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汚物は消毒?
鹿児島県阿久根市の知名度を一気に上げた元市長で現阿久根市議による、ガスバーナーで廃マットレスを焼却するという「北斗の拳」の世界観(「汚物は消毒だあ~!!」)を体現したような犯罪の裁判が始まったそうです。
2025年4月24日付 南日本新聞 「マットレスを空き地で燃やした元阿久根市長、改めて「違法性ない」 廃棄物処理法違反で起訴された竹原信一市議」
廃棄物を不法に焼却したとして、廃棄物処理法違反(焼却の禁止)の罪に問われた元阿久根市長(鹿児島県)で同市議の竹原信一被告(66)の公判が23日、鹿児島地裁川内支部(坂口和史裁判官)であった。検察側は冒頭陳述で「ガスバーナーなどを利用して着火した」と述べた。
起訴状によると、竹原市議は2024年3月29日、法律で定められた除外理由がないのに、廃棄物のマットレスなど(焼却後重量計120キロ)を市内の空き地で燃やしたとされる。
検察側は、親戚がごみ処理場に運搬しようとしていた不要品を竹原市議が引き受けたと説明。同日午前9時半ごろ、ガスバーナーなどを使って火を付けて焼却を始め、阿久根市役所から情報提供を受けた警察官が目撃した、と述べた。
ガスバーナーでマットレスを焼却という行動がまず不思議です。
紙くずならいざ知らず、ガスバーナーでマットレスを完全に燃やすことは物理的に困難だからです。
スプリングコイルが入っていない折りたためるマットレスであれば、燃焼促進剤を用いればなんとか燃やし尽くせるのかもしれませんが、スプリングコイルが入ったマットレスの場合は、燃やし尽くすことは不可能です。
「焼却後重量」が「120キロ」とのことですので、焼却で幾分かは減量化された状態で120キロですから、焼却前の重量はさらに重かったことになります。
そのため、マットレス以外にも、木製タンス等の大型家具を燃やしたのかもしれません。
行為者自身の認識では
閉廷後、取材に応じた竹原市議は、法令で焼却を認めた「軽微なもの」に該当し、「違法性はない」と改めて示した。
とのことですが、「焼却重量120キログラムのどこが軽微なのだろうか?」という疑問しか浮かびません。
野外焼却の除外事由が論点として挙げられていますので、廃棄物処理法の該当条文を引用します。
廃棄物処理法第16条の2(焼却禁止)
何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。
一 一般廃棄物処理基準、特別管理一般廃棄物処理基準、産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物処理基準に従つて行う廃棄物の焼却
二 他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却
三 公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの
「周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの」とは、下記の廃棄物処理法施行令第14条に限定列挙された5つとなります。
廃棄物処理法施行令第14条(焼却禁止の例外となる廃棄物の焼却)
法第16条の2第三号の政令で定める廃棄物の焼却は、次のとおりとする。
一 国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却
二 震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却
三 風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却
四 農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却
五 たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの
市議の主張は、「マットレスの焼却」は、廃棄物処理法施行令第14条第五号の「たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」に該当するから廃棄物処理法違反ではない、というものですが
120キログラム以上の廃棄物をガスバーナーで燃やすと、すすや煙、そして悪臭が必ず発生しますので、「周辺地域の生活環境に与える影響が甚大」となります。
そのため、一般常識からすると、120キログラム超の廃棄物をガスバーナーで豪快に燃やす行為は、廃棄物処理法で禁じられた野外焼却以外の何者でもありません。
市議が野外焼却をした背景をさらに調べてみると、同じ南日本新聞の記事で、
2025年3月13日付 南日本新聞 「 「無罪を主張するため、自ら正式な裁判を求めた」…元阿久根市長の竹原信一市議、廃棄物処理法違反の罪で起訴 鹿児島地裁川内支部で初公判」
閉廷後、取材に応じた竹原市議は「無罪を主張するため、略式手続きではなく自ら正式な裁判を求めた。ごみを減量して処分場の負荷を減らすためで、普段から自宅の隣で燃やしていた」と話した。
日常的に野外焼却を行っていたことを自ら明かしています。
「処分場の負荷低減のために野外焼却をしていた」という動機は初めて聞きました。
元市長だけに、公共インフラへの熱い思いがほとばしったと言えなくもありませんが、
ゴミを焼却した場合、燃えがらが必ず発生するため、その燃えがらをどのように適正に処分していたのか?
公共インフラの維持を大切に思う方なので、きっと、市が設置する最終処分場に燃えがらを自ら運んでいたに違いありません。
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2025年4月30日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:news
「昆虫の養殖」で産業廃棄物処分業許可を取得できるか?
