内に処理を終える見通しを示しました。
国は全国5か所の施設で有害物質のPCB=ポリ塩化ビフェニルを含む廃棄物の無害化を進めてきましたが、北九州市など3か所での事業が終了し西日本で新たに見つかった廃棄物については室蘭市にある施設で処理することになりました。
国内最後の高濃度PCB廃棄物処分施設がある室蘭市。
2026年3月末で完全に処分を終え、処分場は解体後に更地に戻されるようです。
市外の厄介者を受入れていただいた室蘭市の皆様には感謝しかありません。
ただ、2026年以降に日本のどこかで高濃度PCB廃棄物が絶対に発生しないとは言い切れない点が少し気になります。
もちろん、現段階でPCB特措法に基づく届出が出されている廃棄物については、法律の規定どおりに処分される予定であるとは思います。
しかしながら、存在すら認識されていなかったトランスやコンデンサが倉庫の一角から急に出現するという事態は、実はよくある話です。
最後に残った室蘭の施設が撤去された後は、急に出現した高濃度PCB廃棄物の処分をどうやって行うのでしょうか?
そのような事態は絶対に起きます。
「戦略は大胆に 戦術は緻密に」とよく言われます。
大胆な戦略目標を掲げること自体は悪くはありませんが、必ず発生することが予測できる事態を想定していない戦略は、「大胆」を通り越して「無謀」でしかありません。
最低でも、日本のどこか1箇所には高濃度PCB廃棄物処分施設を残しておく必要があったと考えますが、JESCOが設置したそれらの処分施設は、期限後に撤去することが最初からの規定方針でした。
やはりPCB廃棄物の処分戦略は、当初から「法律の想定外の事態は絶対に起きない」という前提の下、謀無しのものだったようです。
しかし、戦略目標が「国内で安全にPCB廃棄物処分をし続ける」ではなく、「とにかく法律の規定どおりに高濃度PCB廃棄物の処分を進めるのだ」であったのであれば、その目標自体は達成したと言えるかもしれません。
はたして、それがPCB特措法の基本理念に合致するのかどうかには疑問の余地がありますが、「一日も早く地元関係者に施設設置を納得させる」ことだけを目標にすると、「処分期限終了後は更地に戻します」という空手形を切ることに躊躇が無くなります。
実際には、国としては空手形にするわけにはいきませんので、高濃度PCB廃棄物処分施設を約束どおりに順番に解体し、それによって生じた歪みを室蘭市の施設に押しつけることになったわけですが。
昨今の年金改革や税制改正を見ていると、日本の政治には、「後は野となれ山となれ」がはびこっている気がしてなりません・・・
考えてみれば、千年以上前の昔から、政治上の意思決定の大部分がそうでしたね(苦笑)。
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2025年1月7日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:news
産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和5年度)
2024年12月6日に、環境省から「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和5年度)について」が発表されました。
環境省の発表内容によると、
(1) 令和5年度に新たに判明した不法投棄事案
・不法投棄件数 100件 (前年度134件) [-34件]
・不法投棄量 4.2万トン (前年度4.9万トン) [-0.7万トン](2) 令和5年度に新たに判明した不適正処理事案
・不適正処理件数 121件 (前年度107件) [+14件]
・不適正処理量 5.0万トン (前年度2.6万トン) [+2.4万トン](3)令和5年度末における不法投棄等の残存事案
・残存件数 2,876件 (前年度2,855件) [+21件]
・残存量 1011.2万トン(前年度1013.5万トン) [-2.3万トン]
でした。
不法投棄の件数と量ともに、前年度よりも減少しました。
ただし、不法投棄ではない「不適正処理」については、件数と量ともに前年度よりも増加しています。
毎年書いていることですが、
本統計は
1件あたりの投棄量が10t以上の事案(ただし、特別管理産業廃棄物を含む事案は全事案)を集計対象
としているため、「10トン未満の不法投棄」は集計の対象になっていません。
そのため、不法投棄実体に関する正確な統計というよりも、「“比較的大規模な”不法投棄事案に関する統計」として受け止めていただく必要があります。
令和5年度も、「投棄件数」別の内訳で見ると、「排出事業者」がトップでした。
令和5年度の「投棄量」では、これまで比較的少量に留まっていた「複数」による不法投棄が、全体の74.6%に急増するという不気味な変化を見せています。
「排出事業者」であり、「許可業者」あるいは「無許可業者」という複数の属性を持つ実行者による不法投棄が増えたということになりましょうか。
不法投棄された産業廃棄物の内訳としては、令和5年度は全体の72.6%が建設廃棄物でした。
建設系ではない「汚泥」の不法投棄量が6,440トンとかなり多かった点も少し気になります。
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2024年12月8日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:統計・資料
一般廃棄物清掃工場へ受入不可の産業廃棄物を搬入すると不法投棄になる理由
2024年11月29日付 NHK 「産業廃棄物を不法に処分疑いで小樽の産廃業者社長を逮捕」
食品製造工場から出た産業廃棄物を一般のごみに混ぜて不法に処分した疑いで、小樽市の廃棄物処理業者の社長が逮捕されました。産業廃棄物を一般ごみに混ぜて処分にかかる費用を浮かせる手口で1000万円近くの差額を不正に受け取っていたとみられるということで、警察が詳しく調べています。
「食品製造工場」から発生した産業廃棄物ということなので、おそらく「動植物性残さ」と思われますが、それを一般廃棄物に混ぜて、そのまま小樽市の清掃工場へ搬入していた容疑で社長が逮捕されたことになります。
「清掃工場」って、廃棄物を燃やす場所なわけだから、そこで廃棄物を燃やしてもらうことがなぜ不法投棄になるの?
