逃げおおせた奴は誰だ?

2021年10月1日付 佐賀新聞 「産廃撤去、行政代執行へ 神埼の業者、措置命令従わず 住宅地、2年前から

 佐賀県と神埼市は、同市の解体業E(※筆者注 業者名は略)が産業廃棄物の撤去と崩落防止の措置命令に応じなかったため、行政代執行の準備を進めている。同市議会は撤去のための立替費用235万9千円を含む本年度一般会計補正予算案を既に可決しており、県議会も予算2122万8千円を認める見通し。廃棄物処理法に関する行政代執行が実施されれば、県内では1995年に続き2例目となる。

 県と市によると、同社は2019年7月から、神埼市千代田町の借地(約300平方メートル)に解体廃材の不適正保管を始めた。近隣住民や市が撤去を呼び掛け、同社は「片付ける」と応じる意向は示したが、進展はなく、県は20年3月以降、口頭指導22回や文書指導3回など、再三指導を重ねてきた。

始まりは「建設廃棄物の不適正保管」で、行政指導でお茶を濁しているうちに、収拾不可能な状態まで問題が膨れ上がったため行政代執行
という、古典的な不適正処理事案です。

※参考 2021年7月2日付で佐賀県が出した措置命令 

本件、複数のツッコミどころがありますので、順にツッコミを入れておきます。

口頭指導は頑張ったようだが・・・

記事と佐賀県の発表内容によると、口頭での指導は20回以上とそれなりに努力していた形跡がうかがえます。

しかしながら、口頭指導に従わない相手に対し、さらに口頭指導を重ねることは、時間の浪費でしかありません。

ではどうしたら良いのか?

それは、相手(被処分者)が嫌がる働きかけをするしかありません。

相手が嫌がる働きかけといっても、行政機関は暴力その他の有形力の行使をすることはできませんので、「心理的に攻める」しかありません。

具体的には、「放置された廃棄物の関係者に行政から質問する」ことが効果的です。

何もない空間から建設廃棄物が突如降ってくることは有り得ませんので、必ず、解体工事の発注者や元請が存在しています。

不適正処理実行者は、例外なく、それらの「金づる」である顧客に行政からアクセスされることを嫌がります。

彼らからの信用を無くすと、仕事が減りますからね。

もっとも、そもそもその信頼関係が存在していたかどうかについては、大きな疑問がありますが・・・

結局、誰の責任なのよ?

佐賀県の措置命令を見てみると、法人組織ではなく、個人事業者に対して発出されています。

となると、被処分者がすべての解体工事の元請であったとは思えず、二次、あるいは三次下請の立場で関与していた工事の割合が高かったと思われますので、建設廃棄物の排出事業者たる元請が必ずいるはずです。

行政の通常の調査手順としては、不適正処理実行者から産業廃棄物管理票を提出させ、産業廃棄物の排出事業者が誰かを調べることが一般的なのですが、この被処分者は、頑として関係者を明かさなかったのでしょうか?

私の経験上は、そのような侠気あふれた不適正処理実行者にはお目に掛かったことがなく、皆例外なく口が軽く、自己保身のためもあったのか、なにがしかの産業廃棄物管理票を提出してきたものですが。

今回の被処分者が元請だった可能性もありますが、常識的に考えると、「元請から安値で解体廃棄物の処理を丸投げされた」か、「元請から安値で解体廃棄物処理を請け負った」のいずれかだと思われます。

その想像が当たっている場合は、下請である被処分者のみを断罪することは、元請の刑事責任を不問に付すこととなり、「トカゲの尻尾切り」でしかありません。

「公平性」を担保するためにも、佐賀県には、より広い視野で関係者への責任追及を行っていただくことを期待しています。

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