許可品目チェックの要注意実例

「有害物質を含んだ産業廃棄物を不法投棄」という表現に引きずられがちですが、
問題の本質はそこではなく、「許可品目やマニフェストのチェックを関係者が行っていたか」ではないかと思います。

2016年9月2日付 MBSNEWS 「大阪市の業者が有害廃棄物を岡山県で不法投棄

容疑者らは今年4月、車のエンジンを製造する鋳物工場などから処理を委託された有害物質を適正に処理せず、汚泥などと混ぜ合わせて岡山県倉敷市の造成地まで船などで運び、約1400トンを不法投棄した疑いが持たれています。容疑者は「廃棄物ではない」と容疑を否認しています。

容疑者は「廃棄物ではない」と主張しているそうですが、報道画像を見る限り、見かけからして廃棄物に見えます。

kousai
※画像は上記のMBSNEWSより転載。

鉱さいを汚泥と混合し、建設資材に加工する許可を持っていたならば、それを建設資材として使う限りにおいては、不法投棄になることはありませんが、

件の業者の許可内容を調べると、汚泥と鉱さいを一緒くたに処理する許可は所持していなかったようです。
marushin

具体的には、汚泥と鉱さいの処理設備が異なるため、汚泥は「薬剤固化」、鉱さいは「破砕」するしかありません。

そのため、破砕後であったとしても、鉱さいを汚泥と混合し、薬剤固化をした時点で、中間処理業の無許可変更になります。

許可内容を見る限り、「がれき」と「ガラスくず」と「鉱さい」の3種類を破砕する設備とのことですので、当初はアスファルトくず等を路盤材に加工するのが中心であったものの、徐々に利幅の大きい鉱さいの取扱いが増えていったものと考えられます。

鉱さい自体は、適切にインプットさえ管理しておけば、すなわち有害物質の混入を事前に防げば、路盤材等に再加工できる廃棄物ですが、
それをしなかった鉱さいの場合は、管理型最終処分場に埋めるしかありません。

さて、ここで問題になってくるのがマニフェストの記載方法ですが、
鉱さいのリサイクル施設を持っている業者の場合、マニフェストD票(中間処理終了)の返送で終わり、E票(最終処分終了)の返送はなされないのが一般的となります。

排出事業者としては、「中間処理終了報告」で安堵をしていたところ、実は鉱さいは岡山県で不法投棄状態になっていたことが急に判明した形となります。

現実的なリスクとして、行為者が不法投棄物を撤去しない場合、契約書の不備等が見つかると、排出事業者に措置命令、すなわち不法投棄物の撤去が命じられることになります。

「契約書等に不備が無ければ良い」とも言えるのですが、よほど過去に産業廃棄物で懲りた経験をした企業でない限り、契約書の記載内容をそれほど意識しないことがほとんどです。

そのため、契約書の不備がそのまま放置され、不法投棄が発覚した時点で、措置命令の対象を免れることができないというのが、多くの企業がたどる結末です。

許可証を見る際は、許可品目とそれを処理する施設をつなぎ合わせてチェックすることが不可欠なのです。

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