ブラックリスト

「ブラックリスト」というと、大部分の人に取ってなじみ深いのは、厚生労働省が2017年5月10日付で公表した「労働基準関係法令違反に係る公表事案」、いわゆる「ブラック企業リスト」だと思います。

電通の他、比較的有名な企業から、どうみても個人事業としか思えない便利屋まで、対象を幅広く網羅したブラックリストとなっています。

今回の公表対象は332社ですが、リストは今後も更新を続けられるとのこと。

リストに掲載される期間は、「送検事案は、ホームページに掲載を続ける必要性がなくなったと認められる
場合」、「都道府県労働局長指導事案は、是正及び改善が確認された場合」を除き、1年間になるそうです。

給料や残業手当の未払い等も当然公表の対象となっていますが、件数としては、労働安全衛生法違反が最も多くなっています。

中には、ある森林組合が、
「伐倒の際に立木に絡んだつるを取り除くことなく伐木作業をさせた」という理由で書類送検されたため、
公表されている例もありました。

事故が起こっていなくても書類送検される、というのはなかなか大きなリスクと言えますが、多くの事業者は、自社の操業に伴う安全衛生管理基準を把握していないようです。

便利屋や森林組合がブラックリストに載ったとしても、実質的なダメージはほとんど無さそうですが、上場企業の場合は、若干(?)の痛手になるものと思われます。

廃棄物処理法違反についても、このように(特に排出事業者を)ブラックリスト化し、一定期間公表するようにすると、リスクとしての認識が格段に進展するだろうと思います。

問題は、「廃棄物処理法違反で書類送検される企業の数」ですが、安全衛生法違反とは異なり、マニフェストの不交付程度では、書類送検すらされていないのが現実です。

労働基準監督官の場合は、逮捕権まで有する司法警察官でもありますので、警察の手を煩わせることなく、自ら告発できるため、書類送検数が半年で300件を超えるのも当然なのかもしれません。

廃棄物処理法を所管する都道府県や政令市の職員の場合は、司法警察官の資格を持たないことがほとんどですし、仮に持っていたとしても、検察が納得するレベルで証拠を収集できる人は皆無と言って良いでしょう。

専門職である労働基準監督官とは異なり、ジョブローテーションの一環でたまたま廃棄物の規制をやっているという人がほぼ全員だからです。

廃棄物の規制担当を専門職として資格化するのも一つの案ですが、
それはそれで、「行政コストの増大」や「行政対応の硬直化」といったデメリットがすぐに現れそうです。

論点がずれたので出発点に戻りますが、書類送検されたことを基準とするのが難しいのであれば、他にどんな方法が考えられるでしょうか?

「委託先の処理業者が行政処分を受けた場合に、委託者も公表の対象にする」ことを思いつきましたが、処理業者独自の違反も多々ありますので、それでは排出事業者に酷すぎます。

妥当なラインとしては、
「措置命令や改善命令の対象になった事業者」
「委託基準違反をした排出事業者」等を全国的に(短期間でも)公開すれば、廃棄物処理法のリスクに関する認知が一気に進むものと思います。

ただ、それを実現する際に大きな制約となりそうなのは(特に「委託基準違反」の場合)、
あまりにも数が多すぎて個別の企業の名称が目立たないという事態になることが容易に想像できることです。

おあとがよろしくないようで・・・

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