最新情報

  • 2024年3月18日 · · · 再資源化事業者へのバフがキタァー「再資源化事業高度化法案」
  • 2024年3月6日 · · · 最終かつ究極の解決方法
  • 2024年2月26日 · · · 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の返送期限
  • 2024年2月13日 · · · 技術革新に期待
  • 2024年2月5日 · · · 「無い」ことはなかったはず
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    「個人の認識の問題」では済まない

    新年早々、今年は能登半島で大地震が発生しました。

    私も、2018年の大阪北部地震発生の際にはガスや水道の供給が止まるという体験をしましたので、真冬に被災した方が抱えているであろう不安を考えると、身につまされる思いがいたします。

    被災地での人命救助と迅速な復旧が進むことをお祈りしております。

    今年は諸行無常を感じる機会が増えそうな予感を持っておりますが、2024年最初にご紹介するニュースもそんな予兆の一つかもしれません。
    ただし、報道自体は昨年末のものとなりますが。

    2023年12月28日付福井新聞 「福井県大野市職員3人を略式起訴、罰金命令…業務中に出た刈草300kgを荒島岳に不法投棄

     福井県大野市建設整備課の男性職員3人が、市の業務で出た刈草を市内の山中に不法投棄した事件で、大野区検は12月27日までに廃棄物処理法違反(不法投棄)の罪で3人を略式起訴し、大野簡裁はそれぞれに罰金20万円の略式命令を出した。略式起訴は5日付、略式命令は19日付。市は27日、3人を減給10分の1(2カ月)の懲戒処分とした。

     3人の起訴内容は、昨年9月1日、市の清掃作業で出た刈草など約300キロを同市蕨生の荒島岳の山中に捨てたとされる。職員とともに同法違反の疑いで書類送検された法人としての市については、福井地検が12月5日に不起訴とした。

    結果としては、大野市役所は不起訴処分で、実際に不法投棄を実行した3人の職員のみが罰金刑の対象となりました。

    当ブログ 2023年2月17日付記事 「がんばれ大野城、もとい大野市」で既に指摘したところですが、捨てた物が「刈草」でしたので、犯罪を行っているという自覚は皆無だったものと思われます。

    もちろん、不法投棄は重大な犯罪であるため、犯意が無かったからと言って免責されることはありませんが、公務の一環で生じたゴミの処分が職員の裁量任せになっていたことは、使用者である大野市役所の重大な落ち度と言わざるを得ません。

    すなわち、「公務の過程で発生する廃棄物の処分方法を定めていなかったこと」が第一の落ち度です。

    刈草は、産業廃棄物ではなく一般廃棄物でしかありませんが、本来なら、地方自治体として一般廃棄物の処分施設を有する大野市役所は、その施設で刈草を容易に処分可能でした。

    しかるに、

    市の聞き取りに対し、職員3人は「泥のついた刈り草が焼却場で受け入れてもらえず、安易に山に捨ててもいいだろうと考えてしまった」などと話している

    ※出典 2023年2月16日付 NHK「廃棄物処理法違反の疑い 大野市職員3人を書類送検
    とあるように、

    本来なら、同じ市役所の関係者同士の話し合いで解決できた問題であったにもかかわらず、「市役所内部で一般廃棄物の処分方法について調整を行わなかったこと」が第二の落ち度となります。

    この問題を両方とも解決しないことには、同じような犯罪がいずれ必ず起きることになります。

    「服務規律の確保や法令順守の徹底」という、精神論的な対策だけでは不十分だと思われます。

    廃棄物の処分方法を個人の良識任せにしないことが肝要です。

    大野市には、今回の不祥事を契機として、廃棄物処理に関するルールを明確にし、組織全体でそれを共有する仕組みを作っていただくことを期待しています。

    もっとも、上述した二つの落ち度は、渦中の大野市役所のみならず、その他の公的サービスに関わる組織にも共通している傾向だと思います。

    「公的サービスに関わる組織」には、「市区町村」のみならず、「公共インフラ(河川・道路・公園等)の管理者」も含まれてきますので、実際には影響がかなり広範囲に及びます。

    廃棄物処理法に関する実務では、犯意が無かったとしても、重大な刑罰の対象となる可能性がありますので、今回の報道を他人事ではなく、他山の石として我が身を省みる機会としていただければ幸いです。

