労働災害における「アナフィラキシーショック」への備え

個人的に「アナフィラキシーショック」の危険性を初めて認識したのは、1991年に公開されたアメリカ映画「マイ・ガール」でした。

当時人気絶頂のマコーレー・カルキン演じる少年トーマスが、大量の蜂に刺されて絶命するという痛ましい描写が映画の終盤にあります。

その他、日本の映像作品にはあまり登場しない気がしていますが、アメリカのドラマや映画では、「ナッツアレルギー」な登場人物が数多く存在し、「ナッツアレルギーと知りながら、最後にピーナッツバターサンドを食べて自殺する死刑囚」や、暗殺や殺害手段として「ナッツアレルギー」を利用されるという可哀想な場面もよくあります。

「蜂毒」や「特定の食品」その他の誘因で、呼吸停止や心停止等の重篤なアレルギー反応に陥った状態が「アナフィラキシーショック」となります。

※「日本アレルギー学会」の「アナフィラキシーガイドライン」を参照しつつ記述しましたが、筆者は専門の医学的知識が無い人間ですので、上記には正確ではない表現が含まれている可能性がありますが、その場合はご容赦ください。

「アナフィラキシーガイドライン」は、医師の診断・治療レベル向上のために作成されたガイドラインですが、医師ではない私のような一般人にとっても有益な情報が数多く掲載されています。


※「アナフィラキシーガイドライン」より画像を転載

獰猛というイメージから、スズメバチによるショックしかないと思い込んでいましたが、「ハチ刺傷によるアナフィラキシーは、アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチの順に多い」ことが意外でした。

スズメバチが住宅地に巣を作ることもたまにありますが、アシナガバチの巣はそれほど大きくないことがほとんどであるため、気が付けば、軒下等の目立たない場所に営巣されていることが多いように思います。

そのため、「毒の強さによる違い」というよりも、「どれだけ人間の身近にいるか」によって、「アシナガバチ>スズメバチ」という順序になったのかもしれませんね。


※「アナフィラキシーガイドライン」より画像を転載

「致死的反応において呼吸停止または心停止までの中央値は、薬物5分、ハチ15分、食物30分との報告がある。蘇生に成功しても重篤な低酸素脳症を残すことがある」

あくまでも「中央値」ではありますが、「15分」という時間はかなり短い時間ですね。

言い換えると、「刺されてから15分間何もしない」場合、死に至る可能性すらあるわけです。

スズメバチのみなら、アシナガバチという人間のより身近にいる蜂によっても、アナフィラキシーショックが起きる可能性がある以上、
・蜂に刺されない対策
・蜂に刺された時の対策
の2つが重要と言えます。

従業員が主に野外で活動する業種の企業の場合、アナフィラキシーショックへの備えは必須と言えます。

先述したとおり、アシナガバチは都心でもすぐに営巣するため、巣の近くに立っただけで、場合によっては複数回刺されてしまう可能性もありますので、「ウチは山の中で仕事をするわけじゃないので、アナフィラキシーショックなんて絶対に起きない」と即断すると危険な気もします。

しかし、医師ではない一般人からすると、「何から手を付ければよいのか分からない」という心境になるのも無理ありません。

私自身を含めたそのような皆様にご紹介したいのは、

相模原労働基準監督署が作成・公表してくれている「蜂刺されによる死亡災害を防止しましょう」というリーフレットです。

「対策例1 蜂刺されの可能性自体の低減」「対策例2 刺された場合の重症化への備え」「エピペン」「蜂の性質」等
裏表で2枚分のリーフレットに、必要十分な情報が簡易明瞭に掲載されています。

すべての企業で今すぐできることは、

・労働者の過去の蜂刺されの経験の有無等を確認する。
・発症の可能性のある労働者に、登録医師からアナフィラキシー補助治療剤の処方を受けるよう勧奨する。
・作業者に当該アナフィラキシー補助治療剤の使用方法を教育し、これを携行させる。

という部分になりましょうか。

貴重な人材と人命を、「蜂の一刺し」で失ってしまわないように、企業としてできることはすべてやっておきたいところですね。

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