たしかに廃家電の輸出量は減ったが・・・

2014年4月10日 22時39分 NHKニュース 不正輸出廃棄物家電 3分の1に減少

国内で廃棄する場合、リサイクルが法律で義務づけられているエアコンやテレビなどの家電製品で、平成24年度に海外に不正に輸出されたのは推計で130万台と、前の年度のおよそ3分の1に減ったことが環境省の調査で分かりました。

家電製品のうちエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の4品目は国内で廃棄する場合、消費者が料金を負担したうえでメーカーの責任でリサイクルすることが家電リサイクル法で義務づけられています。

しかし、リサイクルされずにスクラップにして海外に不正に輸出されるケースが相次いでいて、環境省の調査では平成23年度には推計で362万台に上りました。

10日、東京都内で開かれた専門家の審議会で平成24年度の調査結果が示され、推計で130万台と前の年度のおよそ3分の1に減ったことが分かりました。

その理由について、環境省は地上テレビ放送のデジタル放送への完全移行に伴うテレビの買い替えの需要が落ち着いたため、廃棄されるテレビが大幅に減ったことや、おととし3月に不正な業者の取締りを強化するよう全国の自治体に通知したことなどが影響したのではないかとしています。

家電製品の不正輸出の問題に詳しい早稲田大学法学部の大塚直教授は、「減少したことは大変喜ばしいが、依然として少なくないので、自治体は不正な業者の取締りをさらに徹底してほしい」と話していました。

報道のように、自治体に取締りの要請をしたこと
環境省が水際で税関と共同で廃棄物の不正輸出規制に尽力していること
なども、廃家電の輸出量減少に寄与したのは間違いありませんが、

現実的な理由としてはもっと別の要因の方が大きいのではないかと思います。
一つは、2011(平成23)年下半期における鉄スクラップ輸出価格の低下の影響です。
iron
このグラフは、財務省が毎月発表している「貿易統計」から、鉄スクラップの輸出単価を抽出・加工したものですが、
2011年は年間で1tあたりの単価が1万円程度変動しています。

この単価は、廃家電などの雑品スクラップの輸出単価を示すものではありませんが、国際的な鉄スクラップ需要の推移の一端がわかるデータですので掲載しておきます。

もう一つは、主要なスクラップ輸出先であった、中国でのスクラップ品の輸入規制の強化です。

2011年当時の状況を伝える記事をご紹介します。

2011年10月13日 ウォール・ストリート・ジャーナル 中国の銅スクラップ輸入規制、国内精錬銅需要を下支えする可能性

【上海】輸入された銅スクラップが中国の港に山積みになっている。中国当局による環境規制の強化で、銅スクラップが有害でないことを示す必要な証明書取得に商社が駆けずり回っていることが背景にある。

港に積み上がっている銅スクラップと平行して、精錬銅は価格が下落している。世界経済成長の鈍化が需要を後退させるとの懸念から8月初めから急落。この価格差縮小で、原材料または半製品から銅を生産する事業会社にとって、精錬銅の妙味が高まっている。

業界関係者やアナリストらは12日、世界でも主要銅消費国である中国で積み上げられている銅スクラップが、精錬銅需要を引き続き押し上げる場合、この流れが世界の銅相場を下支えし、生産会社・製造会社の利益率上昇を後押しするかもしれないとの見方を示した。

銅生産に流通市場のみに頼っている山東省の製錬会社幹部は、「銅スクラップ需要は常に堅調だ。ただここ数日は入手がかなり難しくなっている。その理由の1つが、銅スクラップ輸入の新規制かもしれない」と述べた。

中国8月の銅スクラップ輸入量は38万2,175トンで前月比12%減、前年同月比4.1%減となった。1-8月では前年比7.3%増の301万トンだった。

中国環境保護省は8月1日、スクラップ輸入の新しい規制を導入した。同省ウェブサイトの声明によると、新たな規則で輸入業者は固形廃棄物であるスクラップが確実に環境基準を満たしていることを示す証明書が必要とされている。

北京を本拠地とする大手外資系証券会社のアナリストは、「当初は施行がそれほど厳しくなく、商社はお互い証明書を譲り合うことができた。しかし現在、税関が取り締まりを強化しており、輸入がかなり複雑になっている」と述べた。

業界関係者は、特に広東省の港に山積みになっているスクラップについて、スクラップの識別が輸入の一時保留につながっているようだと述べた。

スクラップがほかの市販用製品と異なるのは、スクラップが手作業による解体・分離作業を必要とすることから、含有物という点で大部分の環境基準の判断が難しいものが多いからだ。

アトランタを本拠地とするリサイクル業者、ユニットオール・グループ副社長で、国際リサイクリング協会の中国大使を務めるデビッド・チアオ氏は、広東省に積み上がっているスクラップは「かなりの量だ」と述べた。スクラップは自動車から電気製品まで多岐にわたる。

(略)

「さらに新しい規制導入で、銅スクラップを購入し大量の輸入スクラップを使おうとする向きはいないようだ」と山東を本拠地とするある幹部は述べた。

アナリストらは、銅スクラップの積み増しが続く場合、海外市場で銅価格が大幅に上昇しない限り、目先は精錬銅需要を下支えする状況となりそうだと述べた。

家電リサイクル法の対象品目であるエアコンには、銅が大量に含まれていますので、銅スクラップの範疇に入ります。

2011年は、「鉄スクラップの需要低迷」と「中国当局の輸入規制強化」によって、
日本から家電スクラップを輸出するメリットが低下したため、廃家電の輸出量は激減したものとも考えられます。

実際に、家電スクラップの輸出をしていた人(中国人)に話を聞くと、
「中国人の日本市場への参入が増えたので、家電スクラップの輸出は儲からなくなった」と言われていましたので、
国内外の規制強化と相まって、廃家電を輸出するインセンティブが従来よりもかなり低くなっているようです。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