昨年の夏ごろから個人的に注目している研究の続報が入りました。
2025年4月19日付 読売新聞 「ハエ幼虫に生ゴミ食べさせ、フンを農作物肥料に…「価値付けられればゴミではなくなる」」
給食センターなどから出る生ゴミをハエの一種「アメリカミズアブ」の幼虫に食べさせることで食品廃棄物を減らす試みに、山形大農学部の佐藤智准教授(52)(応用生態学)が取り組んでいる。育った幼虫を家畜などの餌にし、さらに幼虫のフンは肥料になる。同大では、フンから作った農作物肥料の試験販売も始まっている。
アメリカミズアブに大量の食品廃棄物を食べてもらうことで、食品廃棄物処分のみならず、幼虫とそのフンも有効活用できるという夢のある研究です。
夢ではなく、実証研究段階は既に終え、ここから技術や製品の普及段階に入る段階と思われます。
山形大学の佐藤教授の研究には大きな期待を寄せていますが、この技術を廃棄物処理業に生かす手段はないものかと考えてみました。
誰もが真っ先に考えるのは、「アメリカミズアブの幼虫を用いた食品廃棄物の処分」だと思います。
しかし、大変残念なことですが、廃棄物処理法に基づく「処分業許可」の対象にはできません。
その理由は、
廃棄物処理法第14条第10項
都道府県知事は、第6項の許可(処分業)の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
廃棄物処理法施行規則第10条の5
法第14条第10項第一号(法第14条の2第2項において準用する場合を含む。)の規定による環境省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 処分(埋立処分及び海洋投入処分を除く。以下この号において同じ。)を業として行う場合
イ 施設に係る基準
(6)その他の産業廃棄物の処分を業として行う場合には、その処分を業として行おうとする産業廃棄物の種類に応じ、当該産業廃棄物の処分に適する処理施設を有すること。
と、産業廃棄物処分業の場合は、「産業廃棄物を処分するための施設」が必要であると定めているからです。
「アメリカミズアブの幼虫」は、産業廃棄物処分に適する「処理施設」ではありませんので、「幼虫1万匹に食品廃棄物を食べさせます」では、処分業許可の取得ができません。
「1日あたり5トン」といった処理能力の算定もできませんし。
過去、悪名高い「豊島不法投棄事件」では、1978年に香川県によって「ミミズ養殖による土壌改良剤化処分業のための汚泥処理」という内容の許可が出され、その後の不法投棄の端緒となったことがあります。
※ただし、1978年当時は上記の施設基準はありませんでした。その後、豊島不法投棄事件等の発生を端緒とした平成3年度の廃棄物処理法改正の一環で、施設基準が創設された経緯があります。
「アメリカミズアブで処分業許可が取れなくて困っている」という声が聞こえてこないので、特に問題にはなっていませんが、国策として「昆虫の養殖」を進めていく場合は、環境省ではなく、農林水産省が特別法を作り、振興を図っていく必要がありそうです。
廃棄物処理法で議論をしようとしても、「施設じゃないので許可できない」で終わってしまうからです。
アメリカミズアブの幼虫は、肥料と飼料の両方で活用できる有難い資源ですので、有効に活用しない手はありません。
なお、アメリカミズアブと「アメリカ」が付けられていることから分かるように、元々は北米や中米にいた昆虫です。
日本には1950年代に侵入し、北海道を除く各地で生息しています。
幼虫は人間にとっての不要物を爆食してくれますが、成虫のアメリカミズアブには口が無く、餌を食べない(卵は産む)というはかない生き様です。
「便所バチ」という名称の方がなじみ深い人(筆者を含めて)が多いかもしれません。
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2025年4月22日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:基礎知識
「環境管理(2025年3月号)」に寄稿いたしました
うっかりしてご紹介を忘れておりましたが、月刊「環境管理」の2025年3月号に記事を寄稿いたしました。
「環境管理」というと、国内外の環境規制の動向がタイムリーに掲載される情報誌として定評がありますが、昭和40年創刊で、最初は「大気汚染」というベタな雑誌名であったことを初めて知りました。
機関誌「環境管理」
昭和40年「大気汚染」として第1号の創刊以来、環境問題総合雑誌として各層の読者から支持されております。本誌は途中、昭和42年から「産業公害」、平成5年10月号から「環境管理」と改題してきましたが、数多くある環境関連雑誌の中でも歴史のある月刊誌です。
まさに、「公害国会」で公害問題が取り沙汰されていた時期に創刊されています。
さて、今回は、「こういう場合はどのような対応を取るべき? 産業廃棄物実務トラブル」というタイトルで、実際の産業廃棄物管理票トラブルを基に、排出事業者がとらなければいけない行動とその手順について解説いたしました。
「廃棄物問題の今昔」という目玉特集で、他の執筆者は長岡文明先生(BUNさん)と是永剛先生という大先輩であるお二方でしたので、執筆者の一翼に加えていただいたことを大変光栄なことと思っております。
大先輩が執筆される以上、「私が書けることは実務しかない」と思いましたので、編集局にその考えを正直にお話しし、何とか形にすることができました。
今年に入り、執筆や講演のご依頼をきっかけとして、既存資料の大幅なブラッシュアップや新たなテーマの深掘りにつながることが増えていますので、この流れを上手く乗りこなしたい思っております。
「こんなテーマではニッチすぎるかも?」というテーマでも、掘り起こし方によっては非常に有益な内容となることがよくありますので、編集や研修テーマでお悩みの方は是非ご相談いただければ幸いです。
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2025年4月21日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:メディア掲載実績
令和7年4月15日付通知「市町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策について」の解説
市区町村の清掃工場でリチウムイオン電池が原因と思われる火災が起き、焼却炉の破損でその地域の一般廃棄物処理が止まってしまうというニュースをよく耳にするようになりました。
リチウムイオン電池は現代社会の生活スタイルに欠かせない重要な工業製品となりましたが、一度発火すると、周りにある物を焼き尽くすほどの高温の炎を発することがよくあります。
東京消防庁 「火災のメカニズム」