という、根本的な疑問を抱いた方が多いかもしれません。
この手の逮捕報道は珍しいものではないため、当ブログでも何度か取り上げたことがある題材なのですが、今回は根拠条文の引用から始め、その意味するところを一つずつ見ていこうと思います。
まずは根拠条文から
廃棄物処理法第16条(投棄禁止)
何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。
句読点を入れてもわずか21文字です。
「何人(なにびと)も」は、「誰もが」「誰も」という意味ですね。
「廃棄物を捨ててはならない」は、読んで字のごとく「廃棄物を捨てることを禁止する」という意味ですね。
重要な部分は「みだりに」となりますが、
公益財団法人日本漢字能力検定協会のHPでは、「みだりに」の同訓異字として4つの例が紹介されています。
https://www.kanjipedia.jp/sakuin/doukunigi/items/0006609600
「みだりに」
- 妄りに しっかりした根拠もなく。むやみやたらに。
「妄りに人を信用するな」「妄りに論ずべからず」「妄りに会社を休む」- 漫りに しまりなく。だらだらと。勝手きままに。
「漫りに時間を過ごす」「漫りに女性を口説く」「漫りに軽口をたたく」- 濫りに 抑制しないでむやみに。度を超して。
「濫りに原生林を伐採する」「濫りに酒を飲むな」「濫りに金を遣う」- 猥りに 正当な意味もなく、原則を押しまげてやたらに。
「猥りに禁句を口にする」「猥りに立ち入ることを禁止する」
法律の条文上の表現としては、「みだりに」としか書かれていませんが、
上記の廃棄物処理法第16条の「みだりに」は、「正当な理由なく」、あるいは「正当な理由があるとは認められない場合」と説明されることが多いため、漢字としては「猥りに」となりそうです。
一部の方が大好きな「猥褻」の「猥」の字ですね。
よって、「みだりに」を無理やり口語訳すると、
廃棄物処理法第16条は、
「何人も、そうする正当な理由が無いのに廃棄物を捨ててはならない」
となりますが、逆に若干読みづらくなった感があります。
さて、報道事例に話を戻すと、
小樽市の清掃工場は、小樽市内で発生した「生活系一般廃棄物」と「事業系一般廃棄物」を処分(焼却)するために、小樽市が税金を使って設置した施設です。
その清掃工場に、「事業系一般廃棄物」ではない「産業廃棄物」を持ち込み、小樽市にそれを焼却してくださいと依頼したとしても、
小樽市にしてみれば、排出事業者に処理責任がある産業廃棄物の「動植物性残さ」を受け入れる理由や必然性がありませんので、小樽市は産業廃棄物の搬入を当然断ることになります。
よって、小樽市に知られないように産業廃棄物を一般廃棄物の中に混ぜ込み、小樽市に産業廃棄物を焼却をさせるという行為は、「本来なら産業廃棄物を持ち込む権限がない場所に正当な理由なく産業廃棄物を持ち込み、置き去る」ことに該当し、「不法投棄」になります。
類似のケースをさらに挙げると、
「粗大ごみ」を、「粗大ごみ」の回収日ではない日に「ごみ回収ステーション」に放置した場合、
「ごみ回収ステーション」という場所自体は「元々廃棄物を置いても良い場所」ではありますが、
「ごみ回収ステーション」は「24時間365日いつでも使える場所」ではなく、「特定のごみ回収日限定で、常識の範囲内の特定の時間帯のみ、ごみステーションとして使える場所」ですので、「粗大ごみ」を「粗大ごみ回収日以外の日」に出すと、「正当な理由なく、廃棄物を捨てた」ことになり、やはり「不法投棄」に該当します。
今回は、廃棄物処理法第16条の「みだりに」の定義で終わりにしておきます。
次回の記事では、「委託物を不法投棄された排出事業者への責任追及の有無」について解説します。
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2024年12月2日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:news
産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付が不要な場合
産業廃棄物を他者に運搬、または処分委託をする場合、排出事業者は産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しなければならないことは、当ブログ読者の皆様にとっては当然のお話だと思います。
しかし、廃棄物処理法で(細々と)例外的に規定されている「交付不要」となるケースの詳細を知っている方となると、その数がかなり減るかもしれません。
今回は、廃棄物処理法で規定された「産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付が不要な場合」を、法律の条文から整理したいと思います。
まずは、廃棄物処理法の根拠条文から
(産業廃棄物管理票)
廃棄物処理法第12条の3第1項