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    2024年1月4日 | コメント/トラックバック(2) |

    カテゴリー:news

    自爆型不法投棄

    従業員の、従業員による、従業員のための不法投棄という、極めて珍しい自爆型不法投棄事件です。

    2023年12月16日付 KSB 「工場から回収した廃油を配水管に投棄 同じ会社に勤める男2人を逮捕 岡山

    工場などから回収した廃油を瀬戸内市の店舗の排水管に投棄した疑いで、廃棄物の回収などをしている会社に勤める男(64)と、同じ会社に勤める男(32)が廃棄物処理法違反の疑いで16日逮捕されました。

    警察によりますと2人は12月15日の午前7時半ごろ、産業廃棄物の廃油約220リットルを瀬戸内市の飲食店の敷地内にある排水管に投棄した疑いが持たれています。廃油は瀬戸内市の工場などから回収したもので、勤務する会社のバキュームカーを使って排水管に流したとみられています。

    「工場で回収した廃油」を「飲食店の敷地内の排水管に不法投棄」とは、聞いたことが無いレベルの荒っぽい不法投棄です。

    通常、「飲食店の敷地」とは、リゾートホテルのレストランでもない限り、「公道に面したそれほど広くない土地」だと思いますが、そんな目立つ場所でバキュームカーのホースで排水とは、発覚することをまったく恐れていない大胆不敵さです。

    「2人が過去にも投棄したと話している」とのことですので、方々で同様の不法投棄を実行していた可能性まであります。

    個人的に首をかしげざるを得なかった部分は

    警察の調べに対し2人は容疑を認め、動機について「会社で決められている廃棄物の処理施設に搬送するのが面倒だった」などと話しています。

    たしかに、「中間処理業者に運ぶのが面倒」だった可能性はあったと思いますが、
    従業員という立場で、不法投棄で運搬の効率化(?)を図るメリットがまったくありません。

    働く時間にかかわらず、その日の朝に日給を全額支払いという太っ腹な支給システムでも採用していない限り、「車を運転するのが面倒だから捨ててしまえ」というインセンティブは生じないからです。

    ひょっとすると、「会社に無駄な労働時間分の給料を支払わせるのが申し訳なさ過ぎる~」という、資本家思いの気の良い労働者だったのか?

    いずれにせよ、収集運搬業者の立場であったならば、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の回付や、排出事業者への運搬終了日の報告が必須ですので、それらの事務処理をどうこなしていたのかも疑問です。

    もしも、排出の段階から、排出事業者が産業廃棄物管理票を交付せず、委託契約書すら締結していなかったのであれば、排出事業者は廃棄物処理法第19条の5に基づく措置命令の対象になります。

    このように考えると、
    「排出事業者」「収集運搬業者(会社)」「収集運搬業者の従業員」の三者全てに知識や責任の欠如がない限り起こりえない、奇跡的な犯罪だったように思えます。

    問題は、現実の商取引現場においては、これが奇跡的瞬間ではなく、日常茶飯事であることの可能性の方が高いことです。

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    2023年12月19日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和4年度)

    2023年12月8日に、環境省から「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和4年度)について」が発表されました。

    環境省の発表内容によると、

    (1) 令和4年度に新たに判明した不法投棄事案
     ・不法投棄件数  134件    (前年度107件)    [+27件]
     ・不法投棄量   4.9万トン  (前年度2.2万トン)   [+2.7万トン]

    (2) 令和4年度に新たに判明した不適正処理事案
     ・不適正処理件数 107件    (前年度131件)    [-24件]
     ・不適正処理量  2.6万トン  (前年度10.9万トン)   [-8.3万トン]

    (3)令和4年度末における不法投棄等の残存事案
     ・残存件数    2,855件   (前年度2,822件)    [+33件]
     ・残存量     1013.5万トン(前年度1547.1万トン)  [-533.6万トン]

    でした。

    不法投棄の件数と量ともに、前年度よりも増加しています。

    本統計は

    1件あたりの投棄量が10t以上の事案(ただし、特別管理産業廃棄物を含む事案は全事案)を集計対象

    としているため、日々報道されている「10トン未満の不法投棄」の存在を考慮すると、体感としては、不法投棄事件が増えたように思えます。

    令和3年度の統計を紹介した際にも書きましたが、
    私が実際に不法投棄対策に携わっていた2000年代初頭以前の状況と比べると、近年の大規模不法投棄自体は激減しています。