リチウムイオン電池は、繰り返し充電、放電できる電池のことで、二次電池の一つです。この電池は、主に小型で大量の電力を必要とする製品(スマートフォン、コードレス掃除機、ノートパソコンや電動工具など)に使用され、他の二次電池と比べて高容量、高出力、軽量という特徴があります。
リチウムイオン電池は、電解液として可燃性の有機溶剤を使用しているため、衝撃等により内部の正極板と負極板が短絡し、急激に加熱後、揮発した有機溶剤に着火して出火することがあります。
東京都消防庁のHPでは、実際の火災事例として、
・運行中の電車内でモバイルバッテリーから出火した火災
・駅ホームでモバイルバッテリーから出火した火災
・上映中の映画館でモバイルバッテリーから出火した火災
・無人の事務所で携帯型扇風機から出火した火災
・非純正品のACアダプタに接続したバッテリーから出火した火災
・非純正品の充電器でバッテリーを充電中に出火した火災
と、数々の火災事例が画像付きで掲載されています。
たった一つのリチウムイオン電池でこれだけの被害が一瞬で発生してしまうわけですから、それが何十、何百と集中して回収される可能性がある清掃工場では、リチウムイオン電池の発火が致命的な損害を施設に与える可能性があることを容易に想像できます。
市区町村と環境省がそのリスクに対して無策であったわけでは決してありませんが、リチウムイオン電池の適正処理に関し、市町村により主体性を持たせることを意図した(と筆者は考える)通知が環境省より発出されました。
令和7年4月15日付通知「市町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策について」
冒頭の総論部分を一部抜粋
近年、廃棄物処理施設や収集運搬車両等において、リチウム蓄電池及びリチウム蓄電池を使用した製品(以下「リチウム蓄電池等」という。)に起因する火災事故等が頻繁に発生している。令和5年度には、全国の市町村において8,543件発生しており深刻な課題となっている。
火災事故等が発生した場合、廃棄物処理施設や収集運搬車両そのものへの被害に加え、作業員に対しても危害が及ぶ危険性がある。また、廃棄物処理施設が火災事故等により稼働停止し、廃棄物処理が滞る場合には、その地域の生活環境保全上の支障等に大きな影響を及ぼすこととなる。
「年間8,543件」も火災事故が発生しているということは、「1日当たり約23件」の確率でリチウムイオン電池由来の火災事故が起きている計算となります。
市区町村の清掃工場は税金で設置した施設ですので、それが火災で焼損するということは、公共インフラが大きく毀損することになりますので、これ以上放置できない危険な状況と言えます。
こうした中、リチウム蓄電池等の分別回収を行っている市町村は、令和5年度において75%に留まっており、各市町村においてリチウム蓄電池等の分別回収及び適正処理を更に徹底していく必要があることから、改めて下記のとおりリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策をとりまとめたので、貴職におかれても必要な対策を実施していただくとともに、貴管内市町村に対し、周知徹底をお願いしたい。
リチウムイオン電池の「分別回収を行っていない」25%の市町村で火災が起きやすいことは容易に想像できますが、「8,543件」という火災件数を考慮すると、「分別回収を行っている市町村」においても火災が発生しているものと推測できます。
以下、通知の各論部分を引用していきます。
1.市町村の一般廃棄物処理責任の性格等
廃棄物処理法において、市町村は、一般廃棄物の統括的な処理責任の下、市町村自ら処理する一般廃棄物のみならず、市町村以外の者が処理する一般廃棄物も含め、当該市町村で発生するすべての一般廃棄物の適正な処理を確保する必要がある。
また、近年、各種リサイクル法の制定等により、製造事業者等に一定の役割を果たしてもらういわゆる拡大生産者責任(EPR)を求めているところであるが、一般廃棄物については、市町村が定める一般廃棄物処理計画に従って市町村の責任の下でその処理を行わなければならないものである。
このため、全ての市町村において、当該市町村の区域内で発生するリチウム蓄電池等が一般廃棄物となったものの処理について廃棄物処理法第6条第1項の一般廃棄物処理計画に位置付けること等により、家庭から排出される全てのリチウム蓄電池等の安全な処理体制を構築していく必要がある。
冒頭で、廃棄物処理法上の「市町村による一般廃棄物の統括的な処理責任」について言及しています。
たしかに、法律上はそうとしか言えませんが、リチウムイオン電池は、市町村単独で安全に処分できる物ではありませんので、続く「2.リチウム蓄電池等の適正処理に関する方針」で「適正処理」のあり方が述べられています。
2.リチウム蓄電池等の適正処理に関する方針
今後のリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針の検討に際しては、次の各事項について留意されたい。
・分別収集区分が分かりやすく排出しやすいなど住民にとって利便性が高い収集方法とすること。
・回収したリチウム蓄電池等の保管を適切に行うこと。
・可能な限り回収したリチウム蓄電池等を国内の適正処理が可能な事業者に引き渡すことで、循環的利用、適正処理を行うこと。
「リチウム蓄電池等を国内の適正処理が可能な事業者」でもっとも有名な事業者は、「小型充電式電池メーカー」「小型充電式電池使用機器メーカー」「それらの輸入事業者」「一般社団法人電池工業会」で構成された一般社団法人JBRCです。
JBRCは廃棄物処理法に基づく「一般廃棄物広域認定」「産業廃棄物広域認定」の双方を取得していますので、一般廃棄物と産業廃棄物の別を問わず、「ニカド電池」「ニッケル水素電池」「リチウムイオン電池」の回収・処分が可能です。
JBRCサイト 回収・リサイクルより転載
3.リチウム蓄電池等の適正処理に関する対策
(1)分別・回収方法の基本的な考え方
市町村は、次の各方法を参考にして、当該市町村の区域内で発生する家庭から排出される全てのリチウム蓄電池等の回収体制を構築すること。
1.分別方法
住民に対して、製造事業者等の自主回収の対象品だけでなく自主回収を行っていないリチウム蓄電池及び膨張・変形したリチウム蓄電池の排出方法を明示すること。
2.回収方法
ア.家庭で不要となったリチウム蓄電池等を退蔵させず、また、他のごみ区分への混入を防ぐため、住民にとって利便性が高い分別収集(ステーション・戸別)を基本として分別収集を行うこと。
イ.火災事故の発生状況その他地域の特性に応じて、分別収集(ステーション・ 戸別)と拠点回収(分散型回収拠点や回収ボックス等による回収)を併用し、住民の利便性を更に高めること。また、リチウム蓄電池等の適正処理に関す る普及啓発を兼ねて、人が集まるイベント等における回収についても検討すること。
ウ.リチウム蓄電池等を収集する際には、平ボディ車、又はパッカー車で収集する場合には横積み等の別積載として、収集・輸送中の発火を防ぐこと。