その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者(中間処理業者を含む。)は、その産業廃棄物(中間処理産業廃棄物を含む。第12条の5第1項及び第2項において同じ。)の運搬又は処分を他人に委託する場合(環境省令で定める場合を除く。)には、環境省令で定めるところにより、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に当該産業廃棄物の運搬を受託した者(当該委託が産業廃棄物の処分のみに係るものである場合にあつては、その処分を受託した者)に対し、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票(以下単に「管理票」という。)を交付しなければならない。
「環境省令で定める場合」は「廃棄物処理法施行規則第8条の19」であり、具体的には次のように規定されています。
(産業廃棄物管理票の交付を要しない場合)
廃棄物処理法施行規則第8条の19
法第12条の3第1項(法第15条の4の7第2項において準用する場合を含む。以下同じ。)の環境省令で定める場合は、次のとおりとする。
- 一 市町村又は都道府県(法第11条第2項又は第3項の規定により産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分をその事務として行う場合に限る。)に産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合
- 二 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律第20条第2項の規定により国土交通大臣に届け出て廃油処理事業を行う港湾管理者又は漁港管理者(廃油(同法第3条第13号に規定する廃油をいう。以下この号及び第11号において同じ。)の収集若しくは運搬又は処分を行う場合に限る。)に廃油の運搬又は処分を委託する場合
- 三 専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集若しくは運搬又は処分を業として行う者に当該産業廃棄物のみの運搬又は処分を委託する場合
- 四 法第15条の4の2第1項の認定を受けた者(資源として利用することが可能な金属に係る当該認定を受けた者を除く。)に当該認定に係る産業廃棄物の当該認定に係る運搬又は処分を委託する場合
- 五 法第15条の4の3第1項の認定を受けた者(その委託を受けて当該認定に係る産業廃棄物の当該認定に係る運搬又は処分を業として行う者(同条第2項第二号に規定する者である者に限る。)を含む。)に当該認定に係る産業廃棄物の当該認定に係る運搬又は処分を委託する場合
- 六 第9条第二号の指定を受けた者に当該指定に係る産業廃棄物のみの運搬を委託する場合
- 七 第10条の3第二号の指定を受けた者に当該指定に係る産業廃棄物のみの処分を委託する場合
- 八 国(産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分をその業務として行う場合に限る。)に産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合
- 九 運搬用パイプライン及びこれに直結する処理施設を用いて産業廃棄物の運搬及び処分を行う者に当該産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合
- 十 産業廃棄物の輸出に係る運搬を行う者に本邦から輸出の相手国までの産業廃棄物の運搬を委託する場合
- 十一 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律第20条第1項の規定により国土交通大臣の許可を受けて廃油処理事業を行う者(廃油の収集若しくは運搬又は処分を行う場合に限る。)に同法第9条第3項に規定する外国船舶(専ら本邦の各港間又は港のみを航行するものを除く。)において生じた廃油の運搬又は処分を委託する場合
全部で11類型となりますので、読みやすく箇条書きで簡略化すると、
産業廃棄物管理票交付が不要な場合は、
- 市町村又は都道府県に産業廃棄物処理を委託する場合
- 海洋汚染防止法第20条第2項に基づき廃油処理事業を行う港湾管理者又は漁港管理者に廃油の処理を委託する場合
- 専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処理を業として行う者に当該産業廃棄物のみの処理を委託する場合
- 環境大臣から産業廃棄物の再生利用認定を受けた者(資源として利用することが可能な金属に係る認定を受けた者を除く)に、認定に係る産業廃棄物の処理を委託する場合
- 環境大臣から産業廃棄物の広域認定を受けた者(認定事業者から委託を受けて認定に係る産業廃棄物の処理を業として行う者を含む)に、認定に係る産業廃棄物の処理を委託する場合
- 都道府県知事から再生利用指定を受けた者に、指定に係る産業廃棄物のみの運搬を委託する場合
