産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和3年度)

2023年1月17日に、環境省から「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和3年度)について」が発表されました。

環境省の発表内容によると、

(1)令和3年度に新たに判明した不法投棄事案
  ・不法投棄件数  107件    (前年度139件)     [-32件]
  ・不法投棄量   3.7万トン  (前年度5.1万トン)   [-1.4万トン]
 
(2)令和3年度に新たに判明した不適正処理事案
  ・不適正処理件数 131件    (前年度182件)     [-51件]
  ・不適正処理量  9.4万トン  (前年度8.6万トン)   [+0.8万トン]
 
(3)令和3年度末における不法投棄等の残存事案
  ・残存件数    2,822件   (前年度2,782件)    [+40件]
  ・残存量     1547.1万トン(前年度1567.4万トン)  [-20.3万トン]

でした。

不法投棄の件数と量ともに、前年度よりも激減しています。

令和3年度というと、2021年4月から2022年3月までの期間となりますが、当ブログ上でも様々な不法投棄事件を取り上げていますので、懐疑的にならざるを得ません。

しかしながら、最近流行(と言うよりは、ようやく発覚するようになった?)「統計改ざん」とはまったく思いません。

この統計は都道府県等に対するアンケート結果を集計しただけの簡単な統計だからです。

毎年指摘していることではありますが、
不法投棄に関して見聞きする状況と、統計が切り取った数値に乖離が生じる理由としては、

この統計の対象が

1件あたりの投棄量が10t以上の事案(ただし、特別管理産業廃棄物を含む事案は全事案)を集計対象

としているためではないかと考えています。

すなわち、投棄量が9トン未満の不法投棄が100件見つかったとしても、統計上はゼロ件としか表現されないためです。

ただし、私が実際に携わっていた2000年代初頭以前の状況と比べると、大規模不法投棄自体が激減していることは間違いありません。

1990年代から徐々に強化されてきた不法投棄対策を思い出してみると、
・行政と警察の連携強化
・刑事罰の重罰化
・ブローカー行為の禁止
・産業廃棄物管理票の運用を最終処分終了時まで拡大
・排出事業者を措置命令対象に追加
等々、漸進的に改善が積み上げられてきたことがわかりますが、

私自身は、「排出事業者を措置命令対象に追加」したことが、不法投棄の抑制に最も効果を発揮したように思っています。

失敗した理由を検証することは言うまでもなく大切ですが、成功した理由や構造を解明し、類似した問題の解決に役立てることも重要ですので、有識者の方に、「なぜ、不法投棄が抑制されたのか」を是非とも検証していただきたいと思っております。


令和3年度も、「投棄件数」の約半分は「排出事業者」が実行者でした。

しかし、「投棄量」で見ると、「許可業者」が約1.5万トン(前年度は約8千トン)で全体の41.3%と、許可業者による不法投棄量が突出して多くなっています。

許可業者による不法投棄は7件ですので、1件あたり平均で約2千トンも不法投棄されたことになります。

許可業者にとっての不法投棄は、発覚すれば即刻許可取消の対象になるという、リスクが非常に大きい犯罪ですが、そのリスクを無視して犯罪に踏み切った理由が気になるところです。

不法投棄された産業廃棄物の内訳としては、令和3年度は全体の87.4%が建設廃棄物だったとのことです。

「87.4%」という割合は例年よりも高い数値となっていますので、建設廃棄物の監視や元請の処理責任の適切な履行の重要性が、これまで以上に増していると言えます。

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