刀剣乱舞グッズ流出事件

※本記事の公開後、公式ショップ側の立場等に関し、事実に基づき、一部修正を加えました。

プレイしたことが無いので名前しか知りませんが、「刀剣乱舞ONLINE」というオンラインゲームの公式ショップサイト及び公式飲食店が、
「業者に委託した当店機密廃棄物が違法出品され(た)」と、同社のTwitter上で発表していました。

「詳細につきましては以下よりご確認下さい。」と、委託先処理業者のURLと、同社からの報告文が画像形式で掲載されるという、非常に簡易な発表形態です。

被害者的な立場であるため、感情的には理解できなくはありませんが、企業間の力関係次第では、一方的にさらし者としているようにも見えるドライな表現とも言えます。

一般的な広報対応としては不自然に感じたので、少しばかり背景を探ってみると、

2022年6月29日付 刀剣乱舞2.5茶屋 「真剣乱舞祭2022ノベルティの違法出品について

「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~真剣乱舞祭2022~コラボ」ノベルティのコースターがサービス提供前にオークションサイトにて出品された件に関して、事実確認を進めたところ製造会社にて保管されていたサンプル品が違法に出品されていたことが判明しました。

現在、出品者の特定は完了し、違法出品された品物はいずれも取引完了前に回収されております。

今後同様の事象を発生させないため、製造元の変更、保管体制の強化、転売行為に対する対応の強化を行ってまいります。

と、公式ショップ側が排出事業者だったということではなく、グッズの製造委託先が排出事業者だったことがわかりました。

現時点で得られる教訓としては、

公式ショップ側は、公式グッズを流出させないために、商品の製造委託契約において、サンプル品を廃棄する際の厳格な取決めを行う必要があり、

グッズ製造企業は、サンプル品とはいえ、絶対に流出させないという考えの下、委託先処理業者と情報共有する等相応の対処が必要であったということです。

思い起こせば、2016年の「食品廃棄物の不正転売事件」に端を発し、「国土交通省のヘリに積まれていた高性能赤外線カメラが処理業者からネットオークションに出品され、中国の軍事企業グループに落札される」という事件の後、「産業廃棄物処理業者から転売目的で廃棄物が持ち出される」というニュースは久しぶりな気がします。

さて、「食品廃棄物の不正転売事件」は、産業廃棄物処理企業経営者自身が関わっていたため、「企業による犯罪」だったと言えますが、
今回の「刀剣乱舞」事件は、流出させてしまった処理企業の公表するところによると、

弊社従業員が、お客様より廃棄を依頼されたカラーサンプルを、廃棄処分前に窃取し、業者を介してネットオークションに出品していた

とのことですので、企業ぐるみではなく、完全に「従業員個人の犯罪」だった模様です。

そのため、その処理企業の名称やURLをあげつらうことが気の毒に思えますので、当ブログ上ではそれらの情報を記載しないことにしました。

ただ、「従業員が個人的に実行した犯罪への、企業としての対処方針」を考える上では、同社が公表した声明文に参考になる面があるため、適宜その文章を引用・転載させていだきます。

「廃棄処分前」と書かれていますが、この企業は産業廃棄物収集運搬業者であると同時に、積替え保管の許可も所持していますので、「カラーサンプル」の抜き取りは、「積替え保管場所に持ち帰る前」か、「積替え保管場所で」行われたものと思われます。

言わずもがなかもしれませんが、それぞれの場所ごとにケアすべき対象者は、
「積替え保管場所に持ち帰る前」ならば「ドライバー」だけで済みますが、
「積替え保管場所」ならば「ドライバー」、「廃棄物の仕分けを行う作業員」の他、「積替え保管場所に出入りできるすべての社内外の人間」と、より広範になります。

この点については、別記事で改めて触れることにします。

ネットオークションに出品された上記カラーサンプルにつきましては、既に弊社の責任において回収し、現在は出品も取り消されております。

もっとも重要な初期対応である「流出品の回収」については、非常に迅速に行われたようです。

個人的には、「回収手段」に興味がわきましたが、オークションで企業側が落札したのでしょうか?

「オークション運営会社への通報」ではなく、「回収」とあるので、「頑張って落札したのではないか」と想像しています。

取った行動の内容と、その結果を簡潔に記しているところには、好印象を受けました。

当該従業員に対しましては、懲戒処分に処する所存であり、また、刑事責任の追及についても既に被害届を提出済みです。

抜き取りをした従業員にしてみれば、「ゴミとして処分してしまう物を抜き取って転売したところで、誰も傷つかない」と、安易に考えていたのかもしれませんが、廃棄物として処分を請負った物を、従業員の一存だけで抜き取ってしまうと、「横領罪」になる可能性があります。

今後につきましては、従業員に対する教育、指導を改めて徹底し、また、施設内の監視カメラの増設、監視員の配置等を行い、二度とこのようなことを起こすことのないよう徹底して、引き続き真摯に業務を遂行する所存です。

本来なら市場に出回るはずがないファン垂涎のレア物をネットオークションに出品することは、横領犯としては自殺行為とも言える暴挙です。

しかし、自分の行動の結果を想像できない人だからこそ、破滅的ともいえる短絡的な行動に走る訳です。

「回転寿司店の醤油ペロペロ事件」に代表される飲食店での迷惑行為は、「過度な承認欲求」や「ウチとソトとの境界線の曖昧さ」によって引き起こされたものですが、「自分の行動の結果を想像できない」という点においては、「横領犯」のそれと何ら変わるところはありません。

よって、このような「自爆テロ」を脊髄反射的に行う人物に対して、「教育・指導」を行ったとしても、「行動の結果を想像する力の欠如」や「ウチとソトとの境界が曖昧、あるいはウチとソトが一体化している」ため、十分な効果を期待できないように思います。

もちろん、その他の一般的な判断能力を持つ人に対して、「醤油ペロペロ事件」や「刀剣乱舞流出事件」の後日譚を説くと、必要十分な啓発効果を期待できると思いますので、やった方が良いことは確かです。

「本当にその対策が必要な人にはうまく刺さらない」ことに留意する必要があるということです。

「監視カメラ」や「監視員」の設置については、一定の効果は望めるものの、「これだけあれば、あとは何もいらない」とはいかなさそうです。

カメラや監視員の死角に入り、物を抜き取ることも可能だからです。

「機密書類」並みのセキュリティー対策を取れば、かなりの確率で外部への流出を防ぐことができると思いますが、通常の産業廃棄物の仕分け作業において、そこまでのコストと手間を掛けてしまうと、採算が取れなくなると思われます。

実際のところ、外部に絶対に流出させたくない廃棄物については、処理業者だけに責任を取らせようとしても、うまくいかないことがよくあります。

排出事業者と処理業者の効果的な連携方法については、既にある程度の答えが出ていますので、改めて別の記事にまとめたいと考えています。

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