エ.透明なビニール袋に入れて排出を促す等、雨天時の分別収集を想定した方法を検討すること。
オ.発煙・発火の危険性があるため、膨張・変形したリチウム蓄電池等は他のリチウム蓄電池等とは別に回収、保管することが望ましい。
カ.回収ボックス等での拠点回収を行う場合、小型家電及び小型家電から取り外したリチウム蓄電池を同時に排出することが可能となるため、小型家電回収ボックスと併設してリチウム蓄電池専用の回収ボックスを設置することも考えられる。また、住民の利便性の観点から、投入可能時間及び曜日が多い施設に回収ボックスを設置することが望ましい。
キ.回収ボックス等での拠点回収にあたり、発煙・発火に備えて消火設備を整えておくことが望ましい。
3.周知・広報
ア.「リチウム蓄電池等」は、どのような製品に使用されているのか十分には周知されていない。このため、使用されている製品の品目を具体的に示す等して、リチウム蓄電池等の不適切なごみ区分への混入を防ぐための周知を行うこと。
イ.収集・運搬中等の発煙・発火リスクを低減させるため、不要となったリチウム蓄電池等は、電池切れの状態で排出するよう周知すること。
ウ.リチウム蓄電池等の発火危険性を知らずに、誤って不適切なごみ区分に排出した場合、結果として、「火災事故の原因となり、市町村のごみ・資源物の収集、処分が停止する危険性がある」ため、住民に対して注意喚起を行うこと。
エ.火災事故等の主な原因品目である「モバイルバッテリー、加熱式たばこ、コードレス掃除機等のバッテリー、スマートフォン、電気かみそり、電動工具、ハンディファン、電動式玩具、作業服用ファン」等については、特に積極的に品目名を明示することが望ましい。
オ.車載用等の大容量のリチウム蓄電池が搭載されている製品等で、製造事業者等による全国的な回収ルートが構築されている製品については、住民に適切な回収ルートを周知すること。
カ.リチウム蓄電池の取り外しが簡単にできないリチウム蓄電池使用製品は、無理に取り外そうとすると発煙・発火の危険性があるため、分解せず、そのまま排出するよう周知すること。(2)保管方法の基本的な考え方
市町村は、廃棄物処理法における保管に係る基準を遵守するほか、次の各方法を参考にして、回収したリチウム蓄電池等を適切に保管すること。
ア.回収したリチウム蓄電池等は、雨風による影響を受けない屋内に保管すること。
イ.膨張・変形したリチウム蓄電池等は耐火性の容器に保管すること。
ウ.電極が露出しているリチウム蓄電池等は、電極部を絶縁テープ等で絶縁処理したうえで保管すること。
エ.保管環境に応じて、保管量の上限基準等を市町村内で策定し、回収したリチウム蓄電池等を計画的に適正処理を行うこと。(3)循環的利用、適正処分の基本的な考え方
次の各方法を参考にして、リチウム蓄電池等の循環的利用、適正処理を行うこと。
ア.必要に応じて性状や品目ごとに分別し、回収したリチウム蓄電池等は、可能な限り、再資源化事業者、小型家電リサイクル法の認定事業者等を通じて、国内の適正処理が可能な事業者に引き渡すこと。
イ.処理を委託した事業者による処理の実施内容、処理量、資源の販売先を開示させること。
ウ.回収したリチウム蓄電池等を再資源化事業者、小型家電リサイクル法の認定事業者等に引き渡す際、排出物の内容、受け渡し方法についても事前に協議すること。
エ.各市町村で回収される量は必ずしも多くなく、引き渡しや処分の料金を低減する観点から、必要に応じて都道府県において調整を行うなどにより、複数市町村が連携して引き渡す等の体制を構築すること。
「分別」「回収」「周知・広報」「保管」と市町村に対し、事細かな配慮点が記載されています。
「保管」では、「(市町村が)電極部を絶縁テープ等で絶縁処理したうえで保管」することとされていますが、これは各消費者が廃棄する際に必ず行わなければならないことですので、市町村の事務とするよりは、「周知・広報」での重点ポイントにすべきであったと思います。
4.消火設備その他火災事故等防止に必要な設備の整備について
リチウム蓄電池等の分別回収を実施している市町村は、リチウム蓄電池等の分別回収を実施していない市町村に比べて、1自治体当たりの火災事故等の発生件数が少ない傾向にあり、市町村においてリチウム蓄電池等の分別回収を実施することは、火災事故等のリスク低減に有効である。
一方で、リチウム蓄電池等の分別回収を行っている市町村においても、意図しない混入等により火災事故等は発生している。こうした火災事故等を防ぐためには、例えば、破砕機への投入前に、X 線検出や、風力、磁力を用いた機械選別等により誤った分別収集区分に廃棄されたリチウム蓄電池等を取り除くことが有効である。また、仮に火災事故等が発生した場合、赤外線カメラによる表面温度上昇の検知等、発火をより早期に発見し迅速に初期消火することが大規模な火災事故を防ぐために有効である。近年は赤外線カメラと連携した放水銃の自動照準システムの運用事例も増えてきており、必要に応じてこのようなシステム導入についても検討されることを推奨する。
市町村等が一般廃棄物処理施設の整備に当たって消火設備その他火災防止に必要な設備の整備を行う場合、基本的には循環型社会形成推進交付金等の対象となることから、設備の整備に当たっては積極的に活用を検討されたい。なお、廃棄物処理施設を含む公共施設に係る火災事故からの復旧等については、火災復旧事業債及び特別交付税による地方財政措置が講じられているところ。
「リチウム蓄電池等の分別回収を実施している市町村は、リチウム蓄電池等の分別回収を実施していない市町村に比べて、1自治体当たりの火災事故等の発生件数が少ない傾向」ということは、「分別回収をした場合でも火災発生をゼロにはできていない」とも言えます。
しかしながら、市町村が分別回収しない限り、消費者は”危険な”リチウムイオン電池を危険な方法で出し続けるしかありませんので、市町村の損害を減らすためにも分別回収を基本とする必要があります。
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2025年4月18日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:通知・先例
令和7年3月26日付通知「PFOS等を含む水の処理に用いた使用済活性炭の適切な保管等について」の解説
PFASについては、最近各地の水道水から検出される機会が増え、「このまま飲み続けても大丈夫なのか?」という不安が社会問題となっています。
環境省 有機フッ素化合物(PFAS)について より転載
有機フッ素化合物(PFAS)とは、
有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称して「PFAS」と呼び、1万種類以上の物質があるとされています。
