排出事業者は最終処分先情報をどこまで把握すべきか(第1回 法律の定義)

セミナーやご相談の際によく受ける質問に、
「中間処理委託契約を締結する際に、排出事業者は最終処分先の情報をどこまで把握すべきか?」というものがあります。

皆様ご存知のとおり、上記の場合の最終処分先は、排出事業者の取引相手ではなく、中間処理業者が最終処分を委託する事業者となります。

そのため、「排出事業者自身が選定をした相手ではないため、排出事業者が負う排出事業者責任の範囲から外れるのではないか?」と感じてしまう方が多いのかもしれません。

排出事業者が選定をしたわけではない第三者の行為で排出事業者の責任が問われる事態を、不合理と言いたくなる心情は理解できます。

しかし、法的にも完全に無関係と言い切れるかどうか?

ここを社会実態に照らして正確に把握することは、企業統治、あるいは企業活動上、非常に重要な取組みと私は考えています。

そう考える理由は今後の記事で追々詳らかにするとして、今回は、議論や検討の基礎となる廃棄物処理法の定義を抑えておきます。

排出事業者の委託基準は、廃棄物処理法第12条第5項及び第6項で定義されています。
有名な条文ですので、読みやすさを優先して、今回の検討上不要な用語は省き、簡略化して掲載します。

廃棄物処理法第12条(事業者の処理)
 事業者は、自らその産業廃棄物の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(産業廃棄物処理基準)に従わなければならない。

5 事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。

6 事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。

政令で定める基準は、「廃棄物処理法施行令第6条の2」となり、中間処理委託契約時の最終処分先の情報に関する規定は下記のとおりです。

廃棄物処理法施行令第6条の2(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)

 法第12条第6項の政令で定める基準は、次のとおりとする。

一~三 略
四 委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。
イ~ロ 略
ハ 産業廃棄物の処分又は再生を委託するときは、その処分又は再生の場所の所在地、その処分又は再生の方法及びその処分又は再生に係る施設の処理能力
ニ 略
ホ 産業廃棄物の処分(最終処分を除く。)を委託するときは、当該産業廃棄物に係る最終処分の場所の所在地、最終処分の方法及び最終処分に係る施設の処理能力
ヘ 略
五~六 略

下線を引いた、委託契約書に添付すべき「環境省令で定める書面」は後で取り上げます。

上記の「ハ」は、「処分または再生」、すなわち「中間処理」を委託する際の法定記載事項として、委託先中間処理業者の「所在地」や「処理能力」その他を法定記載事項として定めています。

他方「ホ」は、「処分」とのみあり、「再生を委託する場合」は除外されていることがわかります。

これは、「再生委託」の場合は、再生処理後物は「廃棄物」ではなくなり、埋立や海洋投入等の最終処分を行う必要もなくなるためです。

ちなみに、環境省は通知その他で「再生」を、

「再生」とは、廃棄物から原材料等の有用物を得ること、または処理して有用物にすること

と定義しています。

以上のとおり、「破砕」や「焼却」等の、中間処理残さが発生する「処分(中間処理)」を委託する場合は、

  • 「(残さを)最終処分する場所の所在地」
  • 「(残さを)最終処分する方法」
  • 「(残さを)最終処分する施設の処理能力」

の3つを必ず記載しなければなりません。

先に飛ばした、委託契約書に添付すべき「環境省令で定める書面」は、

廃棄物処理法施行規則第8条の4(委託契約書に添付すべき書面)
 令第6条の2第四号の環境省令で定める書面は、次の各号に掲げる委託契約書の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。

一 産業廃棄物の運搬に係る委託契約書 (略)
二 産業廃棄物の処分又は再生に係る委託契約書 第10条の6に規定する許可証の写し(筆者注:「産業廃棄物処分業許可証」のこと)(以下、略)

となります。

「中間処理委託先の処分業者の許可証(写し)」は、中間処理委託契約書に添付しなければなりませんが、
「中間処理委託先の委託先である最終処分業者の許可証(写し)」を、中間処理委託契約書に添付する法的義務は無いことになります。

法律上絶対に守らなければならない義務規定を結論としてまとめると、
「再生」ではない「処分」を委託する際には、「最終処分先に関する情報」として、

  • 「(残さを)最終処分する場所の所在地」
  • 「(残さを)最終処分する方法」
  • 「(残さを)最終処分する施設の処理能力」

の3点を中間処理委託契約書に記載することが、最低限の法的な義務となります。

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