    私が産廃行政を初めて体験した平成13年度の不法投棄件数を見ると「1,150件」とあります。

    数字の大きさだけを見ると、平成13年当時は無法状態であったかのような印象を受けてしまいますが、決して日本の治安が悪かったわけではありません(笑)。

    今振り返ると、2001年当時の世相としては、現在よりも不法投棄に対する罪悪感が乏しく、法規制にも抜け穴が多かったため、「不適正保管」が「大規模不法投棄事案」へとすぐに悪化した記憶があります。

    このように、20年前の最悪の状況とはかなり異なる様相を呈している昨今ですが、「前年度比では件数と量ともに増加している」という不気味な状況を考えると、これまで取り組まれてきた数々の不法投棄対策の効果を検証し、現代の社会情勢に合わせた新しい対策を取り入れる必要がありそうです。

    令和4年度も、「投棄件数」の約半分は「排出事業者」が実行者でした。

    「許可業者」による不法投棄はたったの2件しかありませんでしたが、その2件だけで3,425トンと、1件あたり約1,700トンという大規模な不法投棄量となっています。

    不法投棄された産業廃棄物の内訳としては、令和4年度は全体の77.9%が建設廃棄物でした。

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    2023年12月11日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:統計・資料

    手にした武器を使いこなす責任

    2023年11月20日付 NHK 「産業廃棄物の無許可埋め立て 業者と稲敷市に賠償命じる裁定

    茨城県稲敷市の寺の所有地に業者が無許可で産業廃棄物を埋め立て市はこれを阻止しなかったとして、寺や周辺の住民が損害賠償を求めて国の公害等調整委員会に裁定を申し立て、委員会が20日までに業者に加えて市の責任を認めて賠償を命じる裁定を出したことがわかりました。

    (中略)

    委員会は、20日までに業者の責任を認めるとともに、稲敷市についても無許可の埋め立てを認識できる状況だったとして、違法に権限を行使しなかったなどという判断を示しました。
    そのうえで、業者と市が共同で2000万円余りを寺や住民に支払うよう命じる裁定を出しました。

    稲敷市は、盛り土や土砂の埋立を規制するために市独自の「稲敷市土砂等による土地の埋立て等の規制に関する条例」を制定していました。

    稲敷市ホームページ 「土地の埋立てには許可が必要です」によると、

      • 5千平方メートル未満の事業区域面積で行うすべての「埋立て,盛土,堆積及び一時堆積を行う行為(市条例第2条第4号)」を許可制にし
      • 事業区域の境界線から「100メートル以内の土地所有者」と「300メートル以内の居住者」から同意書を取得させる
      • 無許可で事業を行った場合は、「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する

    という、造成事業を行いたい事業者にとってはかなり厳しい手続きを義務づけています。

    近隣関係者からの同意書取得を義務づけているところが最大の関門と言えます。

    2023年11月20日付 茨城新聞 「産廃不法投棄で環境破壊 茨城・稲敷市に責任 市と業者に2000万円賠償命じる 公調委裁定」によると

    2015年10月、同県美浦村の埋め立て業者が同地区の山林に土砂を埋め立てる許可を市に申請。同11月、市は廃棄物を持ち込まないことを条件に許可を出し、埋め立てが進められた。16年3~6月ごろ、許可のない区域の山林や共同墓地でも埋め立てが行われた。

    とありますので、寺や近隣住民の同意無く、土砂の埋立が行われたようです。

    また、再び茨城新聞の報道によると、

    裁定では、建設汚泥処理物で「基準値を超えるフッ素や強いアルカリ性による土壌汚染が生じている」と認定。市については、職員が市条例に基づき産廃物かを検討するのを怠り、許可したと結論付けた。

    とありますので、純然たる土砂ではなく、廃棄物(生コンか?)が混入されていた疑いがあります。

    産業廃棄物の混入が事実であるならば、廃棄物処理法に基づく茨城県の対応となるべきところですが、今回の裁定では、「稲敷市」と「事業者」の責任だけが俎上に上ったものと思われます。

    裏を返すと、稲敷市が独自条例を制定せず、土砂の埋立規制を行っていなければ、稲敷市が裁定対象の当事者に上がることはなかったわけですから、
    今回の裁定では、「独自条例に取組む市町村自身の本気度」が問われたとも言えます。

