ドローンは単なる撮影道具

近々記事にしようと思っているテーマに、「日本にはびこる読解力不足」があります。

当ブログでもたびたび取り上げている「ドローン」に対する期待の大部分は、その読解力不足の典型例となっています。

具体例としては、「ドローンを導入すれば、不法投棄を抑制できる」という、論理性のかけらもない「単なる願望」をメディアが大本営発表よろしくそのまま垂れ流しています。

なんとか学園や、ほにゃらら大学に関する報道の大部分もまた然りです。

メディアによる間違った情報の垂れ流しは、現代社会における公害と言えますが、
今回ご紹介する神戸新聞の記事は、そこまでひどいものではなく、淡々と事実を報じた部類に入ります。

2017年6月28日付 神戸新聞 「違法産廃、ドローンで裏付け 兵庫県警が業者逮捕

 法定量を超える廃棄物を保管しながら、兵庫県の改善命令に従わなかったとして、県警生活環境課と丹波署は27日、廃棄物処理法違反(改善命令違反)の疑いで、丹波市氷上町稲継の産業廃棄物処理業「ビオトープ工業」社長(75)=神戸市東灘区住吉台=を逮捕した。捜査関係者によると、この事件の捜査で県警として初めて小型無人機「ドローン」を活用し、容疑を裏付けたという。

 県警によると、逮捕容疑は、本社敷地内で処理基準量の3倍以上に相当する木くずや廃棄プラスチックなどを保管し、2016年8月に県から撤去するよう命令を受けながら、従わなかった疑い。容疑を認めているという。

 同社は今年3月、県から産業廃棄物処分業の営業許可や収集運搬業の許可を取り消されている。

 捜査関係者によると、県警は5月下旬、山積みされた廃棄物の全体像をつかむため、ドローンを使って撮影したという。

 県警は16年9月以降、カメラを搭載したドローンを3機導入。神戸・ポートアイランドで同年に開催された先進7カ国(G7)神戸保健大臣会合での警戒や神戸マラソンの雑踏警備のほか、海中に転落した車両の捜索などに活用している。

ドローンを使わなければ立件不可能だったわけではなく、
ドローンを使用すれば、改善命令違反の事実を証明するための、廃棄物保管量の把握が格段に容易になったというだけの話です。

捜査コスト削減や捜査員の安全確保のためには、このようにドローンをもっと活用すべきだと思います。

ただし、記事タイトルの「違法産廃」という表現は正確ではありません。

被疑者は無許可状態で産業廃棄物を集積したわけではなく、あくまでも保管容量の超過の結果、改善命令違反として立件されているからです。

保管基準に則って産業廃棄物を保管する限りにおいては、違法ではなく、合法でした。

このような見出しは、「自動車運転過失致死傷罪」を「殺人」と表現するようなものです。

日本語の文章表現で売上げを上げるメディアだからこそ、単語の意味を正確に読解していただきたかったと思います。

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