言い訳の新機軸
2025年7月11日付 NHK 「解体工事で出た産業廃棄物の処分 無許可業者に委託か 3人逮捕」
解体工事で出た産業廃棄物の処分を、許可のない業者に委託したなどとして、元請けの解体工事会社の部長ら3人が警視庁に逮捕されました。
事件としては、解体廃棄物の無許可業者への委託、そして不法投棄という割と典型的な不適正処理事案です。
斬新さに目をひかれたのが
調べに対し、(元請業者)は「工事が重なり、人手不足だったので委託してしまった」と容疑を認める一方、(無許可業者)は「あとで分別して処分する予定だったので、不法投棄したつもりはない」などと否認している
という言い訳。
人手不足はもはや常識と言えるほど、ありふれた状況となりましたが、人手不足を理由に不法投棄を正当化されてしまっては、今後同様の理由で犯罪が激増するのでしょうか?(苦笑)。
実際には、「人手が足りないから、不法投棄するしかねえ!」と、一足飛びに犯罪に飛びつくような慌て者は極めて少数と思います。
人手不足は事実としても、排出事業者自身が産業廃棄物処分場へ搬入する必要は無く、産業廃棄物処理業者か、産業廃棄物収集運搬業の許可を持った下請業者に運搬を委託すれば済む話だからです。
そのため、この言い訳は「頭を隠して尻隠さず」的な、部分最適にもなっていない幼稚な言い訳でしかありません。
不適正処理関係者の本音は「処分費が惜しいから、不適正処理をした」「処分費が無くなったので、不適正処理をした」のいずれかです。
人手不足といった社会構造の問題を挙げ、その問題のためにやむなく犯罪をするしかなかったという言い訳は、自社を加害者ではなく被害者の立場に置こうとする心理的な防御姿勢に他なりません。
言うまでもなく、廃棄物処理法第21条の3で「元請が建設廃棄物の排出事業者である」と位置づけられているため、いかなる理由があろうとも、元請には委託基準を遵守して産業廃棄物を処理委託し続けなければなりません。
「人手不足云々」とは逆に、よく使われる言い訳トップ3に入るものは「あとで分別して処分する予定だったので、不法投棄ではない」です。
一般人の常識としては、「あとで処分するならば、なんでわざわざ土に埋めて処分コストを増やす?」であり、「埋める気が満々やないか!」でしかありません。
また、下請には、元請の産業廃棄物を下請の敷地に持ち帰り、そこで保管や選別すること自体が認められていません。
廃棄物処理法第21条の3第3項に、産業廃棄物収集運搬業の許可を持たない下請を、「排出事業者とみなして」収集運搬業許可無しで運搬することを認める例外規定がありますが、
同条及び廃棄物処理法施行規則第18条の2で
建築物等の全部又は一部を解体する工事及び建築物等に係る新築又は増築の工事を除く
と定められていますので、解体工事の廃棄物は、この例外規定の対象に入りません。
NHKの報道では、
東京都から「不法投棄をしている業者がある」と通報があり、警視庁が捜査を進めていました。
とありますので、東京都と警視庁の間では、かなりスムーズに連携が図られているようです。
最後に、上記のNHKの報道画面では、不法投棄されていた産業廃棄物の実例として、下記の映像が紹介されていました。
不法投棄物のサンプリングが奇跡的だったのか、これが東京都ではなく「奈良市内で出土」と表記されていたら、「木簡」や「銅銭」等の文化財に見えなくもないと思いました(笑)。
« 廃棄物処理法施行規則改正(令和7年4月22日)Vol.3「電子マニフェスト使用時の再生に関する報告」(中編)
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2025年7月14日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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