委託基準違反容疑で排出事業者、しかも町役場が書類送検されるという事態は極めてまれですので、心が躍りました。
2025年9月3日付 毎日新聞 「廃キノコ工場のがれき処理手続き怠った疑い 町などを書類送検 茨城」
茨城県利根町が約35年前に建設しながら4年しか使われず廃虚になっているキノコ工場について、がれき処理に必要な手続きを怠ったなどとして、県警が町と町農業政策課の前課長=既に退職=を廃棄物処理法違反容疑で水戸地検土浦支部に書類送検した。関係者への取材で3日わかった。
関係者によると、町は2024年4月に業者に工場内のがれきを撤去させた際、産業廃棄物を処理する委託契約を業者と結ばず、廃棄物の処理状況などを把握するために必要な管理票(マニフェスト)を交付しなかった疑いがある。
「がれき類」は、一般的には、「土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む)」によって発生する産業廃棄物ですので、「なぜ 町役場ががれき類の排出事業者と判断されたのか?」と疑問に思いました。
町役場に勤務する有志で元キノコ工場を解体したわけでもなさそうです。
その謎を解くべく、「利根町 キノコ工場」で検索すると、
2025年1月31日付 FNNプライムオンライン 「【独自】30年超放置され“廃墟”キノコ工場が小学生の遊び場に…2度の不審火にアスベスト検出など「不快な建物」 住民ら請願書提出で解体決定 茨城・利根町」
という報道がヒットしました。
フジテレビでは、キノコ工場内で撮影した映像が紹介されていましたので、その部分のみを転載させていただきます。
経年劣化、あるいは風化、または報道にも登場した”悪い子”の仕業(笑)なのか、はたまた火事の影響なのか、具体的な原因は定かではありませんが、工場内に壁や天井の一部が崩れ落ち、それが放置されてきた様子がよくわかります。
ここでまた疑問が浮かびました。
キノコ工場跡地の解体自体は決まっているのであれば、崩落した壁等のがれき類だけを事前に撤去せずに、解体施工業者に解体廃棄物として処分してもらえば良かったのではないか?
キノコ工場に落ちている壁材等は、解体工事で発生したものではありませんが、工場建屋を構成していた部材であるため、建屋所有者が処理責任を負う「残置物」扱いする必要性は乏しいと言えます。
もっとも、廃棄物処理法上のそんな細かいことを気にする人・組織であれば、契約書とマニフェスト無しで産業廃棄物の処分委託をするわけがありませんので、「とりあえず業者に持ち帰らせておけ」という乱暴な割り切り方で依頼をしたのかもしれません。
書類送検された人は、前農業政策課長とのことですので、利根町の負の遺産であるキノコ工場所轄部局の責任者だった方ですね。
地方自治体による廃棄物処理法違反の場合、「担当者」が書類送検されることがほとんどですが、「(前)課長」自らが委託基準違反を主導していたと捜査当局にみなされたものと思われます。
公務員は憲法と法律に従い、「全体の奉仕者として」職務を遂行することが義務付けられていますが、公務員だからと言って、日本国内のあらゆる法律に精通しているわけではありません。
「公務員」だけにあてはまる話ではありませんが、「縦割り社会に安住し、視野狭窄に陥りやすい」構造にある公務員の人に、覚えておいていただきたい原則を述べます。
「公務で発生した廃棄物を処分する場合は、廃棄物処理法の規制を受けるので、すべての公務員は『廃棄物処理法の委託基準』を理解しておくこと!」