PFASの中でも、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、幅広い用途で使用されてきました。これらの物質は、難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質があるため、国内で規制やリスク管理に関する取り組みが進められています。
PFASと一言で言っても、
「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の総称」であるため、1万種以上という結構な数の化学物質があてはまり、現在は「PFOS」「PFOA」「PFHx」の3種類が廃絶の対象とされています。
※環境省 PFASの分類について
PFASの発生源として「廃棄物最終処分場」が疑わしいという報道が続く一方で、この問題にいかに対処すべきかについては、どの行政機関も答えを出せていないところですが
PFOSを吸着させた活性炭の不適切な保管により、水道から高濃度のPFASが検出された岡山県内での事件(事故?)を踏まえ、表題の通知が2025年3月26日付で環境省から発出されました。
PFOS等を含む水の処理に用いた使用済活性炭の適切な保管等について
冒頭 総論部分より抜粋
先般、国内において、浄水場の水源となっていたダム等から、指針値(暫定)を超えるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)及び PFOA(ペルフルオロオクタン酸)(以下「PFOS等」という。)が検出されました。関係自治体に設置された有識者委員会において、周辺の調査結果等から総合的な検討が行われた結果、ダム上流に位置する資材置場において、長期間にわたって野積みされていたPFOS等を含む使用済活性炭からのPFOS等の流出が、ダム等におけるPFOS等の検出の原因と考えることが妥当とされたところです。
活性炭は水処理等に広く用いられていますが、上記事案のように長期間にわたって野積みし、保管容器の外装が破損したまま雨ざらしで放置するなど、不適切な管理が行われた場合、活性炭に吸着したPFOS等が溶出し、環境中への流出による汚染を生じさせるおそれがあります。
今般、活性炭の適正な取扱い等に関する知見を整理するため、活性炭の製造・再生利用事業者等へ行った調査結果を踏まえ、水道における暫定目標値又は公共用水域等における指針値(暫定)を超過する濃度のPFOS等を含む水の処理に用いた使用済活性炭(事業の用に供されたものに限る。以下「使用済活性炭」という。)の適切な管理に関して留意すべき点等について、下記のとおり整理しましたので、管内の活性炭を用いて水処理を行い使用済活性炭を排出する事業者及び使用済活性炭を再生する事業者並びに使用済活性炭を廃棄物として処理する廃棄物処理業者へ周知くださいますようお願いいたします。併せて、貴都道府県市において水処理に活性炭を使用する場合に留意いただくようお願いいたします。
以下、各論部を転載
1 使用済活性炭の適切な保管について
使用済活性炭を長期間にわたって野積みし、保管容器の外装が破損したまま放置するなど、不適切な管理が行われた場合、活性炭に吸着したPFOS等が溶出し、環境中への流出による汚染を生じさせるおそれがある。事業場等において使用済活性炭を長期間保管する場合には、屋内で保管する又は雨水等が当たらないよう保管すること、定期的に保管状況を確認することなど、環境中へのPFOS等の流出による汚染を生じさせないように保管すること。
また、廃棄物となった使用済活性炭を保管する場合には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)第6条に規定する処理基準及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第35号)第8条に規定する保管基準に基づき、飛散・流出防止措置を講ずるなど、適切に管理するとともに、以下の2に従って速やかに処理すること。
なお、保管中の使用済活性炭に吸着したPFOS等が溶出し、環境中への流出による汚染を生じさせるおそれがある事案が発生した場合には、関係自治体においてPFOS等の環境中への流出の実態を的確に把握する観点から、保管者は関係自治体に対して情報を共有することが望ましいこと。
環境中にPFOSを流出させないためには、「屋外での野積み保管」は不適切であり、「屋内」かつ「保管容器」での保管が不可欠となります。
通知でも引用されている「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」では、保管の際の留意事項について、次のように記されています。
「PFOS含有廃棄物」は、廃棄物処理法に基づいた正式な産業廃棄物の種類名称ではありませんが、PFOSに関する注意喚起を図るためには、あえてPFOSと強調することにも一定の意味があるのかもしれません。
ただし、PFOS含有廃棄物の場合は、先述したとおり「屋内での容器保管」が推奨されている以上、「積み上げ高さ」は記載する必要が無い情報です。
そのため、「積み上げ高さ(屋外で保管する場合のみ記載)」と、推奨される屋内保管をする場合は、記載する必要が無い情報であることを明示した方が良かったと思います。
2 使用済活性炭の適正処理について
使用済活性炭を廃棄物として処理する場合には、排出事業者から廃棄物処理業者に対してPFOS等の含有情報を適切に提供するとともに、廃棄物処理業者においては「PFOS及び PFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」(令和4年9月、環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課作成。以下「技術的留意事項」という。)を参考に確実に分解処理すること。
なお、使用済活性炭中のPFOS等の濃度が技術的留意事項に示す管理目標参考値(5μg/kg-dry)以下のものは、技術的留意事項の対象とされていないが、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)その他関係法令を遵守の上、適正に処理すること。
PFOS等を「確実に分解処理」する方法は、「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」によると、
現時点では、焼却処理(PFOS含有廃棄物:約850℃以上、PFOA含有廃棄物:約1,000℃以上(約1,100℃以上を推奨))はこれらの要件に該当すると考えられる
とされています。「活性炭」は通常「燃えがら」として扱いますが、PFOS等を完全に分解(分解効率が99.999%以上)するために、一度焼却処理を行うことが不可欠となります。
そうしないことには、PFOS等は分解されず、最終処分場にそのまま埋めてしまうと、環境中に流出してしまうからです。