- 都道府県知事から再生利用指定を受けた者に、指定に係る産業廃棄物のみの処分を委託する場合
- 国に産業廃棄物処理を委託する場合
- 運搬用パイプライン及びこれに直結する処理施設を用いて産業廃棄物の処理を行う者に、産業廃棄物の処理を委託する場合
- 産業廃棄物の輸出に係る運搬を行う者に、日本から輸出の相手国までの産業廃棄物の運搬を委託する場合
- 海洋汚染防止法第20条第1項に基づき廃油処理事業を行う者に、外国船舶(専ら日本の各港間又は港のみを航行するものを除く)において生じた廃油の処理を委託する場合
となります。
実務上あてはまることが多いケースは、
「専ら物を専ら業者に処理委託する場合」と「広域認定事業者に処理委託する場合」の2つであろうと思います。
「専ら物を専ら業者に処理委託する場合」は、委託相手が「専ら業者(専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集若しくは運搬又は処分を業として行う者)」であれば、「資源としての買取り」ではなく、「引取り手数料を徴収される」いわゆる「逆有償」であっても、産業廃棄物管理票の交付は不要となります。
ただし、この「逆有償」取引の場合、産業廃棄物管理票の交付は不要ですが、専ら業者との産業廃棄物処理委託契約書の締結は必要ですので、ご注意ください。
また、広域認定事業者への委託の場合、廃棄物処理法では産業廃棄物管理票の交付不要と規定されていますが、
広域認定の申請の際に、その事業者が「処理管理体制」で、「産業廃棄物の処理確認方法」として、「産業廃棄物管理票を使用する」と記載している場合は、市販されている産業廃棄物管理票を運用する必要があることにもご注意ください。
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2024年11月26日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:産業廃棄物管理票(マニフェスト)
「委託する産業廃棄物の種類=許可証のとおり」は適法か?
産業廃棄物処理委託契約書中の「委託単価」を「見積書のとおり」と記載することの是非については、
当ブログ
・2021年10月21日付記事 「「委託料金」は「見積書記載のとおり」でOK?」
・2015年10月9日付記事 「契約書の「委託料金」欄を「別途見積」とすることの可否」
で「委託基準違反を引き起こす可能性が高いため、推奨できない」と解説してきたところです。
「委託単価=見積書のとおり」以外の新種の記載手口が見つかりましたので、今回はその新種の危険性について解説いたします。
※前提条件
・排出事業者が委託する産業廃棄物の種類は「廃プラスチック類のみ」
・委託先処理業者が所持する収集運搬業許可の「事業の範囲」は、「廃プラスチック類」の他「木くず」「がれき類」等の建設廃棄物関連の全部で8品目2.(委託する産業廃棄物の種類、数量及び単価)
甲が、乙に収集・運搬を委託する産業廃棄物の種類、数量及び収集・運搬単価は、次のとおりとする。
種 類: 許可証のとおり
数 量: 10㎥/月
単 価: 見積書のとおり
排出事業者が「委託する産業廃棄物の種類」が「廃プラスチック類」のみであるのに、上記の記載方法では、「委託する産業廃棄物の種類」をまったく特定していません。
「許可証のとおり」という文字を百万回眺めても、「廃プラスチック類」という文字が浮かび上がってくることはありません。
処理業者が提供した許可証の写しの「事業の範囲」の中に「廃プラスチック類」が含まれてはいますが、
産業廃棄物処理委託契約書の「委託する産業廃棄物の種類」は、廃棄物処理法で義務付けられた法定記載事項の一つですので、
排出事業者は「どの種類の産業廃棄物(今回の場合なら「廃プラスチック類」)を委託するのか」を、具体的に記載して特定する義務が有ります。
※参考 産業廃棄物処理委託契約書の法定記載事項の一覧
よって、このような産業廃棄物処理委託契約書を作成・保存している排出事業者は、「私は委託基準違反をしています」という自社にとって不利益にしかならない証拠を適法なものと思い込み、真面目に(?)保存していることになります。
自社の違法行為を証明する書類を嬉々として保存している様子は、他人から見ると喜劇でしかありませんが、さらにその喜劇性、あるいは悲劇性を高める要素は「委託基準違反の契約書で罰せられるのは排出事業者のみ」という事実です。
十中八九、このような記載を提案するのは、排出事業者ではなく、産業廃棄物処理業者だと思われますが、委託基準は排出事業者のみに課された責任ですので、排出事業者だけが刑事罰に処されることとなります。
ではなぜ、処理業者はこのような危ない契約方法を提案してくるのか?
その理由は簡単で、「その処理業者が契約書作業の手抜きをしたいから」に他なりません。
手抜きをしたい業者目線で言うと、
「許可証のとおり」と書いておけば、後から契約対象の産業廃棄物の種類を増減させるのが簡単!
