市川市のカキ殻投棄禁止条例に見る条例化の意義

取り上げるのが遅くなりましたが、カキ殻の不法投棄対策として、市川市が条例を制定するという興味深い報道がありました。

2023年2月8日付 千葉日報 「護岸を埋め尽くすカキ殻… 全国初、投棄禁止条例を制定へ 市川市、罰則も 江戸川放水路

 市川市は8日、江戸川放水路付近でカキなどの殻を捨てる行為を禁じる条例案を発表した。違反者に対する過料も盛り込んだ。15日開会の定例市議会に提出し、4月1日からの施行を目指す。市によると、同様の条例は全国でも例がないという。

 親水護岸が続く江戸川放水路は市民の憩いの場所として親しまれる一方、天然のカキの殻などの不法投棄が続発。2017年には子どもが殻でケガをして救急車で運ばれる事故も発生した。国や市などの関係機関が同年12月に約14トンの殻などを撤去し、投棄しないよう求める看板を設置。だがその後も投棄が続き、市は効果的な対策を検討していた。

 条例案は、行徳可動堰から首都高速湾岸線にかけての江戸川放水路約2・7キロの区域を対象に、カキなど貝の身を取り出し殻を投棄してはならないと明記。過料は猶予期間を経て10月1日から適用するとし、当面は5千円で運用する。

カキ殻を捨てる行為は言うまでもなく「不法投棄」で犯罪ですが、
不特定多数の人間が「サッと現れ、サッと去る」ゲリラ的に行われる不法投棄を、警察等の捜査機関が捕捉することは非常に困難です。

もちろん、条例で禁止したからといって、不法投棄者を一気に根絶することもできませんが、少なくとも、地元自治体の本気度を示すことはできます。

また、条例の施行時には、おそらく監視員を配置し、24時間の監視は無理としても、従来よりは厳しく監視することができると期待できますので、市の財政支出は増えますが、野放図な不法投棄はかなりの割合で減らせるように思います。

 市は職員のパトロールを強化し条例の周知を徹底。5千円の過料適用後も投棄が絶えない場合は、過料を5万円まで引き上げることができるとした。

最初から「5万円の過料」でも良いように思いましたが、カキ採取者の気づきや善意にまずは期待というところでしょうか。

いっそのこと、「カキ殻は置いて帰りたい」というニーズを満たしてあげられるように、
「ゴミ袋」を1枚500円程度で売り、カキ殻専用の回収ボックスに入れさせてはどうか?とも思いました。

ただ、その場合、監視員不在の早朝や夜間を狙った不法投棄が増える可能性がありますので、現実的な解決策とはなりそうもありません。

あるいは、中国人が来る前に、市民が一斉にカキを採取する祭りを定期的に行い、ついでに現場に落ちているゴミ拾いを行えば、一石二鳥になりそうです。

しかし、日本人の場合は、どうしても食品衛生の観点から、「野生の生カキを食べよう(加熱必須)!」とはならないのかもしれません。

生カキを食べて食あたりになる人も多いですしね。

ここで、なぜ中国人だけが喜々としてカキ採取に訪れるのか?という疑問が湧きました。

さすがは地元に密着したローカル紙です。

参考記事として掲載されている過去記事では、「カキを自由に採取できる理由」や「中国人が殺到している背景」等を具体的に追ってくれています。

2017年12月5日付 千葉日報 「河川敷にカキ殻100トン 中国人投棄、転倒でけがも 地元住民ら回収作業 市川の江戸川放水路

 回収作業をしたこの日も作業終了直後に早速、キャリーバッグを持ってカキを採りに来た中国人の姿が。父親と2人で埼玉県から電車で来たという中国・福建省出身の女性は「友達からカキが採れると聞いて来た。自宅で料理して食べる。揚げ物にすると美味しい」と話した。女性は回収作業の参加者から殻を河川敷に捨てないように注意され「殻は持って帰る」と約束した。

 河川を管理する国交省江戸川河川事務所によると、カキ殻は清掃の対象外のため、これまで放置されてきたのが実情。放水路は江戸川の水害を防ぐためにもともと陸地だったところを切り開いて川にした経緯があり、漁業権が設定されていないため、カキを採る行為自体は規制できない。カキの殻を捨てる行為は不法投棄にあたるが、取り締まりが難しいという。

なるほど。カキフライにして美味しくいただくわけですな。

かさばるカキ殻を含めて持ち帰る分には、市川市の条例でも禁止されていませんので、このような公共心を持った中国人だけに採取に来ていただきたいものです。

そもそもの話として、「日本人の公共心」と「中国人の公共心」とは、同じ単語でありながらも、意味合いや範囲がかなり異なるように思います。

しかし、日本においては、日本のルールに従うのが当然です。

市川市の条例は、「暗黙のルール」や「日本人の公共心」といった目に見えない決まりではなく、「過料」という現実的なペナルティを備えた「法規」として、市の姿勢を内外に示した点で、大きな意義があると思いました。

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