もっとも「技術的留意事項」である以上、こうした高熱での焼却処理は、そのとおりにしなかったとしても罰則等の対象になるわけではありませんが、人の健康問題に直結しかねない話ですので、それらの事業者には上記の留意事項に準拠して処分委託をしていただくことを強く希望します。
その他、「技術的留意事項」では、委託基準に付随した留意点について下記のように触れられています。
3 使用済活性炭の再生について
使用済活性炭の再生の委託を検討する場合には、当該使用済活性炭にPFOS等が含まれていることを委託者から受注者である再生事業者に伝え、当該再生事業者において受入可能か確認すること。確認の結果、使用済活性炭の再生を委託する場合には、委託者においても再生事業者において、再生事業者の事業場からの排水の公共用水域等への排出や排ガスの大気への放出による環境中への PFOS 等の流出を防止する取組(以下「汚染防止の取組」という。)が行われていることを確認すること。
汚染防止の取組の例としては、排水又は排ガス中の PFOS 等の濃度を測定し、確実に分解処理されているかを確認することが考えられ、技術的留意事項において示している排水及び排ガスの採取・分析方法や管理目標値の考え方を参考とすること。
「再生の委託」という名目であれば、どんな杜撰な処理方法であっても許容されるわけではなく、再生の前に「PFOS等の無害化」が当然必要となります。
そのため、「再生」においても、「高温での焼却処理」工程が不可欠と考えざるを得ません。
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2025年4月14日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:通知・先例
産業廃棄物の排出および処理状況(令和4年度実績)
2025年3月28日付で、環境省から、産業廃棄物の排出及び処理状況(令和4年度実績)が発表されました。
産業廃棄物の排出・処理状況(令和4年度実績)
(1)全国の産業廃棄物の総排出量:前年度に比べ、約180万トン(約0.5%)減少。
令和4年度総排出量 3億7,400万トン(前年度 3億7,592万トン)
(2)業種別排出量:上位業種は前年度と同様、上位5業種で総排出量の8割以上。
排出業種 排出量(排出割合) 前年度排出量(排出割合) 1 電気・ガス・熱供給・水道業 9,826万トン(26.3%) 9,948万トン(26.5%) 2 農業・林業 8,162万トン(21.8%) 8,169万トン(21.7%) 3 建設業 8,024万トン(21.4%) 8,094万トン(21.5%) 4 パルプ・紙・紙加工品製造業 2,778万トン(7.4%) 2,775万トン(7.4%) 5 鉄鋼業 2,372万トン(6.3%) 2,313万トン(6.2%) (3)種類別排出量:前年度と同様、上位3品目で総排出量の8割以上。
廃棄物の種類 排出量(排出割合) 前年度排出量(排出割合) 1 汚泥 1億5,832万トン(42.3%) 1億5,982万トン(42.5%) 2 動物のふん尿 8,119万トン(21.7%) 8,127万トン(21.6%) 3 がれき類 6,185万トン(16.5%) 6,250万トン(16.6%) (4)産業廃棄物の処理状況:前年度に比べ、最終処分量が約20万トン(約2.2%)増加。
処理区分 処理量(処理割合) 前年度処理量(処理割合) 1 再生利用量 2億269万トン(54.2%) 2億372万トン(54.2%) 2 減量化量 1億6,236万トン(43.4%) 1億6,337万トン(43.5%) 3 最終処分量 902万トン(2.4%) 883万トン(2.3%)
産業廃棄物の排出量は前年度よりも減少しましたが、最終処分量は、前年度より20万トン増加し、約902万トンとなりました。
最後に、日本全体での産業廃棄物処理フローをまとめておきます。
産業廃棄物 374,069千トン
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|
|
__________|_____________
↓ ↓ ↓
直接埋立する分 中間処理(焼却・ 再生利用される分
破砕他)される分
4,585千トン 293,027千トン 76,456千トン
(1.2%) (78.3%) (20.4%)
| |
| |
| ↓
| 中間処理後に残るもの
| 130,665千トン
| (34.9%)
| |
| |
| |---→再生利用される分
| | 126,229千トン
| | (33.7%)
| ↓
| 埋め立てる分
| 4,436千トン
| (1.2%)
| |
|_________|
|
|
↓
埋め立てられる分の合計
9,021千トン
(2.4%)
※各項目は、四捨五入してありますので、収支が合わない場合があります。
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2025年4月7日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:統計・資料
令和5年度廃家電の不法投棄等の状況について
2025年3月31日付で、環境省から「令和5年度廃家電の不法投棄等の状況について」の発表がありました。
■ 不法投棄等の状況
(1)不法投棄台数
不法投棄された廃家電4品目の回収台数(以下「不法投棄回収台数」という。)のデータを取得している1,691市区町村における不法投棄回収台数をもとに、人口カバー率で割り戻して算出した全国の不法投棄回収台数(推計値)は、36,000台で、前年度と比較して減少しました。
(2)品目ごとの割合
品目ごとの割合は、エアコンが2.4%、ブラウン管式テレビが24.1%、液晶・プラズマ式テレビが36.5%、電気冷蔵庫・電気冷凍庫が22.3%、電気洗濯機・衣類乾燥機が14.7%でした。
グラフ画像が小さぎるため、近年のグラフのみを抜粋し、下に掲載
令和5年度の廃家電不法投棄推計回収台数は36,000台と、過去最少だった前年度よりもさらに減少しました。
しかしながら、1年で36,000台ということは、1月にすると約3,000台、1日あたり約100台が毎日各地で不法投棄されている計算になりますので、不法投棄対策を緩めることなく、継続していく必要があります。
「品目ごとの割合」を見ると、「液晶・プラズマ式テレビ」が最も多くなっています。
買い替え頻度が比較的高く、重量がそれほど重くもない製品であるため、気軽に(?)不法投棄されてしまうように思えます。
最も割合が低いエアコンは、基本的には施工業者に取り付けをしてもらう必要があるため、消費者自らが不法投棄に臨むことが少ないのだろうと思います。
最後に、統計処理をする意図がいまひとつわからないものをご紹介しておきます。
「市区や町の人間が村に不法投棄をするため、村での回収台数が多くなることを示すのだ」という意図があるのでしょうか?