いちいち顧客ごとに、「ここは廃プラと木くず」「あちらは金属くずとがれき類」と契約対象を書き分けなくて良くなるので、アタシって天才!
と良いことづくめだからです(改めて言うまでもなく、違法な契約方法です)。
「産業廃棄物処理業者はプロフェッショナルだから、完璧な契約書を提案してくれるに違いない」という思い込みは危険であり、誤っています。
もちろん少なくない数の「廃棄物処理法に関してもプロフェッショナル」な業者は存在しますが、
「手抜きだけのプロフェッショナル」という、企業としては取引したくない相手が実在していますので、排出事業者自身が委託基準を理解しておくことは非常に重要なのです。
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2024年11月18日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:委託契約書
市町村性善説の持続可能性
町役場が共同で設立した一部事務組合が大量の廃棄物を2年以上にもわたり野ざらしのまま放置し続けるという、前代未聞の不祥事が発覚しました。
2024年11月7日付 NHK 「廃棄物500トン以上を2年あまり放置 道が繰り返し行政指導」
ごみの処理などを行っているせたな町と今金町の2つの町でつくる一部事務組合が、2年あまりにわたり、500トン以上の廃棄物を処理せず野積みのまま放置していたとして、道から繰り返し行政指導を受けていたことが分かりました。
NHKの報道映像を見ると、「一部事務組合の廃棄物保管場所」ではなく、「廃棄物の不法投棄現場」にしか見えません(苦笑)。
一部事務組合は、地方自治法によって規定された「特別地方公共団体」ですので、ここまで杜撰な方法で廃棄物を放置すること自体が極めてまれと言わざるを得ません。
処理場で働くすべての人間がゾンビ化し、誰も施設を管理する人間がいなくなったのか!?
はたまた、外国勢力に施設を占拠され、自由に施設を動かせなくなったのか!?
と、最近流行しているドラマや映画のような筋書きを想像してしまいましたが、真相は
関係者によりますとこの組合では、破砕処理施設の機材が故障したのをきっかけに、ごみを処理せず所有する敷地内に野積みのまま放置していたのをおととし行われた道の立ち入り検査で発覚したということです。
と、「破砕機の故障」という、拍子抜けするくらいに単純な理由でした。
気になった部分は、次の
ごみは、大量の家庭ごみのほか、公共工事で出た木くずなども混じり、2年以上放置され、ことし9月の時点で520トンあまりが確認されました。
「2年以上放置され」という部分
北海道から不適正保管を見とがめられたのが2年前で、その後も不適正保管が漫然と続けられていたことになります。
NHKの報道では、
発覚したあと、道は4回にわたり立ち入り検査を行うとともに、「速やかに埋め立て処理するなどの対応をとるべきところ、未処理のごみを長期間保管することは違法にあたる」として、廃棄物処理法に基づき組合に対し繰り返し行政指導を行ったということです。
北海道としても漫然と事態を黙認していたわけではなく、「行政指導」で改善を指導していたようです。
ここで、「一般廃棄物の問題なのに、なぜ北海道が行政指導をする?」と疑問に思った方がいるかもしれません。
その答えは、「一部事務組合が設置した施設は、都道府県知事に届出が必要な一般廃棄物処理施設だから」です。
市町村以外の者が一般廃棄物処理施設を設置する場合は、設置場所を管轄する都道府県知事から設置許可を受ける必要がありますが、市町村の場合は、廃棄物処理法第8条及び第9条の3の規定により、「都道府県知事への届出」だけで設置可能です。
廃棄物処理法第8条第1項(一般廃棄物処理施設の許可)
一般廃棄物処理施設(ごみ処理施設で政令で定めるもの(以下単に「ごみ処理施設」という。)、し尿処理施設(浄化槽法第2条第一号に規定する浄化槽を除く。以下同じ。)及び一般廃棄物の最終処分場で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者(第6条の2第1項の規定により一般廃棄物を処分するために一般廃棄物処理施設を設置しようとする市町村を除く。)は、当該一般廃棄物処理施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。廃棄物処理法第9条の3第1項(市町村の設置に係る一般廃棄物処理施設の届出)
市町村は、第6条の2第1項の規定により一般廃棄物の処分を行うために、一般廃棄物処理施設を設置しようとするときは、環境省令で定めるところにより、第8条第2項各号に掲げる事項を記載した書類及び当該一般廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類を添えて、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