    上述したとおり、独自条例に基づく「非常に強力な武器」を与えられた地方自治体には、その武器を「抜かずの宝刀」ではなく、「強力な武器として使いこなす責任」も課されている、と考えるべきなのかもしれません。

    もっとも、2023年11月25日付 東京新聞 「稲敷の山林に産廃不法投棄 市、公調委裁定に不服 提訴検討」では、

    市は賠償債務の不存在の確認を求め、地裁龍ケ崎支部に提訴する方針。市は、許可地以外に埋め立てた業者に「撤去命令を出し、刑事告発している」などと、裁定の内容に反論している。

    という稲敷市の反論が示されています。

    実際のところ、行政機関が取れる法的手段としては、「撤去命令」と「刑事告発」が関の山と言えますので、少なくとも、法的手段に関しては不作為だったわけではなさそうです。

    独自条例の制定により、地方自治体には強力な権限を付与されることになりますが、
    条例制定後に、法令に基づく規制限界の中で最大限の効果を発揮すべく、迅速、かつ執拗な(?)取組みを続けられるかどうかで、地方自治体への評価が変わる時代となったようです。

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    2023年11月29日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    寝具各社がマットレスのリサイクル推進を加速中

    当ブログ 2023年10月16日付記事 「数年先の地方自治を象徴する風景」では、一般廃棄物として排出されるスプリングマットレスの処理の難しさについて触れたところですが、

    2023年11月11日付日本経済新聞の「マットレス解体しやすく 寝具各社、リサイクル促進」では、寝具各社が解体しやすいマットレスの開発に取組んでいる様子が報じられています。

    有料会員限定公開の記事のようですので記事の転載は控えますが、
    個人的には、フランスベッド社の「ペンチで切断可能なスプリングに改良」という報道に心が動かされました。

    どんな改良なのかを想像していただけるように、ここだけ日本経済新聞の記事を転載します。

    フランスベッドは容易に解体できる構造にすることで、分別・リサイクルしやすくしたマットレス「MORELIY N(モアリーエヌ)」を開発した。解体するときはマットレスの縁のパイピング部分を取り外し、表面の布地とクッション部分をはがすとスプリングの層にたどり着く。スプリングを持ち上げて、スプリングの周囲と下部にあるクッション部分を外せば、裏地だけが残る。

    ホームセンターなどで売っているペンチを使って、スプリングを持ち運びやすい大きさに切断すれば解体が完了する。クッション部分をはがす際に少し力が必要だが、一般的な男性であれば3分程度で解体が可能だ。

    「ペンチでプチプチと地道にスプリングを切断」という箇所に、DIY魂(?)が刺激されました。

    「切断の際に、スプリングで手を切ったりしないのかな?」と少しだけ心配になりましたが、日本経済新聞のサイトには、フランスベッド社員と思しきスーツを着た男性が手袋着用でスプリングを切断している画像が掲載されていますので、防刃性の高い手袋ならば安全に作業できるのかもしれません。

    もっとも、我が家にはスプリングマットレスが存在しませんので、DIY精神を発揮する機会がありませんが、市町村から粗大ゴミの処分委託を受け、あるいは産業廃棄物積替保管場所でマットレスの解体作業を行う企業にとっては、解体作業効率が大幅に短縮できそうです。

    こうした「簡易な分解」を可能にする技術開発は、業界全体で取り入れていただきたいものです。

    シャンプーや洗剤等のメーカーが法人の垣根を越えて共同でリサイクルや簡易包装に関する技術開発に取組むという先例もありますので、他業界もそれに追随していただくことを期待しております。

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    2023年11月20日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    蛍光灯が2027年末で製造禁止に

    大手紙は有料会員しか記事全文を閲覧できないシステムなので、日刊スポーツの記事を引用します。

    2023年11月4日付 日刊スポーツ 「蛍光灯、27年末で製造禁止 水銀に関する水俣条約で合意 ボタン電池などは25年末

    水俣病の原因となった水銀を包括的に規制する「水銀に関する水俣条約」の第5回締約国会議が3日、スイス西部ジュネーブで閉幕し、直管蛍光灯の製造と輸出入を2027年末までに禁止することなどで合意した。25年末での製造・輸出入禁止が既に決まっている電球形蛍光灯と合わせ、全ての一般照明用蛍光灯の製造が終わることになる。

