下取りの無限連鎖は可能か?

製品販売事業者による、新品の販売時の旧製品の無償回収行為は、
「廃棄物処理・リサイクルの進展につながる」ため、廃棄物処理業の許可なしに回収することが認められています。

その根拠は、
平成12年9月29日付衛産79号「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務の取扱いについて」 に簡単に記載されています。

13.その他
(1) 略
(2)新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取り行為については、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であること。

本来、このような例外措置は、立法化をして廃棄物処理法の条文に明示することが必要なのですが、
行政解釈として滞りなく運用されてきた歴史があるため、いまだに法律では規定されていません。

今回は、行政通知で例外措置を認めることの是非についてこれ以上論じません。

本日のテーマは、販売業者が無償引き取りしたものを、さらに製造事業者などに無償で下取りさせることが可能かどうかです。

結論としては、製造事業者に廃棄物処理業の許可や、広域認定、個別リサイクル法に基づく根拠などがあれば可能です。

ただし、この結論をより具体的に言い換えると、
99.999%の製造事業者は、処理業の許可その他を取得していませんので、他者の廃棄物を無償で引き取ることは不可能です。

通知で認められているのは、商習慣の一環で新品の販売と引き換えに無償回収する行為ですので、
商習慣とは異なる、通常の商取引にまで無限に拡大して解釈運用することには無理があります。

たしかに、社会の行き着く先としては、製造事業者が製造から廃棄物処理までをすべて担うシステムになるのかもしれませんが、
現状の社会制度下では、すべての製造事業者にそのような責任を負わせることが著しく不合理であるため、
広域認定や各リサイクル法で、個別に指定をしています。

そもそも、販売事業者が顧客サービスとして下取りをしておきながら、
一切の排出事業者責任を放棄して、他の事業者に無償で廃棄物処理をさせることは、
明確な委託基準違反となります。

下取りの無償回収は、あくまでも製品の販売事業者に、
収集運搬業の許可取得を不要とする例外措置であり、
排出事業者責任を無限に移転させることを認める趣旨ではありません。

非常に実務的な結論付けをすると、
下取りは、ユーザーと直接接している末端の販売事業者のみに認められた例外措置で、
末端販売事業者から、卸しの販売事業者や、そのまた上の製造事業者に対して
「うちがお客から無償で引き取ったので、おたくも無償で引き取ってくれよ」という根拠にはならない
ということです。

下取り回収をしたものは、末端の販売事業者が排出事業者として、適切に処理・リサイクルを実行する必要があります。

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