「市町村」や「一部事務組合」が「届出」だけで済む理由としては、
- 「地方自治体が法律違反となる申請をするはずがない」という、市町村性善説に立つことが現実的
- 都道府県と市町村は本来上下関係ではなく、対等の存在である(役割が異なる)
- 市町村の自治事務に関する問題で、都道府県に許認可権を与えることは不適切
といったことから、市町村等による一般廃棄物処理施設の設置に関しては、「許可申請」ではなく、「届出」だけが必要とされています。
「許可(第8条)」と「届出(第9条の3)」でもっとも大きく異なる点は、「都道府県知事が発出する改善命令の対象範囲」です。
「許可」を受けた一般廃棄物処理施設の場合、都道府県知事が廃棄物処理法第9条の2第1項に基づき発出する改善命令の対象範囲は、次のように規定されています。
第9条の2第1項(改善命令等)
都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当するときは、第8条第1項の許可を受けた者に対し、期限を定めて当該一般廃棄物処理施設につき必要な改善を命じ、又は期間を定めて当該一般廃棄物処理施設の使用の停止を命ずることができる。
- 一 第8条第1項の許可に係る一般廃棄物処理施設の構造又はその維持管理が第8条の2第1項第一号若しくは第8条の3第1項に規定する技術上の基準又は当該許可に係る第8条第2項の申請書に記載した設置に関する計画若しくは維持管理に関する計画(これらの計画について前条第1項の許可を受けたときは、変更後のもの)に適合していないと認めるとき。
- 二 第8条第1項の許可を受けた者の能力が第8条の2第1項第三号に規定する環境省令で定める基準に適合していないと認めるとき。
- 三 第8条第1項の許可を受けた者が違反行為をしたとき、又は他人に対して違反行為をすることを要求し、依頼し、若しくは唆し、若しくは他人が違反行為をすることを助けたとき。
- 四 第8条第1項の許可を受けた者が第八条の二第四項(前条第二項において準用する場合を含む。)の規定により当該許可に付した条件に違反したとき。
「構造基準や維持管理基準等に適合していない場合(第一号)」、「施設設置者の能力基準に適合していない場合(第二号)」、「廃棄物処理法違反をした、またはその教唆や幇助(第三号)」、「許可条件違反(第四号)」と全部で4つのケースが想定されています。
しかし、「届出」をした「市町村」に対しては、廃棄物処理法第9条の3第10項で、
廃棄物処理法第9条の3第10項
都道府県知事は、第1項の規定による届出に係る一般廃棄物処理施設の構造又は維持管理が第8条の2第1項第一号若しくは第8条の3第1項に規定する技術上の基準又は当該届出に係る第1項に規定する第8条第2項各号に掲げる事項を記載した書類に記載した設置に関する計画若しくは維持管理に関する計画(これらの計画について第8項の規定による届出をしたときは、変更後のもの)に適合しないと認めるときは、その設置者又は管理者に対し、当該一般廃棄物処理施設につき必要な改善を命じ、又は期間を定めて当該一般廃棄物処理施設の使用の停止を命ずることができる。
と規定されているとおり、「構造基準や維持管理基準等に適合していない場合」に限定されています。
一部事務組合が
- 能力基準を満たさない状況
- 廃棄物処理法違反をしたり、他者に要求、依頼
するような事態は、法律がそもそも想定していない状況であるため、「届出」の場合は、都道府県知事が関与する範囲がより狭く限定されています。
「破砕機の故障の放置」が、「構造基準」や「維持管理基準」に抵触するかとなると、直接的には抵触してはいませんので、北海道としても、「改善命令」や「施設の使用停止命令」ではなく、「行政指導」で一部事務組合に是正を働きかけるしかなかったものと思われます。
なお、廃棄物処理法第19条の4では、「一般廃棄物処理基準違反に対する措置命令」規定が置かれていますが、第19条の4の措置命令の発出者は、都道府県知事ではなく、「市町村長」になりますので、
今回のケースを例とするならば、いずれかの「町長」から、町役場が共同して設立した一部事務組合に対し「第19条の4に基づく措置命令」を発出すること自体は可能ですが、それは、「自分から自分に」「法律違反を是正せよ」という命令を出すのと同様ですので、「そんな暇があるならば、自分自身ですぐに是正をせよ」というおかしな話にしかなりません。
このように、法律は、「そんな事態は有り得ない」という想定外のケースや、「市町村なら法律どおりに仕事をするだろう」という暗黙の了解が守られない場合には、意外と脆弱な側面があります。
今回の一件は、
「市町村等は絶対に法律違反をしない」という想定が市町村自身によって公然と否定された、最初で最後のものとなるのでしょうか?
それとも、今後も同様の関係者のゾンビ化が疑われる事件がまた起きるのでしょうか?
