煽りすぎ

当ブログ 2023年1月30日付記事 「せこい犯罪」で、開業医がパッケージ袋等のプラスチック製廃棄物を高速道路のサービスエリアに不法投棄したため、逮捕された事件をご紹介しました。

その事件を報じたテレビニュースで、度を越した扇情的な表現がなされたものを目にしましたので、その問題点を指摘したいと思います。

その素敵すぎるニュースとは、
地元山陽放送の2023年2月1日付報道 「「命に関わる危険な行為」医師夫妻が注射針など3.3㎏をSAゴミ箱に不法投棄で逮捕「業者が処理すれば3,000円程度」なのになぜ?」 です。

まず、タイトルの「命に関わる危険な行為」という、少年漫画顔負けの大げさな見出しにビックリです。

また、「注射針」が捨てられていたというタイトルになっていますが、先行報道では、不法投棄された物として「空パッケージ」や「使用済みの点滴パック」が挙げられているのみで、警察が情報提供した不法投棄物の画像の中にも、「注射器」や「注射針」そのものの画像は見受けられませんでした。

そのため、報道の核心部分となる、事件の事実をミスリードさせる極めて不適切、かつ誘導的な見出しと言わざるを得ません。

真面目な話、パッケージ包装のプラスチックや紙で、どうすれば人を殺せるのでしょうか?

捨てられていた物が、「エボラ出血熱」等の感染性の高い伝染病患者に使用された(特殊な)感染性廃棄物であったならば、たしかに人の命に関わる可能性がありますが、今回の事件で捨てられた物は、いずれも感染性廃棄物ではありません。

ご丁寧にも、「感染性廃棄物処分業者」と「疫学を専門とする教授」にもインタビューを実施し、感染性廃棄物の危険性を挙げ連ねていますが、今回の事件事実とは無関係な問答となっており、インタビューを受けた専門家の方が奇天烈な煽りをしているように見えてしまいます。

事件とは無関係な専門家を無意味な煽りに巻き込むことは、インタビューを受けた専門家の方にも失礼な行為です。

「業者が処理すれば3,000円程度」という部分だけは、正確な事実を伝えていますが(苦笑)。

不法投棄に関する報道においては、「捨てられた物が何か?」が、非常に重要な報道対象となります。

すなわち、すぐに撤去しなければ人体にとって有害なものか、一般的な製品のパッケージ包装であるのかどうか等が、放送前に当然確認しなければならないニュースの核心部分です。

大学生の卒業論文であれば、「事実誤認」として、落第となってもおかしくないレベルの「恐怖や不安を煽る」報道でした。

ここまで書き進めて
不法投棄をした開業医が「感染性廃棄物を不法投棄しなかった」ことは、医師として最後の一線を超えなかったということですので、その点だけは良かったと思いました。

もっとも、不法投棄は、量の大小を問わず、人として恥ずべき犯罪とも思っておりますが。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