改善命令違反への行政の対抗策Vol.2「実際の選択結果」
一つ前の記事 「改善命令違反への行政の対抗策」を更新したその日に、早速続報のニュースが入りました。
2025年2月3日付 tbc東北放送 「「お金がないので今はできません」産業廃棄物処理会社『砂押プラリ』期限までに“感染性廃棄物”全体の2割しか処理しきれず 宮城・加美町」
「お金がないので今はできません」の一言に報道の核心が凝縮されています。
少し待てば資金調達できる見込みがあるのかどうかはわかりませんが、現実問題として、「資金が無い」ため「撤去作業を行えない」ことはわかります。
「今は」と、「将来的には善処する可能性を残している」ところを見ると、
不適正処理事案に対する一般的な先入観とは異なり、件の社長さんは根っからのアウトローなどではなく、極々フツーの経営者という印象を受けました。
とは言え、産業廃棄物処理業者として、感染性廃棄物の処分や、産業廃棄物管理票の運用方法に大きな不備があったことも事実です。
フツーの人が懲役刑付きの重罪となる法律違反を容易に起こしてしまうところが、廃棄物処理法の怖さでもあります。
マニフェストという言ってしまえば紙切れの不用意なミスで、社長のみならず、雇用されていた従業員及びその家族までが不幸になってしまいますので、当ブログ読者の皆様におかれましても、今一度、社内で廃棄物処理法違反が起きていないかをご確認いただけると幸いです。
さて、今回の本題の、宮城県の今後の対応方針は
(宮城)県は、今のところ刑事告発や更なる行政処分を下す予定はなく現場の監視と指導を続けていくということです。
前回の記事では、
- 「改善命令違反」として告発する
- 自主的な撤去を指導し続ける
- 新たな行政処分を科す
の3つの選択肢が考えられると書きました。
報道内容によると、「1」の刑事告発は採らず、当面の間は、「2」の「自主的な撤去を指導し続ける」ことをベースとしているように見えますが、
実際のところは、
ほかの産業廃棄物業者への委託については排出事業者さんが自主撤去されているという形で進んでいる
と担当課長が答えていることから、
「3」に近い「排出事業者への措置命令の可能性」を示唆しつつ、排出事業者の負担に基づく撤去要請を基本路線としているのでは?と、個人的には憶測しています。
以下は余談です。
上記の「排出事業者への撤去要請」については、委託基準違反をしていない排出事業者の場合は、従う義務は一切ありません。
しかしながら、実際には、「委託基準違反はしていないが、協力金の寄付を要請されたので、とりあえず何万円か寄付しておこう」という意思決定を行う企業が結構多くあります。
企業の自由意志に基づき、社会貢献(?)として、なにがしかの寄付を行うこと自体は問題ありませんが、
委託基準違反をしていないのであれば、ビタ一文支払うべき理由はありません。
逆に、「委託契約書の不備」や、今回の事件のように「マニフェストの記載不備を放置していた」場合は、委託基準違反や産業廃棄物管理票の運用義務違反をしていたことになり、廃棄物処理法第19条の5の措置命令の対象になる可能性が高くなります。
その場合は、自主的な撤去要請には真摯に対応し、排出事業者としての最低限の事後処理責任を果たさないと、措置命令が発出され、自治体HPで社名と代表者氏名が公開される可能性があります。
余談のまとめ
委託基準違反をしていた排出事業者は、撤去要請に応じた方が得策
委託基準違反をしていない排出事業者は、報告徴収に虚偽の報告をしていない限り、撤去要請に応じる義務無し
« 改善命令違反への行政の対抗策 軽すぎる行政処分の弊害 »
タグ
2025年2月6日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:news