現実には、自治体の境界によって不法投棄するかしないかが決まるわけではなく、「車でのアクセス」や「住居から持ち運べる距離に捨てやすい場所がある」等の要因の方が大きいように思います。
「人口だけで不法投棄回収台数を割り算してしまうと、不適切かつ恣意的な統計処理を加えることにしかならないのでは?」と愚考しております。
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2025年4月3日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:統計・資料
一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和5年度)について
2025年3月27日付で、環境省から「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和5年度)について」が発表されました。
ごみの排出・処理状況
(1)ごみ排出の状況
ごみ総排出量 3,897万トン (前年度4,034万トン)[3.4%減]
1人1日当たりのごみ排出量 851グラム (前年度880グラム)[3.2%減]
家庭系ごみ排出量 2,175万トン (前年度2,275万トン)[4.4%減]
1人1日当たりの家庭系ごみ排出量 475グラム (前年度496グラム)[4.2%減](2)ごみ処理の状況
最終処分量 316万トン (前年度337万トン)[6.5%減]
減量処理率 99.2% (前年度99.1%)
直接埋立率 0.8% (前年度0.9%)
総資源化量 763万トン (前年度791万トン)[3.4%減]
リサイクル率 19.5% (前年度19.6%)ごみ焼却施設の状況
(令和5年度末現在)
施設数 1,004施設 (前年度1,016施設)[1.2%減]
処理能力 174,598トン/日 (前年度174,646トン/日)
1施設当たりの処理能力 174トン/日 (前年度172トン/日)[1.2%増]
余熱利用を行う施設数 724施設 (前年度730施設)(全体の72.1%)
発電設備を有する施設数 411施設 (前年度404施設)(全体の40.9%)
総発電能力 2,230MW (前年度2,208MW)[1.0%増]
総発電電力量
(約262万世帯分の年間電力使用量に相当) 10,254GWh (前年度10,331GWh)[0.8%減]最終処分場の状況
(令和5年度末現在)
残余容量 9,575万m3 (前年度9,666万m3)[0.9%減]
残余年数 24.8年 (前年度23.4年)
令和5年度は、前年度よりもごみ総排出量が3.4%減少しています。
前年の令和4年度統計より、上掲グラフ中に「△1人1日当たりの家庭系ごみ排出量」というデータが追記されています。
これにより、住民1人1日あたりのごみ排出量の大まかな推移がわかりやすくなりました。
「事業系ごみ」と「生活系ごみ」の排出量の推移は、次のようになっています。
「生活系ごみ」と「事業系ごみ」の双方が前年度よりも減少しています。
「事業系ごみ」は、令和3年度と令和4年度と2年連続で前年度よりも増加していたため、「経済活動活発化の前触れか?」と少し期待をしていましたが、上述したとおり、令和5年度は前年度よりも減少してしまいました。
事業系一般廃棄物の排出量は、国民生活の経済実態を反映した数値と考えられますので、一概に「ごみの排出量削減が進んで良かった」とは言えないように思います。
施策努力ではなく、人口が減ったためにごみの排出量が減っただけなのであれば、ただ単に経済活動がシュリンクしただけの話となります。
ごみ排出量が減少している理由が現時点では判明していませんが、「1人当たりの排出量」が年々減少し、人口自体も年々減少している以上、日本全体の一般廃棄物排出量は今後も減り続けることになりそうです。
それが日本人にとって「良いこと」か「悪いこと」かに関わりなく。
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2025年4月1日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:統計・資料
産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(令和4年度実績)
2025年3月27日に、環境省から、「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(令和4年度実績等)について」が発表されました。
1.産業廃棄物処理施設の設置状況(≒日本全体の産業廃棄物処理能力)
令和4年度の産業廃棄物処理施設設置許可件数は、前年度よりも178件増加しました。
増減の主な内訳は、
中間処理施設が前年度よりも195件増加
最終処分場が前年度よりも17件減少
となっています。
前年度よりも許可件数が増えた施設は下記の7施設です。
「廃油の油水分離施設(+2【前年度の施設数との比較、以下同様】)」
「廃プラスチック類の破砕施設(+65)」
「木くず又はがれき類の破砕施設(+146)」
「汚泥の焼却施設(+14)
「廃油の焼却施設(+13)
「その他の焼却施設(+8)」
「遮断型処分場(+1)」
2.産業廃棄物処理業の許可件数
事業者数ではなく「許可件数」ですので、一社で複数の自治体の許可を取得した場合、その許可件数がすべてカウントされることになります。
2015(平成27)年以降、許可件数は増加傾向にあり、令和4年度は「265,244件」でした。
都道府県のみならず、個別の政令市の収集運搬業許可取得が必要だった時代の、平成15(2003)年度の総許可件数「254,845件」を上回る件数となっています。
積替え保管をしない限りは、都道府県だけの許可取得で足りる現在の状況を考えると、産業廃棄物処理業への新規参入が年々増えているように思えます。
自主的に業許可を廃止する「廃止届」は2,169件と、前年度よりも227件増加しています。