    発光ダイオード(LED)照明への切り替えが進んでいる日本は今回の協議を主導し、条約採択から10年の節目の会議で成果を出すことに貢献した。

    企業活動にはかなり大きな影響のある条約なのですが、それほど大きく報道されていません。

    一般市民からすると、従来型の蛍光管であろうと、LEDであろうと、「不燃ゴミ」として出すことに変わりはありませんので、それほど大きな関心を呼ばないのかもしれません。

    一番影響を受けそうなのは、「蛍光管等に特化した産業廃棄物処理施設を導入した産業廃棄物処分業者」となりそうです。

    ただし、あくまでも直管蛍光灯の「製造」と「輸出入」が2027年末で禁止されるだけであり、
    「販売」と「使用」は従来どおり可能なままとなります。

    したがって、直管蛍光灯の在庫が市中から完全に無くなり、直管蛍光灯の使用がゼロになるまでの間は、直管蛍光灯等の水銀使用機器の処分需要はなくなりません。

    ただし、

    日本照明工業会によると、日本メーカーで現在も蛍光灯を製造しているのは2社。

    と記事に書かれているとおり、国内の大手メーカーは既に蛍光灯の生産を終了しているところがほとんどです。

    「ブラウン管テレビ」という、昭和・平成初期の遺物と呼ぶべき廃棄物がいまだに一定量排出され続けていることを考えると、蛍光管の処分需要も製造中止後もしばらく続くことになるかもしれません。

    しかしながら、テレビとは異なり、蛍光管は圧倒的に製品としての寿命が短いため、案外、処分需要が消える日はそれほど遠い将来ではない可能性があります。

    これから、「在庫一斉処分セール」等で、市中の水銀使用照明機器の販売活動が加速していくと思われますので、2030年になるまでには市中から水銀使用照明機器の存在が消えるように思います。

    実際には、工場や大規模オフィス等では、LED照明へ既に切り替え済みの企業が多いですし、「これからも大事に大事に水銀使用照明機器を使い続けたい」という企業や市民の数はかなり少ないように思えます。

    そう考えると、水銀使用照明機器からLED照明への切り替えは益々加速するとともに、短期間で一挙に水銀使用照明機器の廃棄が増えると予測できますので、処分需要がなくなるXデーの到来はそれだけ早くなりそうです。

    需要の継続が望めない以上、短期間で一挙に増える処分依頼にどう対処すべきかが、経営上の大きな課題となります。

    もしも私がそうした処分企業の経営者なら、「一挙に増える依頼をこなすためにも、処分料金を値上げ」をします。

    水銀使用照明機器に特化した施設の場合、近い将来に「陳腐化」、あるいは「廃止」が視野に入ってくる以上、その事業の店じまいを考えた価格設定にせざるを得ないからです。

    または逆に、他の産業廃棄物の処分もセットで受けられるのであれば、水銀使用照明機器の処分費は少し安くする代わりに、全体的な売上増を目指すという手段を取ることも有りかと思います。

    条約という国際的な潮流の変化により、事業環境が大きく変わることになりますので、その変化の流れを自社にとって有利な方向に活用したいものです。

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    2023年11月6日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    Vol.8 「海図」の再生利用

    海の地形や水深等を記した「海図」は半永久的に使えるものと漠然と想像しておりましたが、どうやら素人考えだったようで、情報が変わるたびに更新されているそうです。

    船舶の安全な航行のために使用する地図ですから、正しい情報にアップデートしていくことは当然の話ですが、海上の開発スピード
    は、素人の私の想像を上回る早さで進んでいるようです。

    登山に不可欠な「地形図」の場合、一昔前ならば、大型書店等で2万5千分の一の縮尺地形図を購入することが一般的でしたが、最近では、あらかじめスマートフォンにダウンロードしておき、GPS情報に基づく踏破ルートや時間を自動的に記録するアプリを利用することが主流となっています。

    しかし、海の場合は、やはりインターネットを利用できない場所がほとんどであるため、今後も紙の海図が利用し続けられるものと思われます。

    そうなると、情報が古くなった古い海図は一斉に不用物となり続けるわけですが、
    横浜市で30年来その古い海図の再生利用に取り組み続けてきた企業に関する報道がありました。

