焼肉チェーン店社長の謝罪会見から考えるコンプライアンスの在り方

本日は廃棄物と直接的には関係ない記事です。

しかし、「コンプライアンス」という意味では、示唆に富んだ事件です。

コンプライアンス=法令順守 だけではない
ことは、当ブログで繰り返し書いてきたことですが、

件のチェーン店社長の謝罪会見では、
コンプライアンス=法令順守 という間違った理解が、
これまた間違った形で社会に向けて表明されてしまいました。

 「生肉を規制しなければ、同じような惨事が起こる可能性はある」

というものです。

この発言の問題点は、「生肉の規制がなかったので、食中毒を起こしても違法ではない」
と聞こえることです。

もちろん、そんなことはなく、
飲食店で提供した食物が原因で食中毒が起こった以上、
焼肉店は食品衛生法その他の法律に基づき、事故の責任を負う必要があります。

「コンプライアンスを達成するためには、法令順守だけしておればよい」という
考えに拠ったとしても、上記の社長の発言は矛盾しているわけですが、
その矛盾を社会に対して具体的に示したという点を、少し重く受け止める必要があります。

焼肉チェーン店社長は、くしくも、「法令順守のみがコンプライアンス」という一般的な概念を素直に表明しただけなのかもしれません。
その概念をイラストにすると、下記のようなものになります。

法令順守こそが、コンプライアンスの本質であり、企業に対する唯一の要請事項であるというものですね。

しかしながら、上述したように、このような理解のみでは、規制が高度化及び複雑化した現在の日本社会では十分に機能しなくなります。

「生食の規制が無いから違法じゃない」という開き直りが、その論理的破綻を象徴しています。
※今回の食中毒事件に限って言えば、規制が複雑とは言えないのですが・・・

法律に適合するかどうかを判断することは非常に重要ですが、
その判断の対象となる法律を「1つだけ」しか想定しない限り、今回のような事件はなくならないことでしょう。

必要なことは、「規制の有無」といった単一のリスクのみを追うのではなく、
できるだけ多方面から問題に光を当て、あらゆる法律面のリスクを検討・評価することです。

そして、もっと重要なこととして、本来は子供でもわかることなのですが、
法律の規制の有無に関係なく、「人を殺すリスクがある食品をお客に提供することが正しいかどうか」を判断する常識です。

今回の事件でも、事前に保健所が肉の表面をカットするよう行政指導していたようですが、店側はコストを重視したため、その指導を無視してユッケをお客に提供していたようです。

法律云々という前に、飲食店に対する社会的要請
「美味しいものを提供する」「食べても安全なものを提供する」などを
当然視していれば、これだけ大量の食中毒事件を発生させることはなかったはずです。

コンプライアンス=100%法令順守のみ という理解の危険性はここにあります。

法令順守ももちろん大事ですが、法律はどうしても画一的で一方的な書き方になってしまいますので、
実際の現場においては、法律に書かれていないことを埋める解釈が不可欠です。

その解釈の基本となるのは、「独善」や「長年の経験」ではなく、
「社会的要請にどうすれば応えられるか」という価値判断です。

その他、法令適合の解釈だけが得意でも、実務ではほとんど役に立ちません。
その解釈を組織全体で共有し続けるための「仕組み」が絶対に必要です。

このようにコンプライアンスは多様な側面を併せ持つ言葉ですので、
「法令順守」という一つの側面のみで理解をすることは、
無意味どころか危険でもあります。

個人的には、日本においてのコンプライアンスの在り方を図で表すと、下記のようなものを考えております。

法令順守のみならず、自社への社会的要請の理解や、コンプライアンスを維持し続ける仕組みもそれと同等に重要です。

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