排出事業者は誰になる?
産業廃棄物を理解する上での大きなポイントとして、「排出事業者は誰なのか」という点があります。
製造事業者などが、自社が発生させた廃棄物を処理業者に委託する場合には、「誰が排出事業者なのか?」と悩む必要はありませんが、世の中、すべてそう単純には割り切れません。
よく持ち出される例としては、「建設工事において発生した廃棄物の排出事業者は誰なのか」というものがあります。
「え!そんなの建設工事を行った事業者だろ!」と思われる方が多いと思います。
廃棄物処理法的にはそれが正解なのですが、実際の建設工事現場においては、「元請会社」と「下請会社」が一体となって工事を施工していることが多く、誰が排出事業者かを判別するのが難しい場面があります。
そんな時、「この廃棄物は下請が発生させたもの」「あの廃棄物は元請が発生させたもの」と、法律の定義どおりに排出事業者を決めだすと、ごみの排出者の区別だけで、多大な労力と費用がかかってしまいます。
そこで、平成6年に、厚生省(当時)は、「建設工事から生じる産業廃棄物の処理に係る留意事項について」(平成6年8月31日衛産82号)という通知を出し、「建設工事で発生した廃棄物の排出事業者は元請会社である」としました。
それに、元々は元請会社が建設工事を発注者から請け負い、その一部分を下請会社に仕事をしてもらっているわけですから、その現場から発生した廃棄物については、工事全体の施工によってもっとも大きな利益を受ける、元請会社が負担するのが筋とも言えます。
ということで、建設工事で発生した廃棄物については、元請会社が責任を持って処理しなくてはいけないわけです。
そして、元請が排出事業者である以上は、下請会社が現場からその廃棄物を運び出す場合、下請会社は他社の廃棄物を運搬することになりますので、収集運搬業の許可が必要となっています。
※2010.8.23追記
2010年の廃棄物処理法改正に伴い、修繕工事などの小規模な建設廃棄物の運搬については、特定の条件にあてはまる場合は、収集運搬業の許可無しに、下請が運搬可能となりました。
元請会社、下請会社とも、廃棄物処理法違反にならないよう、それぞれに必要な手続きを熟知しておきたいものです。
その必要な手続きについて不安を感じている方は、拙著「最新産廃処理の基本と仕組みがよ~くわかる本」 をご参照ください。
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2009年2月9日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |