産業廃棄物処理業者がM&Aをする際の手続き(前編 経営権の取得)

「隣の芝生は青く見える」もので、建設関連業界から廃棄物処理業に進出しようという企業はいまだに多いものです。

しかしながら、建設廃棄物を主力とする産業廃棄物処理業者の中には、逆に廃業や他社への事業譲渡を真剣に考えているところが確実に増えています。

その理由は、「明るい見通しが立たないから」です。

もちろん、個別の企業の経営実態は様々ですので、業界全体の先行きが暗いというわけではありません。
(ただし、明るい見通しがあるわけでもない)

今回は、今後増えるであろう、産業廃棄物処理企業が事業譲渡をする際の手続きをまとめます。

産業廃棄物処理企業のみならず、排出事業者にとっても関わりが生じる手続きですので、一度は目を通していただくことをお奨めします。

もっとも迅速かつ簡便な段取り

それは、既存の産業廃棄物処理業者の経営権を取得することです。

具体的には、産業廃棄物処理業者の株式を取得し、取締役を送り込んで経営権を握るということです。

この方法の場合、元々の業者の許可内容(操業方法)を変えない限り、変更許可等の対象となりませんので、必要な手続きは「株主と役員の変更届」提出だけです。

新たに増員された役員や株主などの「住民票」と「成年後見登記がされていないことの証明書」、そして法人の登記事項証明書を変更届に添付するだけとなります。

元々の業者の法人名が気に入らない場合は、法人名の変更登記を済ました後で、上記の変更届に法人名の変更を付け足すことも可能です。

このように、簡易迅速な段取りにもデメリットが存在します。

それは、元々の会社の負債や義務等のすべてを引き受けなければならない、ということです。

事業単位の切り売りではなく、会社そのものを引き継ぐことになるわけですから、慎重なデューディリジェンスと情報開示が基本となります。

もっとも、デューディリジェンスと情報開示はM&Aすべてに共通する基本原則でもありますが。

また、当たり前の話ではありますが、
変更届の対象となる、増員された役員等に欠格者がいてはなりません。

執行猶予付きの刑事罰を科された人は、執行猶予期間中は一時的に刑の執行が猶予されただけに過ぎませんので、執行猶予期間が満了しない限り、欠格者となることにご注意ください。

もし欠格者を新たな役員として届出をしてしまった場合、
外形的には欠格者が経営にタッチしている会社、すなわち許可取消の対象となります。

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