「処分の場所の所在地」とは

産業廃棄物の中間処理委託契約書には、「処分の場所の所在地」を記載しなければなりません。

廃棄物処理法施行令第6条の2(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)
 法第12条第6項の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一~三 (略)
四 委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。
イ 委託する産業廃棄物の種類及び数量
ロ 産業廃棄物の運搬を委託するときは、運搬の最終目的地の所在地
ハ 産業廃棄物の処分又は再生を委託するときは、その処分又は再生の場所の所在地、その処分又は再生の方法及びその処分又は再生に係る施設の処理能力
ニ・ホ (略)
ヘ その他環境省令で定める事項
五・六 (略)

この「処分の場所の所在地」とは、具体的に何を指すかご存知でしょうか?

そんなの簡単!

「所在地」と定められている以上、許可証に記載されている「中間処理を行う個別の産業廃棄物処理施設の設置場所」を書くに決まっているじゃないか

「産業廃棄物管理者検定1級」を有するボクに対する愚問~
※(筆者注:架空の検定です)

正解は・・・


法律の条文をフィーリングで読むのは止めましょう!

産業廃棄物処理委託契約書で、個別の産業廃棄物処理施設の設置場所を正確な地番で表示する意味がどこにあるのですか?

委託することは許可証に記載された方法に基づく「中間処理」であり、「中間処理の方法(例:破砕)」を指定する以上、排出事業者がさらに産業廃棄物処理施設設置場所の地番を特定する必要性など微塵も存在しませんよね。

「所在地」はあくまでも「所在地」でしかありません。

「産業廃棄物処理施設の設置場所」を委託契約書の法定記載事項と解釈するためには、廃棄物処理法で「産業廃棄物処理施設の設置場所」と明記する必要がありますが、条文上は「処分の場所の所在地」としか規定されていません。

一般的に法律の条文で使われる「所在地」とは、「産業廃棄物処理施設の設置場所」のように、正確な土地の座標を示す言葉ではありません。

廃棄物処理法以外の例を挙げると、会社法では、法人の定款の絶対的記載事項として

(定款の記載又は記録事項)
会社法第27条 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所

と、単に「所在地」とのみ定義されています。

そのため、多くの法人の定款では、「本店所在地」を「大阪市北区」等のように最小行政区画によって定め、地番までは特定しないのが一般的です(本店所在地として、地番まで定款で指定することも可能)。

法人登記簿に掲載される本店の情報は、「本店の所在場所(例:大阪市北区天満2丁目12番3号)」となります。

「所在地」とは、「広辞苑」によると、「ある人やある物の存在する土地」と定義され、用例として「県庁所在地」が紹介されています。

県庁所在地としては、大阪府なら「大阪市」で、大阪府庁本庁舎が立地する「大阪市中央区大手前2丁目」と、正確な地番まで表記することは通常ありません。

よって、常識的、かつ法律の条文に基づく解釈としては、廃棄物処理法施行令第6条の2第四号ハで定める「所在地」は、「(個別)の産業廃棄物処理施設の設置場所」ではないことが明らかです。

ただし、「処分場所の所在地」が「大阪市北区」ではあまりにも範囲が広すぎますので、契約書で定義をする場合は、「事業場を代表する地番」を書くべきかと考えます。

「事業場を代表する地番」とは、
その事業場内に本店がある場合は「本店所在場所」
本店は別の場所にある場合は「管理事務所の所在場所」となります。

もっとわかりやすく言うならば、「その事業場に郵便を送る際の発送先」という理解で結構です。

なお、「産業廃棄物処理業許可申請書(廃棄物処理法施行規則第10条の4)」と「産業廃棄物処理施設設置許可申請書(廃棄物処理法第15条第2項第二号)」には、「事業の用に供する施設の種類、数量、設置場所、設置年月日及び処理能力」等として、正確な施設設置場所の座標を示す「地番」レベルの表示が必要とされています。

これは、産業廃棄物処理委託契約の場合とは異なり、行政が許可を出すための審査をする際に、産業廃棄物処理施設の正確な設置場所の把握が不可欠だからです。

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