新設の管理型処分場は「環境に優しい」

2017年7月1日付 毎日新聞 「輪島の産廃処分場計画 県に「建設不許可を」 環境保全求め、市民団体

 輪島市門前町大釜の産業廃棄物処分場建設予定地に絶滅危惧種の鳥ミゾゴイが生息しているとして、市民団体「輪島の産業廃棄物処分場問題を考える会」(板谷外良代表)は30日、県が建設を許可しないことと、周辺の生態系を厳密に守ることを谷本正憲知事に求める申し入れ書を県庁に届けた。環境保護団体「世界自然保護基金(WWF)ジャパン」スタッフも同席し、「石川は生物多様性や種の保全に熱心な県。専門家と調べ上げ、環境保全の仕組みを進めてほしい」と訴えた。

 ミゾゴイは、ほぼ日本のみで繁殖するサギ科の渡り鳥。生物多様性などの環境の豊かさを示す鳥といわれる。

 会のメンバーとWWFジャパン自然保護室の草刈秀紀さんはこの日、大釜を視察後に県庁を訪ねた。草刈さんは県外の同様の問題を紹介し、「自然の改変を抑え、里山を守る若者を育てる環境共生の取り組みのほうが能登らしいのではないか」と提言した。県側は廃棄物対策課などが対応し、「(建設計画は)手順を踏んでいる。法にのっとり、適切に対応する」と述べた。

少なくとも、これから設置される、あるいは設置後10年未満の管理型最終処分場は、法規制(特に、維持管理基準)の強化により、周囲の生活環境に支障を与えない操業を維持できるようになっています。

最終処分場所に降った雨水で土中に浸透したものを「浸透水」と呼びますが、近年新設される管理型最終処分場では、浸透水を外部に排水可能な状態まで浄化する「浸透水処理施設」が軒並み大型化(=浄化能力が増大)しています。

管理型処分場でもっとも懸念されるのは、「地下水や水源汚染」かと思いますが、
適切な工事と設備さえあれば、これらのリスクをほぼ抑え込むことが可能になっています。

もちろん、見えない地下で何が起こるかわかりませんので、リスクを完全にゼロにすることはできませんが、水源や農地に排水が流れ込まないようにする工法が一般的に採用されています。

また、「最終処分場維持管理積立金」制度の存在により、経営基盤が脆弱な企業と、そうではない企業の峻別が可能になっています。

管理型最終処分場は、数ある産業廃棄物処理施設の中でもっとも設置困難な施設となり、大昔のような「土地転がし」感覚で安易に参入できるものではなくなりました。

一部太陽光パネルが設置される箇所があるものの、最終処分場跡地の大部分は緑化されることになりますので、埋立完了後は、埋立前よりも野生生物の数が増えることもよくあります。

その実例は、
当ブログ 2017年5月8日付記事 「これが本当の環境再生」でもご紹介しました。

「最終処分場は原子力発電所と同様に危険」という思い込みは、論理的には間違いと言えます。

もちろん、希少生物が現在生息している環境を破壊することは最大限避けるべきです。

そうした場所には極力触れないように、開発計画を立てるのが当然です。

もっとも、最終処分場の場合は、砕石事業とは異なり、基本的には山を切り崩していくものではありません。

谷間を埋めて平坦に、あるいは造成をするという事業になりますので、自動車の通路や管理棟の設置を除けば、山を大きく切り開く必要もありません。

最初に紹介した毎日新聞の記事に戻りますが、
市民団体の方が言うように、「希少生物が生息するからといって、設置許可を不許可にする」と、行政が違法になります。

そのため、石川県の「(建設計画は)手順を踏んでいる。法にのっとり、適切に対応する」というコメントは至極真っ当なものです。

環境保護団体「世界自然保護基金(WWF)ジャパン」の方が言われているとおり、

「石川は生物多様性や種の保全に熱心な県。専門家と調べ上げ、環境保全の仕組みを進めてほしい」

が、もっとも現実的な解決策かと思います。

事業主のタケエイは東証一部上場企業ですので、そうした面にも真摯に対応されるものと期待しています。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