再資源化事業者へのバフがキタァー「再資源化事業高度化法案」

2024年3月15日付で、環境省から「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案の閣議決定について」という発表がありました。

新しい法律案が閣議決定されたため、法律案がようやく国会に提出される運びとなりました。

「再生材の質と量の確保を通じて資源循環の産業競争力を強化することが重要」と、なるほど、それは確かにそのとおり。

でも問題は、その競争力を高めるために、どうやって「再資源化の取組を高度化するのか」よね?

「再資源化の促進(底上げ)」と「再資源化事業等の高度化の促進(引き上げ)」と、「促進」が2回も使われているので、ここに環境省の狙いがありそうだわ!

特に、「国が一括して認定を行う制度を創設」「許可の手続の特例」は、太字かつ赤字で強調されていることに要注目かも?

これまで、「プラスチック資源循環促進法」その他リサイクル関連の法律が制定される度に、「許可の手続きの特例」が設けられてきましたが、今回の「再資源化事業高度化法(案)」では、これまでの諸法の弱点をすべて解消し、「対象となる事業者にバフをかけるんや!」という環境省の並々ならぬ意欲が感じられます。

ここで、「バフってなんだ?」と疑問に思った方が多いかもしれませんので、簡単にご説明しておくと、
ゲーム界隈で使用されている「能力やステータス値アップをもたらす効果」を示す用語です。

もっと噛み砕いた言い方をすると、「バフ」によって、一瞬にして能力値や特定のステータス値が急激に上がるため、ゲーム攻略が急激に容易になります。

ちなみに、「バフ」の反対が「デバフ」となり、「デバフ」されると、一気に弱体化してしまいますので、ゲームプレイヤーにとっては死活問題になりかねない環境変化となります。

詳細は、これから制定される法律や施行令を見ていくことが当然必要ですが、「再資源化事業高度化法(案)」の段階で、再資源化事業を検討している事業者にとっては「バフ」であり、既存の産業廃棄物処理業者にとっては「デバフ」となり得る条文があります。

再資源化事業高度化法(案)
第18条(廃棄物処理法の特例) 認定高度分離・回収事業者は、廃棄物処理法第7条第6項又は第14条第6項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、認定高度分離・回収事業計画に従って行う再資源化に必要な行為(一般廃棄物又は産業廃棄物の処分に該当するものに限る。)を業として実施することができる。
2~4 (略)
5 第16条第2項第七号に掲げる事項が記載された高度分離・回収事業計画について同条第一項の認定を受けた認定高度分離・回収事業者は、廃棄物処理法第8条第1項又は第15条第1項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、認定高度分離・回収事業計画に記載された当該廃棄物処理施設を設置することができる。

これまでのリサイクル関連の法律では、「処理業許可」については、特別法の規定により、廃棄物処理法に基づく許可を不要とするものが多々ありましたが、「都道府県知事から廃棄物処理施設設置許可を取得すること」までは免除されていませんでした。

しかし、この「再資源化事業高度化法(案)」では、とうとう、第18条第5項で「廃棄物処理施設の設置許可も不要」となり、いよいよ、国(環境省)の認定一本で、あらゆる「業許可」と「施設設置許可」の取得不要となります。

近時、多くの地方において、主に最終処分場や焼却施設等の設置で地域住民と事業者間で紛争が生じ、事業化がまったく進まないという状況が起きています。

「再資源化事業高度化法」が成立し、国一本の認定だけで良いとなると、たとえ地域での紛争があったとしても、住民の意思や地方自治体の思惑とは無関係に、施設の設置と再資源化事業の操業が可能となります。

考えようによっては、これまで培われてきた国と地方の役割分担や信頼をご破算にしかねない、極めて中央集権的な法律とも言えます。

もちろん、「再資源化事業高度化法(案)」の対象となる「認定高度分離・回収事業者」は、「あまねく全ての産業廃棄物処理業者」ではなく、「再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出の量の削減の効果が増大する」ような事業を行う者だけとなりますが、既存の産業廃棄物処理業者や、現在紛争状態の事業者にとっては確実に“デバフ(=不利な戦いを強いられる)”となる要因となります。

バフを受けた認定事業者は、地元説明会や数度に渡る地方自治体との協議をすっ飛ばして、いきなり全国展開も可能。

かたや、認定の対象事業にあてはまらない既存業者は、これまでと同様に、地元住民との利害調整と地方自治体との協議が不可避となるからです。

なんだか、明治維新直後の中央集権国家樹立のための諸政策の再来のようにも見えます。

「政商」のような権力と結託する輩や、外国資本に食い荒らされないような対策が不可欠であると思います。

その一方で、「再資源化事業高度化法」の対象となる事業を始めよう、あるいは拡大しようと思っている既存企業にとっても、大きなチャンスになります。

海外資本や怪しい資本に浸食される前に、志のある国内資本企業が速やかに地保を固めるきっかけにしていただくことを望みます。

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