収支は合わないが、健康福祉政策としては有効かも

廃棄物のリサイクルとしてはまったく持続不可能な採算性ですが、高齢者の方を対象とした健康福祉政策としては非常に秀逸と思われる事例を取り上げます。

2014年1月20日 読売新聞 落ち葉お金に「再生」…栃木

 落ち葉がお金になる――。栃木県茂木町で地域のお年寄りたちが、落ち葉を集めて有機物リサイクルセンター「美土里(みどり)館」にせっせと持ち込んでいる。

 センターで堆肥化され、販売の収益はお年寄りに一部が還元される活動を続けて11年目。タヌキに化かされたような話は、自然の循環を支えて、健康維持にも役立っている。

 冷え込んだ今月10日午前。茂木町九石(さざらし)の雑木林で、5人の男たちがくま手で落ち葉をかき集め、両手で抱えて麻袋に詰めていた。吐く息は白いが額は汗ばんでいる。2時間弱で16袋がいっぱいになった。「ひとかきなんぼだから、張り合いがあるね」。鯉沼仁さん(68)たちの表情は生き生きしていた。

 美土里館は、1袋(20キロ・グラム)あたり400円で買い取る。5人は、近くの「烏生田(うごうだ)地区里づくり協議会」のメンバー。山の下草刈りなど里山を守る活動をしており、落ち葉集めは今季で11年目になる。昨年度は約3か月で1500袋分を集めた。金額にして60万円だ。

 落ち葉を堆肥にリサイクルする美土里館の取り組みは、各地から視察にくるほど注目されている。落ち葉と牛ふん、生ゴミ、もみ殻、おが粉の“町内産原料”を混ぜて堆肥化し、それを「美土里たい肥」として1キロ・グラム5円(袋入り10キロ・グラム500円)で販売する。

 持ち込まれるのは年間1万~1万2000袋で、計1600トンの堆肥を生産しても完売する。「落ち葉の土着菌が還元されるので農産物の生育がいいようです」。美土里館の担当者は、自然の循環を活用した試みに胸を張る。

 現在は40~50人ほどの高齢者が落ち葉を持ち込んでいる。協議会メンバーの一人、小森幸夫さん(80)は持病もなく元気そのもの。「今日も仕事だと思うと気合が入る」と張り切り、一日に1万歩以上を歩く。小遣い稼ぎと健康維持に加えて景観の保持にも貢献し、好循環そのものだ。

1キロあたり20円で落ち葉を買取って堆肥を作り、堆肥は1キロあたり5円で販売するということは、堆肥を作れば作るほど赤字になります。

そのため、採算性だけから考えると、持続不可能なリサイクルとなりますが、最初に述べたように、数十万円の支出で地域の高齢者の方の意欲と健康維持につながるのであれば、福祉政策としてはコストパフォーマンスが高い秀逸な政策と言えます。

ところで、「報酬が高すぎてもやる気を失う」というのは心理学的に実証されている事実です。

そのため、茂木町の方々は金銭的な動機で落ち葉を集められているのではなく、
「集めれば集めるほど落ち葉が減って里山がきれいになっていく」という達成感と、
「自分の行動が地域の役に立っている」という満足感、
そして「自分たちがやらなければ」という健全な義務感 に基づいて、落ち葉集めに励まれているのだろうと思います。

里山や農耕地がある地域でないと取れない政策ではありますが、高齢化社会に突入した日本にとって大きなヒントになる事業モデルですね。

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