委託者の罪とは

事件としてはありふれた建設廃材の不法投棄ですが、排出事業者が立件される可能性について触れた珍しい報道です。

2023年1月31日付 伊賀タウン情報ユー 「廃棄物処理法違反の疑い 受託禁止と不法投棄で男2人逮捕 伊賀署

 三重県警生活環境課と伊賀署は1月31日、廃棄物処理法違反(受託禁止違反の疑いで、大阪市浪速区に住む無職の男(45)を、同法違反(不法投棄)の疑いで大阪市西成区に住む建設作業員の男(44)をそれぞれ逮捕したと発表した。2人とも容疑を認めているという。

 逮捕容疑は2021年12月20日ごろから22年2月9日ごろまでの間、三重県や大阪府知事の許可を受けずに大阪府内またはその周辺で解体工事によって排出される木くずなどの産業廃棄物約4・6トンの収集運搬を解体工事代金と併せ計150万円で受託し、22年3月1日午後2時5分ごろ、伊賀市市部の山林付近に廃棄物の一部約2・2トンを土中に埋め、捨てたとさされる。

不法投棄量が10トン未満なので、環境省が毎年公表している「産業廃棄物の不法投棄等の状況」の集計対象とはなりません(涙)。

※参考 産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和3年度)

「150万円」という金額は、不法投棄の手数料ではなく、「廃棄物処分費を含めた工事代金」となるようです。

具体的な解体工事の内容や工事面積等が不明ですが、4.6トンという廃棄物の量は、木造住宅1棟を丸ごと解体した場合と比べると、それほど多い発生量ではないと言えそうです。

ただし、この「4.6トン」は「警察が把握できた量」ですので、実態としては、より多数の工事現場から、もっと大量の廃棄物が発生していた可能性もあります。

そのため、「150万円」という請負金額が高かったのか、安かったのかは正確に判断できませんが、不法投棄に踏み切ったということは、「安かった」のかもしれません。

さて、記事の冒頭で触れた「排出事業者が立件される可能性」については、

無許可の業者に委託した同法違反(委託基準違反)の疑いで大阪府内の解体業者も任意で調べている。

とあります。

外形的には、無許可業者に建設廃棄物を運ばせている時点で、委託基準違反が成立していますが、委託関係の有無をいかにして証明するかが問題ですね。

多くの場合、書面でそのような契約をすることはありません。

「口頭での指示」や「暗黙の了解」により、当たり前のように違法行為が実行されることが大半です。

また、解体工事だけではなく、建設工事全般において、廃棄物処理法上の元請と下請の責任範囲の理解が正確に行われているとは言い難いのも事実です。

2010年の廃棄物処理法改正以降、干支が一回りする年月が経過してしまいましたが、元請の義務や責任がおざなりな当事者が大部分という現状を考えると、これまで以上に熱を込めた啓蒙活動を続ける必要があります。

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