    2023年10月27日付 産経新聞 「ロングセラー廃版海図グッズ、SDGsで脚光 企業向けの製品販売、売り上げの一部寄付

    廃版になった海図を使用した封筒などのロングセラー製品が、近年活発になっている企業の持続可能な開発目標(SDGs)に関する活動で取り入れられている。製造するのは「エクスポート」(横浜市中区)で、地形の変化などで使えなくなった海図を再利用して廃棄物削減に貢献できるだけでなく、地図の曲線などが生み出すデザイン性も好評だ。売り上げの一部は海洋保全関連の寄付に充てられており、港町の横浜らしい取り組みが脚光を浴びている。

    「みなとみらい桟橋」「東防波堤」…。地形や地名、灯台の位置、水深などが細かく書き込まれた厚めの紙がしっとりと手になじむ。封筒などの「廃版海図シリーズ」は販売開始から30年近いロングセラー商品となっている。

    船舶への備え付け義務がある海図は、地形や海岸の建造物などの情報が変化する中で改版が繰り返され、そのたびに大量の廃版が生まれる。廃版の再利用で産業廃棄物削減、紙資源の有効活用につなげる同社の製品はSDGsの考え方とも合致しており、同社は令和2年にSDGsに取り組む企業に向けて販売を始めた。

    エクスポート社のホームページには、「海図扇子」から「海図レターセット」「海図封筒」「海図メモブック」等々、海図を使用したほぼ一品物の商品が掲載されています。

    個人的には「海図ブックカバー」が格好良いと思いました。

    単に海図を裁断するだけではなく、部材ごとに最適な使用場面を工夫し、手間暇かけて加工をしている気配が伝わってきます。

    廃版海図が出ると、営業担当者が枚数1~2千枚、重さ数百キロの海図を車で受け取りに行く。製造過程で機械に引っ掛かるものは手作業で省き、切れ端は小さなブックマーカーにするなどして使い切る。

    切れ端まで無駄にしないという心意気が素敵です。

    1千枚単位の回収ということは、個別の船舶ではなく、海図の印刷会社等から提供を受けているようですね。

    印刷会社、あるいは海図販売者による古い海図の下取回収等と絡めれば、各地の港湾近傍都市でも同様の取組みができるかもしれません。

    もっとも、形をまねること自体は簡単ですが、事業の根底に「情熱」と「責任感」が無ければ、30年以上も再生利用事業を継続させることはできないとも思いますが。

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    数年先の地方自治を象徴する風景

    沖縄の八重山毎日新聞に、気になる記事がありました。

    2023年10月14日付 八重山毎日新聞 「改正条例案を可決 「適正処理困難物」値上げへ

     石垣市議会(我喜屋隆次議長)の臨時会最終日が13日あり、本会議で市がスプリング入りベッドマットなど「適正処理困難物」の処理手数料を、2000―4000円に値上げする一部改正条例案が賛成多数で可決された。条例案は当局側が一部訂正し、施行日を当初のことし12月1日から来年4月1日に延ばした。

     「石垣市廃棄物の処理及び清掃に関する条例の一部を改正する条例」は、経済民生委員会が審査中だった。13日、当局が開始日付を訂正し再審査した。

     委員の大道夏代氏は県内11市の事例をあげ、那覇市を除き、スプリング入りマットレスやソファは1個当たり200~600円で処理しているとし、「石垣は現在の400円から10倍の4000円に引き上げようとしている。あまりに高い。果たしてごみの減量化につながるのか」と価格を下げるよう申し入れ、反対の意思を示した。

     環境課の担当者は、県外自治体の料金や民間で請け負う処理費用などを参考に算出したことを説明。

     (中略)

     採決の結果、改正条例案は与党・中立系13、野党系8の賛成多数で可決された。

    スプリング入りベッドマットは、「スプリング等を安全に処分できるレベルまで分別すること」が非常に困難であるため、「適正処理困難物」と呼ばれています。

    単純に埋立てるだけであれば、分別の手間は掛かりませんが、それだけ埋立容量を圧迫することになるため、離島においては、そのような杜撰な方法で処分することはほぼ不可能です。

    それゆえに、島内で主に人手で分解するか、島外に持ち出して分解してもらうかの二択となりますが、いずれの場合でも、廃棄物処分費はかなり高額となります。

    単純にコスト面だけで考えると、島外に持ち出す場合は、

    スプリング入りマットレスやソファは1個当たり200~600円で処理

    は不可能であり、石垣市が想定する「4千円」でも足らないかもしれません。

    言うまでもなく、「本当のコスト」と「住民が負担する処理費用」の差額は、行政が負担しています。

    この費用負担の構造自体は将来においても維持されていくはずですが、石垣市で起こりつつある問題は、「地方自治体が、これまでと同様の(高割合の)コスト負担に耐えられなくなってきた」ことの現れではないでしょうか?