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2024年11月11日 | コメント/トラックバック(2) |
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経団連の2024年度規制改革要望
2024年9月17日付で、一般社団法人日本経済団体連合会から「2024年度規制改革要望」が公表されました。
一般社団法人の「要望」であり、この内容が法律改正にそのまま適用されるわけではありませんが、2025年から議論開始が目される「廃棄物処理法改正」にも影響を与えそうなタイミングですし、実際に過去の経団連の規制改革要望の一部が「廃棄物処理法改正」に取り入れられた経緯もありますので、少し遅くなりましたが、当ブログでも紹介させていただきます。
Ⅲ. 2024年度規制改革要望【新規】
「2.環境」
No.18. 使用済みの靴の再資源化促進に向けた制度整備
No.19. 消費者から回収した再資源化目的の廃棄物に関する輸出規制緩和
No.20. プラ新法での自主回収・再資源化に際しての再委託の容認
No.21. 排出場所と同一敷地内での廃棄物発電事業等の容易化
No.22. 親子会社間における廃棄物の保管・委託等の一体的推進の容易化
No.23. 店頭回収されたペットボトル等の効率的な収集運搬の加速化
No.24. 小型家電リサイクル法の認定に係る登録管理項目の一部緩和
No.25. 原子炉関連技術の役務取引許可に関する規制緩和
2024年度は、「環境」関連では8項目が挙げられていますが、そのうち、「No.25」は「外為法」に関係するものですので、「廃棄物リサイクル関連法」に関する要望としては7項目となります。
上記のうち、実現可能性が一番高く、環境省からの通知の発出だけで日の目を見そうなものは、
No.22. 親子会社間における廃棄物の保管・委託等の一体的推進の容易化
<要望内容・要望理由>
事業者が産業廃棄物の処理を自ら行う場合、廃棄物処理業の許可は不要である一方、処理を他に委託する場合には、委託先は処理の業許可を得ている必要がある。許可制度を設け、許可基準に適合する事業者が廃棄物処理を行うことで、生活環境保全上の支障が生じる可能性や不法投棄等の不適正処理を未然に防止している。しかし昨今、経営効率化の観点から企業の分社化等が進む中、一つの事業者であったものが、同一敷地内で親会社と子会社に分かれているケースが出てきている。こうした場合、従前(親会社と子会社に分社化される前)と排出や委託等の実態が変わらないとしても、二つの事業者に分かれることで廃棄物の保管や処理委託等を個別に実施する必要があり、事業者側の負担となっている。
そこで、廃棄物処理法の基準等を満たし、1.同一の敷地内かつ子会社の発行済株式の総数を保有する(100%の親子会社関係等、一体的な経営を行っている)こと、2.排出事業者責任は親会社にあること、もしくは親子会社間でそれぞれに共有したうえで、親会社が同一敷地内の子会社の廃棄物を集約して保管・委託等を可能とすることで、事業者側の実務負担をできるだけ効率化すべきである。
これにより、適正処理の確保に係る社会全体のコストが下がることが期待される。
<根拠法令等>
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第3条、第11条、第12条の7
ではないかと考えています。
私見ではありますが、「共同集荷場所(=産業廃棄物保管場所)の提供」と「産業廃棄物管理票の(共同)交付」については、平成23年3月17日付「産業廃棄物管理票制度の運用について」を改定すれば、法律改正をするまでもなく、「行政解釈の変更または明確化」で上記の内容を実現できるのではないかと思っています。
ただし、上記の通知では、「委託契約書(委託基準)」に関する言及はほぼされていませんので、経団連の要望内容に基づいた通知の改定をする場合は、別項目で「親会社が同一敷地内の子会社の廃棄物を集約して保管・委託等を可能とする」旨の説明を書く必要があります。
もう一つついでに私見を述べさせていただくと、テナントビルから発生した廃棄物の排出事業者は、「各テナント」ではなく、「テナントビルの管理者または所有者」の方が合理的と思っています。
個別のテナントごとに処理業者と契約をさせるという現状(?)は、テナントと処理業者の双方にとって手間が掛かりすぎるだけだからです。
次の規制改革要望では、「テナントビルで発生した廃棄物の排出事業者」について、経団連から是非声を上げていただくことを期待しております。
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2024年11月6日 | コメント/トラックバック(0) |
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「移動式がれき類等破砕施設」に関する特例措置
「移動式がれき類等破砕施設」という用語をご存知の方は、2000年以降からのマニアというかなり年季の入った廃棄物処理法マニアです。
「移動式がれき類等破砕施設」とは、工事現場で自走可能な破砕機で、工事現場で発生した「がれき類等」を工事現場内で迅速に処分し、その現場での工事終了と共に撤収をするという、建設工事現場に最適な産業廃棄物処理施設です。
