廃家電の廃棄が増え続ける方が不自然

少し古くなってしまいましたが、小型家電リサイクル法の回収実績(の予測)に関するものがありましたので、ご紹介します。

2015年7月23日付 日経産業新聞 「小型家電リサイクルの危機 回収、自治体頼みに限界

 小型家電リサイクル法は国が認定したリサイクル事業者と自治体が連携してリサイクルを促す自由さを重視する。レアメタルを中心に回収し、海外流出を防ぐという目標もあり、多くの企業が認定事業者に名乗りを上げた。しかし、施行から約2年が経過し、回収量減少という壁にぶつかっている。

 政府は2015年度の回収量の目標を14万トンと設定し、そこに至る目標として13年度を1万3000トン、14年度を5万2000トンと設定した。13年度の実績は2万3971トンを達成した。14年度の結果は近々発表される予定だが、達成はあり得る。

政府の目標が「数字ありき」であっただけで、廃家電の排出量が年々減少することは、社会的にも大変望ましいことです。

「ゴミの廃棄量が増えない」と嘆くよりも、「無駄な電気製品を買わないスマートな国民だ」と喜ぶべきではないでしょうか(笑)。

もっとも、廃家電リサイクルのプレイヤーを増やしていくためには、右肩上がりで家電の廃棄量が増える方が望ましいわけですが、
そもそもの前提として、「廃家電リサイクルのプレイヤーをこれ以上増やす必要があるのか?」も考えないといけません。

全国津々浦々、離島においても、廃家電リサイクルの網の目が及ぶことが理想的ですが、
廃家電の回収に掛かるコストを考えるならば、それが理想に過ぎないことは明白です。

松谷 明彦さんの著された「東京劣化」に、日本における急速な少子高齢化の加速の背景が書かれていますが、

第二次世界大戦時の「産めよ増やせよ」という人為的な人口増加策が、現代日本と、そしてあと数十年先の将来の日本にまで負の影響を及ぼしています。

人口減少が進む日本で、一世帯あたりの購入量にも限界のある電子機器が、右肩上がりで増え続けると期待をするということは、

戦前の「産めよ増やせよ」政策の再来を期するのと同じ精神構造となります。

ここは一つ、右肩上がりではなく、「現状維持」、あるいは「安定的なリサイクル市場の形成」を目標とするべきではないでしょうか?

 負のスパイラルから抜け出す方法はあるのだろうか。そのヒントは、北陸に地盤を持つ認定事業者の1つ、ハリタ金属(富山県高岡市)の取り組みだ。

 驚くのは、小型家電の回収量だ。同社は14年度に富山、石川、福井県の29市町村から1034トンを回収した。回収エリアの合計人口は約200万人で、名古屋市の約230万人より少ないにもかかわらず、名古屋市の年間回収量である110トンの10倍近くある。

 同社が集められる理由は、自治体のボックス回収に頼らず、一般廃棄物や資源ゴミの回収と併せて回収することにある。「例えば、金属くずの品目に小型家電を加えてもらい、同じ回収日に捨ててもらう。その後、事業者が選別すれば、住民や自治体の負担は少ない」と張田真社長は話している。

「負のスパイラル」という言葉に扇情的な雰囲気が漂っていますが、成功事例として、富山県のハリタ金属を取り上げていることは好感です。

ただし、記事ではまったく書かれていませんが、同社にしても、一朝一夕に現在のような大量の廃家電を収集できるようになったわけではありません。

関係する市町村との折衝や、それぞれの市町村における一般廃棄物収集運搬業者との連携を積み上げた結果として、年間1千t超の回収量を達成されたところです。

結果を見るだけではなく、「結果に至るプロセス」と「結果を積み重ねた先にある目標」にフォーカスすることこそが重要ですね。

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