    それを前提とするならば、インフラサービス及びインフラ整備と分類できるすべての地方自治体の行政サービスにおいて、今後同様の傾向が年々強まるものと予測できます。

    実際のところ、一昔前までならば、道路の舗装に陥没が放置されることはほとんどありませんでしたが、近年では、徐々に道路整備の間隔が長くなり、場所によっては、陥没やひび割れが生じてもそのまま放置されているケースが増えているように思います。

    そうなった理由は、これも言わずもがなかもしれませんが、「少子高齢化に伴う人口減少と、インフラサービスや整備に割く予算の減少」にありそうです。

    2012年に高速道路のトンネル天井が落盤した事故がありましたが、2023年現在では、道路のみならず、橋脚等のインフラ設備の劣化が一斉に進んでいることも周知の事実です。

    「ベッドマットレスの処分費に4千円」という金額は、市民感覚からすると、大きな痛みを伴う出費であることは事実ですが、日本、特に地方自治体が置かれた状況から考えると、全国どこの地方においても、今後は行政サービスの受益者負担費用の高額化が進むように思えます。

    もちろん、その痛みをできるだけ小さく低減させることが政治の役割ではあるのですが、これまでのように「住民の痛みはゼロ」とできる財源が無い以上、我々住民側もある程度の負担増を覚悟しておく必要がありますね。

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    2023年10月16日 | コメント/トラックバック(0) |

    カテゴリー:news

    「月刊総務」に記事を掲載いただきました

    現在、月刊連載を2本抱えていますが、いずれもクローズの媒体ですので、ご覧になったことがある方はごく少数だと思います。

    そのうち1本は、WEBでも閲覧可能ですので、気合いを入れて検索していただければ、毎月更新される記事をご覧いただけるかもしれません。
    もう1本は会報誌に近い紙媒体ですが、公務員時代の実体験等を書き綴っており、事務局情報ではそこそこ好評のようです。事実ではなく思いやりの言葉かもしれませんが(笑)。

    月に2本の連載があると、原稿を納品した途端に次の〆切が近づいてくるというサイクルですので、常に〆切に追われている気がしております。

    そんな中、「月刊総務オンライン」編集部より、WEB媒体での産業廃棄物実務入門記事を執筆して欲しいというご依頼をいただき、その〆切が数ヶ月先の設定であったため、気軽に引き受けてしまいましたが、〆切がいくら先であろうとも、執筆し始めたのが〆切の2週間程前からでしたので、やはりいつもどおり執筆に苦労しました(苦笑)。

    〆切前になるたびに、夏休みの宿題に追われた小学生時代の気持ちになりますが、40年経ってもどうやら進歩していないようです。

    「総務担当者の方に廃棄物処理法の話を聞いてもらえるのだろうか?」という不安を最後まで抱きつつ、タイトルどおり初心者にすぐ実践いただけるように極力丁寧に解説をした記事を納品し、次の連載に頭を切り替え始めたところ

    意外にも、記事を公開した月はアクセスランキング2位という反響があったそうです。

    月刊総務オンライン 
    「自分の仕事には関係ない」って思っていませんか? 総務が最低限知っておくべき「廃棄物」の基礎
    ※全文を閲覧するためには、月刊総務プレミアムの有料会員登録が必要ですが、冒頭部分は誰でも閲覧可能です。

    予想外の反響に一番驚いたのは編集部だったと思いますが、その有料記事を月刊誌の「月刊総務」でもご紹介いただく運びとなり、昨日掲載誌を頂戴したところです。

    「人気が高い」と、ストレートに賞賛いただく機会はほぼ無いので、掲載誌を家宝としたいと思います。

    ちなみに、現在、月刊総務オンラインで公開予定の「処理委託手続きにおける具体的な注意点」の連載記事を執筆中ですので、月刊総務プレミアム会員の方々には新たな情報をお届けする予定です。