コマツ社の「ガラパゴス」がもっとも有名で、「ガラパゴス」は移動式破砕機の「代名詞」のような存在になっています。
画像は、コマツ社HP 「自走式破砕機 BR380JG-3 ガラパゴス」から転載させていただきました。
廃棄物処理法第15条で規定された「産業廃棄物処理施設」は、下記の21施設ですが
産業廃棄物処理施設の「種類」や、「一定以上の処理能力」がある施設の場合、廃棄物処理法第15条に基づく設置許可が必要です。
しかし、本日のテーマである「移動式がれき類等破砕施設」については、第15条の例外措置となる規定が設けられているため、「設置許可不要」となる場合があります。
その例外規定とは、下記の「附則」となります。
附 則 (平成一二年一一月二九日政令第四九三号)
(施行期日)
第一条
この政令は、平成十三年二月一日から施行する。(経過措置)
第二条
当分の間、移動式がれき類等破砕施設(この政令による改正後の廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(次項において「新令」という。)第七条第八号の二に掲げる産業廃棄物の処理施設であって移動することができるように設計したものをいう。次項において同じ。)を設置しようとする者(事業者に限る。)は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下この条において「法」という。)第十五条第一項の許可を受けることを要しない。
2~3 略第三条
略
ポイントとしては、
- 排出事業者自身が
- 移動式がれき類等破砕施設を設置する
場合のみ、「設置許可不要」となります。
逆に、「下請会社」や「産業廃棄物処理業者」が移動式がれき類等破砕施設を設置する場合は、上記の附則の対象から外れますので、廃棄物処理法第15条の産業廃棄物処理施設設置許可の取得が必要となります。
※一部の自治体においては、関係住民との合意形成重視の観点から、固定化されない「移動式がれき類等破砕施設」の設置許可を認めていない場合がありますので、ご注意ください。
ちなみに、「移動式がれき類等破砕施設」と「等」と抽象化されているとおり、「廃棄物処理法施行令第7条第八号の二に掲げる産業廃棄物の処理施設」には、「木くず又はがれき類の破砕施設」の2施設が含まれますので、「がれき類の移動式破砕施設」のみならず、「木くずの移動式破砕施設」も上記の附則の対象となる場合は、設置許可不要です。
さて、ここで、「なぜ法律の条文ではなく、附則という普通は読まない部分で規定しているのか?」という疑問を持った方が多いかもしれません。
「附則」の役割や位置づけについては、参議院法制局の若手・中堅職員の有志の方々がわかりやすく解説してくれています。
参議院法制局 「見落とせない附則」
法律の規定は「本則」と「附則」から構成され、本則には、法令の本体的部分となる実質的な定めが置かれるのに対して、附則には、本則に定められた事項に付随して必要となる事項が定められることとなっています。このように聞くと、附則に規定される事項はあまり重要ではないようにも思われてしまうかもしれませんが、附則にも本則に劣らないほど重要な事項が定められることが多々あります。
(略)
附則に規定される事項は法律の内容によって異なりますが、まず最初に置かれるのが施行期日に関する定めです。施行とは、その法律が実際に効力を発揮することを言い、施行期日は、法律の効力発生時期を明確にするために定められるものです。
また、法律の改正が行われると、新制度への移行を円滑に行うための経過的な措置や、新旧法令の適用関係を明確にするための定め等が必要となりますが、これらの事項も附則における重要な規定事項です。例えば、罰則の規定が改正されれば、改正前の行為に対する罰則の適用をどうするかについての規定が必要となってきますし、税率が変われば、いつの時点の取引から新税率を適用すべきかなどについて定めを置くことが必要となってきます。
(略)
このように見てくると、附則には、経過措置など当事者にとって重大な影響を及ぼす事項が規定されていたり、特例など本則だけを見ていたのでは分からないような事項が規定されていたりします。複雑な規定も多く、また、付随的事項ということで見過ごしてしまいそうですが、いずれも、本則の円滑な運用のためには不可欠な規定であり、見落としてはならない法律の重要な構成部分と言えましょう。
通常、法律に書かれたことを理解するためには、法律なら法律の条文だけを読むことが一般的で、条文のみならず「附則」のすべてを丹念に読み込む人はほとんどいないと思われます。
私もその例外ではなく、廃棄物処理法以外の法令の場合、延々と続く「附則」はノーマークということがほとんどです。
その意味では、「存在を知る人しか読まない(=知らない)存在」が「附則」と言えますが、参議院法制局のHPが解説してくれているとおり、「本則(条文)に劣らないほど重要な事項」でもありますので、今回の記事では初めて「附則」の内容を取り上げてみました。
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2024年10月30日 | コメント/トラックバック(0) |
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