Too Big To Fail(大きすぎてつぶせない)?

2ヶ月前の行政処分ですので、今取り上げるのは遅きに失した感がありますが、「行政処分の妥当性」を考えるためには、格好の素材といえる実例ですので、今さらですがご紹介します。

2ヶ月前の記事であるためか、はたまた別の事情によるためかはわかりませんが、毎日新聞のWEB版の記事リンクが削除されているため、保存していたテキスト全文をそのまま転載します。

2017年3月28日付 毎日新聞 「麻生鉱山産廃書類を偽装 30日間業務停止処分 北九州市 /福岡」

 北九州市は27日、麻生グループの麻生鉱山(飯塚市)が自社工場で処理するとの契約で医療機関から受託した産業廃棄物の処理に不正があったとして29日から30日間の業務停止処分にすると決定した。産業廃棄物が適正に処理されたかどうかを確認する管理票(マニフェスト)を偽装して山口県の処理業者に再委託していたという。

 麻生鉱山は自社が所有する医療廃棄物リサイクル工場「エコノベイト響」(北九州市)で産業廃棄物の処理を受け入れている。市によると、少なくとも2011年8月から16年5月の間、医療機関から受け入れた医療廃棄物を、再委託に必要な手続きをせずに、同じ麻生グループの麻生飯塚病院(飯塚市)の廃棄物として山口県萩市の産廃処理業者に持ち込んだ。この問題を巡っては、熊本県合志市の市民団体代表の刑事告発を受け、福岡県警も廃棄物処理法違反容疑で捜査している。

北九州市のサイトでは、行政処分時の報道発表資料を見つけられませんでしたが、行政処分一覧の中で、概要が公表されています。

廃掃法第14条の4第16項ただし書の規定に基づく再委託の手続を行わずに他社に再委託した。
廃掃法第12条の4第3項の規定に違反して、処分を終了していないにもかかわらず、当該処分が終了したとして排出事業者に産業廃棄物管理票の写しを送付した。

「再委託禁止違反」と「マニフェストの虚偽記載」に対して、「事業の全部停止30日間」という処分になっています。

ここで問題となるのは、「再委託禁止違反」に対して、「事業の全部停止30日間」が妥当なのかどうかです。

法的な拘束力を持たない通知でしかありませんが、環境省が平成23年3月15日付で発出した「環廃産発第110310002号『廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条の3等に係る法定受託事務に関する処理基準について』」
によると、産業廃棄物処理業者が再委託をした場合は、「許可取消が相当」と例示されています。

先述したとおり、この通知には法的な拘束力がありませんので、地方自治体によって行政処分内容に違いが出ること自体はあり得ます。

「たった一度の再委託で許可取消をするのは忍びない」と考える自治体があってもおかしくはありません。

しかしながら、新聞報道では、排出事業者に無断で再委託していた期間が少なくとも約5年と書かれていますので、再委託は一過性のものではなく、常態化していた様子がうかがえます。

産業廃棄物処理業者である以上、「再委託が違法とは知らなかった」という言い訳は通用しません。

結局、北九州市は、マニフェストの虚偽記載のみに着目し、「事業の全部停止30日間」を選択したものと思われます。

「Too Big To Fail(大きすぎてつぶせない)」だったのか?

それとも、最近流行語となった“忖度”があったのでしょうか?

真相は闇の中(?)ですが、いずれのメディアや市民団体も抗議の声を上げないところに、また疑問符が付きました。

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