    月刊総務から紹介を頼まれたわけではありませんが、月刊総務プレミアムへの加入方法は、下記URLをご参照ください。
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    「痛さ」と「予防」の相関関係

    前回のブログ更新からまた1月近く空きました。

    今回は、9月18日未明から右足親指の付け根に激痛が発生し、そこから2週間ほど「痛風発作」に悩まされ、執筆をする気力が無かったためです。

    痛風発作自体は初めての経験でしたが、20年以上前から血液中の「尿酸値が高い」という指摘をずっと受けていましたので、驚きは無く、「とうとう来たか」という諦念しかありませんでした。

    記事を執筆する気力はありませんでしたが、相談2件(うち1件は訪問)、講演2件(すべてZoom)を受託しておりましたので、痛みに耐えながらなんとかその依頼をこなすことはできました。

    訪問相談の際、駐車場から社屋までのほんの少しの距離を歩くことが一番大変で、右足を引きずりつつ、一歩ずつ痛みをこらえながらの苦行となりました。

    2週間の間まともに歩けませんでしたので、10月に入ってから歩き始めると、右足を無意識にかばいながら歩くという癖がついたことに気がつきました。

    たったの2週間で、それまでの歩き方を忘れてしまっていたのです。

    お陰様で、最近は痛風発作の痛みがほぼ無くなったので、減量を兼ねて積極的に歩く距離を伸ばした結果、忘れていた正しい歩き方に戻ることができました。

    さて、長々と近況報告を続けてしまいましたが、ここから本日の本題となります。

    痛風発作の痛みに懲りて、遅ればせながら、出版されたばかりの「健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと」という新書を購入し、精読をしているところなのですが、

    冒頭の32pの

    京都大学のグループが調査したところによると、健康診断で「高血圧」だという結果が出たときに、「病院に行ってください」と伝えられた人のうち、どれぐらいの割合が病院を受診するのかというと、上の血圧が160mmHg以上ある人でさえ、1年以内の受診率は3割程度だったと報告されています。

    という記述が、自分の痛風症状とは無関係な部分の心に突き刺さりました。

    「あ、これって、廃棄物処理法の実務周辺でも同じ状況だ!」と、日頃から疑問に思っていた問題の答えがわかったような気がしました。

    「法定記載事項を網羅した産業廃棄物処理委託契約書と産業廃棄物管理票の運用は、排出事業者の最低限の義務ですよ」というお題目を繰り返し唱えても、その重要性を理解してくれる人の数がなかなか増えないことに長年心を痛めていたのです(笑)。

    もちろん、私のブログやメールマガジンの読者の方は、数少ないその理解者ばかりであることを確信しておりますが、世の中の関係者全員の数からすると、その割合は非常に小さいと言わざるを得ません。

    実際に、「報告徴収」や「逮捕」された場合は別で、皆様漏れなく真剣に取組み始めます。ただし、その熱意を数年後まで保持し続けられる企業はやはり少ないです。

    病気の場合、私のように「痛み」や「恐怖」を経験してから、初めて摂生に努め始める人が大多数かと思いますが、
    「廃棄物処理法違反」という、一般的な人からすると「存在するのかどうかもわからない痛み」の場合は、対処する必要性すら感じないことが多く、「わざわざ自分の仕事量を増やしてまで取組むべき課題ではない」としか思えないのが当然なのかもしれません。

    「リスク」と「予防の必要性」の両方を意識できる人ばかりであれば、私の事務所の電話はひっきりなしに鳴り続けるはずですが、もちろんそんな状況にはありません。

    自分自身の差し迫った健康問題であっても、「3割」の人しか改善行動を始めない現状を考えると、廃棄物処理法関連のリスクの場合は、「1割以下」の人にしか響かないと考えた方が良さそうです。

    上記の本には、尼崎市役所で長年職員の健康指導に携わってきた著者の野口緑さんが、「診断結果のリスクを正確に受け止めてもらうために行ってきた工夫」の数々が紹介されていますので、そのエッセンスを廃棄物管理実務にも応用できないかを検討したいと思っています。

    「後悔先に立たず」ですので、「既に自分の健康状態に懸念がある人」のみならず、「数値にちょっとだけ異常が見つかった」という若い人にもお薦めの一冊です。

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