既存業者の廃業もハイペースで進んでいるようです。
3.取消処分件数の推移
令和4年度の許可取消件数は、前年度よりも5件少ない219件でした。
欠格要件に該当した場合の「義務的取消」ではない、自治体に取消すか否かの裁量がある「裁量的取消」が年々減っているためではないかと思われます。
「(一般廃棄物処理業の)無許可営業」や「無許可変更」をした処理業者に対して、「許可取消」ではなく、「事業の全部停止〇〇日」という寛容な(?)行政処分を選択する自治体が増えています。
真面目な処理業者にとっては、あまり好ましくはない状況ですね。
4.最終処分場の状況
令和4年度は、最終処分場の残存容量(埋立可能な容積)が前年度よりも304万立法メートル増加しました。
その一方で、最終処分量は、前年度よりも20万トン増加し、902万トンでした。
その結果、最終処分場にあとどれくらいの期間埋立てられるかの目安となる「残余年数」は、前年度よりも0.1年短くなり、20.0年となりました。
その他
「法第19条の5に基づく措置命令」は8件と、前年度よりも13件減少しました。
特筆すべき事項としては、これまで発出件数がずっと0件であった、「法第19条の6に基づく措置命令」が茨城県から4件発出されました。
2025年3月末現在では、茨城県は廃棄物処理法第19条の6に基づく措置命令の内容を公表していませんので、具体的な内容はよくわかりませんが、条文の性質上、排出事業者に対して出されたことは確実です。
廃棄物処理法第19条の6に基づく措置命令は、排出事業者に委託基準違反が無かった場合でも排出事業者を措置命令の対象とする、極めて強い命令となりますので、命令を発出するに至った経緯と理由を公表していただくことを期待します。
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2025年3月31日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:統計・資料
業者の経営破綻の影響
2025年3月14日付 南日本新聞 「事業所跡にドラム缶や廃タイヤなど大量放置 南種子町の産廃業者に適正化求めるも善処なく県が代執行へ 25年度当初予算案に1億1000万円計上」
鹿児島県は14日、南種子町の産業廃棄物処理業者事業所跡に放置されている大量の産業廃棄物を行政代執行で撤去する計画を明らかにした。2025年度当初予算案に約1億1000万円を計上。今後も業者や土地所有者に自主的な撤去を求めるとともに、代執行した場合は費用の負担を求める。
県議会環境厚生委員会で説明した。同町の●●社(筆者が伏せ字)が事業所跡に廃油ドラム缶約430本分、廃タイヤ約6200本、廃プラスチック約170立方メートルを放置。県は14年ごろから同社に適正な管理を指導していた。
鹿児島県の種子島の事案ですが、2017年に私はこの現場を直接見たことがあります。
2017年にGoogleマップで公開されていたストリートビューは次のとおり
公道際に設置された金網フェンスの高さを超える状態で産業廃棄物が保管されているため、この時点から既に産業廃棄物保管基準違反となります。
画像の奥には、処理前か処理後かはわかりませんが、大量の産業廃棄物が堆積したままとなっています。
2017年に私が現地前に立った時もほぼ同じ状況でした。
この後2024年現在の状況を掲載しますので、公道側に置かれた「2段積みのコンテナ」と、その奥に見える「(モザイク加工をした)廃棄物処分施設」の位置関係を記憶しておいてください。
同じ撮影角度ではありませんが、「コンテナ」と「廃棄物処分施設」はほぼ同じ場所にあると思われます。
2024年10月撮影の画像は緑に覆われている部分が多いため、産業廃棄物が無くなっているように見えますが、公道際を拡大すると、植物の下に金網フェンスが見えます。
そのため、2024年現在は、2017年当時の産業廃棄物の上に植物が繁茂したため、産業廃棄物全体を覆い隠した状態と考えられます。
産業廃棄物が一度堆積してしまうと、行為者自身が自発的に撤去する可能性は著しく低い、という実例とも言えます。
現在のところ目立った環境汚染は確認されていないが、廃油の流出や蚊などの害虫発生、飛散の恐れがあるとして、県は代執行の手続きを進めている。
公道際の金網フェンスが倒れると、そこでせき止めていた産業廃棄物の山が公道に崩れることになりますので、「産業廃棄物の飛散・流出のおそれあり」で、現状でも「生活環境保全上の支障が生じるおそれあり」と言えます。
実現すれば、鹿児島県として初めての行政代執行とのことですが、鹿児島県が平和だったのか、あるいは排出事業者と処理業者の全員が善良だったのか、はたまた・・・
「鹿児島県内の排出事業者と処理業者全員が善良だった」と考えておきます。
県は23年、同社代表者や土地所有者に24年11月までの廃棄物撤去を命じる行政処分を出していた。
一般的には、廃棄物処理法第19条の5の措置命令を発出する前に、行為者のみならず、委託者である排出事業者の責任の有無を調査することが通例となっています。
今回のケースでは、排出事業者に措置命令が発出されていないことから、排出事業者には委託基準違反が無かったのかもしれません。
しかしながら、このような処理業者の経営破綻に伴う不適正保管に巻き込まれた場合、「未処理の産業廃棄物」の撤去または処理を排出事業者に求められることがよくあります。
ひどいケースだと、処分費込みの収集運搬費用を前払いしたのに、紙マニフェストが返ってこず、改めて不法投棄現場から撤去する費用の負担が求められ、二重払いのような状況になることもあります。
委託先処理業者が未処理の産業廃棄物をため込むようになったら、黄信号どころではなく、既に赤信号と言わざるを得ません。
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2025年3月24日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:news