DOWA社が水質事故の損害賠償を拒否

当ブログでもかなりの回数取り上げてきたテーマですが、また新しい動きが起こりました。

1月18日付産経新聞 DOWA社が賠償拒否、埼玉県など提訴へ

 利根川水系の浄水場で昨年5月、基準値を上回る有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、原因物質を排出したとされる金属加工会社「DOWAハイテック」(本庄市)に対して埼玉など5都県が求めていた損害賠償について、同社は18日、請求を拒否する回答を文書で伝えた。

 DOWA社は回答文で「産廃業者への委託手続きは適正だった。業者側の責任も不明確」などと改めて自社に法的責任がないことを主張した。回答を受けて県は他都県と協議した上で提訴に踏み切る方針。

 この問題では利根川水系で取水制限が行われ、流域5都県はDOWA社に計約2億9千万円の賠償を求めていた。県はDOWA社が、ホルムアルデヒドの原因物質を含んだ廃液について群馬県高崎市の産廃業者に十分に説明しないまま処理委託したことが原因になったと主張している。

ちなみに、ブログのみで判断すると、私がDOWA社を目の敵にしているように見えますが、決してDOWA社が嫌いなわけではありません(苦笑)。

むしろ、応援したい会社の一つで、リーマンショック直後に暴落したDOWA社の株を真剣に買おうと思っていたくらいです。
悩んでいるうちにすぐに株価が戻ったので、結局いまだに株主にはなれていませんが(笑)。

「もっと素晴らしい対応ができる会社のはずだ」という愛ゆえの苦言と受け止めていただければ幸いです。

さて、新聞報道に先立ち、
2012年12月26日付で、DOWAホールディングス株式会社が、損害賠償拒否に関するプレスリリースを出しています。
 当社子会社「DOWAハイテック(株)」に対する東京都水道局他12団体からの請求について

このリリース、一部の方には「戦う法務」として好感を持たれているようですが、私にはこじつけのように思え、愛するDOWA社には出してほしくない声明でした。

DOWA社のプレスリリースの中から気になった部分を抜粋します。

委託基準違反があったのかどうか

・ 埼玉県環境部の調査結果において、廃液の処理委託者であるDOWA ハイテックは「全窒素濃度等の試験成績書やサンプルを提供しており、廃棄物に関する情報を秘匿したとは認められないことから、『契約書にHMTの情報を記載しなかったこと』は、廃棄物処理法第12 条第6 項に定める委託基準違反には該当しません。」とされていること

2012年6月上旬の事件発覚直後は、埼玉県はそのような見解を示しています。
その意味では、事実としては確かにそういった文書が埼玉県から出されていますが、それを金科玉条のごとくに奉り、あげあしとりの道具とするのはいかがなものでしょうか。

私は当初からこの見解には立たず、委託基準違反と考えておりましたが(DOWAハイテックの委託基準違反)、
DOWA社が引用した埼玉県の見解は、埼玉県の独自見解というよりは、裏で環境省に相談した結果が反映されたものだと思います。
DOWA社に誤解をさせる文書を示したという点においては、埼玉県よりも環境省の責任が大きいと思われます。

その後、2012年9月12日付で、「ヘキサメチレンテトラミンを含有する産業廃棄物の処理委託等に係る留意事項について」という後付の通知で、上記の「委託基準違反には該当しない」という見解を覆したのが最悪でした。
事件発覚後わずか3ヶ月ほどで、違法性に関する主張を180度変えてしまったからです。
最初から、通知に書かれた内容のとおりに「委託基準違反だ」と、環境省が言ってくれていればDOWA社を含む当事者に混乱は起こらなかったと思います。

処理業者に責任転嫁?

・ 本件についてのDOWA ハイテックの責任を判断するにあたって、廃液の処理を行った高崎金属工業㈱が、水質汚濁防止法に規定されている排出基準を遵守できていたのかという点が非常に重要な事項であると考えていること

処理業者に「HMTが入っているよ」と明確に伝えずに、全窒素のデータを示しただけでHMTの存在に気づけというのはかなり酷な注文です。
全然予期していない物資が混入された状態では、適切な排水処理ができるわけがありません。
HMTの混入に関し、処理業者に故意や過失があったわけでもないため、埼玉県も処理業者に違法性は無いとしたわけです。

DOWA社ともあろうものが自社よりも小規模な処理業者に責任転嫁を行うのは、かなり見苦しい姿です。

プレスリリースの表現からは、DOWA社には一切の過失が無く、処理業者が勝手に違法行為をしたのだというニュアンスに感じられます。

そうではないのは上述したとおりです。

そのような主張ができるのは、DOWA社がHMTが含有されていることを無過失で知らずに、処理業者に引き渡した場合のみです。

やはりHMTの危険性を知ってたんだね

なおDOWAハイテックは、平成15 年にホルムアルデヒドが検出された際には、埼玉県等と一体となって原因究明に当たりました。原因究明後は、埼玉県等とも相談のうえ、工場に大規模な廃液濃縮設備を建設するなど排水系統の大幅な見直しを実施しました。

それだけ慎重な廃液処理が必要と知っていたと、DOWA社自体が自認しています。

・水道事故を起こした経験
・HMTの不適切な放流の危険性も認識していた
・委託先の処理業者ではHMTの適切な処理ができないことが分かっていたはず

この3点からだけでも、DOWA社は無過失であったとは言えないと考えております。

思い切り極端な説明をすると、
・ダイナマイトの危険性を認識していながら
・その危険性を告げずに
・ダイナマイトの扱い方を知らない人に渡し
・ダイナマイトが爆発してしまった

こういった場合には、ダイナマイトを渡した側の過失や故意が問題になるのは当然です。

今回の事件も、
ダイナマイトほどの危険性はなく、人が一人も傷ついていないだけで、
事件の原因と結果の構造はほぼ同じです。

DOWA社には、目先の損得ではなく、リーディングカンパニーとしての誇りと責任を取り戻して欲しいと切望しております。<(_ _)>

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