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令和4年度廃家電の不法投棄等の状況について

2024年3月29日付で、環境省から「令和4年度廃家電の不法投棄等の状況について」の発表がありました。

■ 不法投棄等の状況
(1)不法投棄台数
 不法投棄された廃家電4品目の回収台数(以下「不法投棄回収台数」という。)のデータを取得している1,663市区町村における不法投棄回収台数をもとに、人口カバー率で割り戻して算出した全国の不法投棄回収台数(推計値)は、40,800台で、前年度と比較して減少しました。
(2)品目ごとの割合
 品目ごとの割合は、エアコンが2.0%、ブラウン管式テレビが25.4%、液晶・プラズマ式テレビが35.8%、電気冷蔵庫・電気冷凍庫が22.0%、電気洗濯機・衣類乾燥機が14.9%でした。

令和4年度の廃家電不法投棄推計回収台数は40,800台と、平成13年度の統計開始以降、最小の数値となりました。

近年の不法投棄回収台数の減少は目覚ましいものがありますが、2001年の家電リサイクル法施行以降20年が経過し、ようやく家電リサイクルのルールが社会全体に広く行き渡った成果かと思います。

もちろん、まだまだ4万台も不法投棄されているわけですので、ここで気を緩めることなく、不法投棄をさせない、許さない方針を堅持し続ける必要がありますが。

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2024年4月3日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:統計・資料

産業廃棄物の排出および処理状況(令和3年度分)

2024年3月29日付で、環境省から、産業廃棄物の排出及び処理状況(令和3年度実績)が発表されました。

産業廃棄物の排出・処理状況(令和3年度実績)
(1)全国の産業廃棄物の総排出量:前年度に比べ、約200万トン(約0.6%)増加。
   令和3年度総排出量 3億7,592万トン(前年度 3億7,382万トン)

(2)業種別排出量:上位業種は前年度と同様、上位5業種で総排出量の8割以上。

排出業種 排出量(排出割合) 前年度排出量(排出割合)
電気・ガス・熱供給・水道業 9,948万トン(26.5%) 9,932万トン(26.6%)
農業・林業 8,169万トン(21.7%) 8,237万トン(22.0%)
建設業 8,094万トン(21.5%) 7,821万トン(20.9%)
パルプ・紙・紙加工品製造業 2,775万トン(7.4%) 3,063万トン(8.2%)
鉄鋼業 2,313万トン(6.2%) 2,118万トン(5.7%)

(3)種類別排出量:前年度と同様、上位3品目で総排出量の8割以上。

廃棄物の種類 排出量(排出割合) 前年度排出量(排出割合)
汚泥 1億5,982万トン(42.5%) 1億6,365万トン(43.8%)
動物のふん尿 8,127万トン(21.6%) 8,186万トン(21.9%)
がれき類 6,250万トン(16.6%) 5,971万トン(16.0%)

(4)産業廃棄物の処理状況:前年度に比べ、最終処分量が約26万トン(約2.9%)減少。

処理区分 処理量(処理割合) 前年度処理量(処理割合)
再生利用量 2億372万トン(54.2%) 1億9,902万トン(53.2%)
減量化量 1億6,337万トン(43.5%) 1億6,571万トン(44.3%)
最終処分量 883万トン(2.3%) 909万トン(2.4%)

令和3年度は産業廃棄物の発生量が前年度よりも増加しました。

グラフでは十万トン単位で四捨五入されているためわかりにくいかと思いますが、最終処分量は、前年度より26万4千トン減少し、約883万トンとなりました。

最後に、日本全体での産業廃棄物処理フローをまとめておきます。

        産業廃棄物 375,917千トン
                |
                |
                |
       __________|_____________   
      ↓         ↓            ↓
   直接埋立する分   中間処理(焼却・    再生利用される分
             破砕他)される分
   4,461千トン 295,078千トン   76,378千トン
     (1.2%)     (78.5%)        (20.3%)
      |         |
      |         |
      |         ↓
      |     中間処理後に残るもの
      |     131,708千トン     
      |       (35.0%)
      |         |
      |         |
      |         |---→再生利用される分
      |         |    127,344千トン
      |         |      (33.9%)
      |         ↓
      |       埋め立てる分
      |       4,364千トン
      |        (1.2%)
      |         |
      |_________|
           |
           |
           ↓
      埋め立てられる分の合計
         8,825千トン
         (2.3%)

 ※各項目は、四捨五入してありますので、収支が合わない場合があります。

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2024年4月2日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:統計・資料

一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について

2024年3月28日付で、環境省から「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」が発表されました。

ごみの排出・処理状況
(1)ごみ排出の状況
ごみ総排出量 4,034万トン (前年度4,095万トン)[1.5%減]
1人1日当たりのごみ排出量 880グラム (前年度890グラム)[1.1%減]
家庭系ごみ排出量 2,275万トン (前年度2,339万トン)[2.7%減]
1人1日当たりの家庭系ごみ排出量 496グラム (前年度508グラム)[2.4%減]

(2)ごみ処理の状況
最終処分量 337万トン (前年度342万トン)[1.4%減]
減量処理率 99.1% (前年度99.1%)
直接埋立率 0.9% (前年度0.9%)
総資源化量 791万トン (前年度816万トン)[3.1%減]
リサイクル率 19.6% (前年度19.9%)

ごみ焼却施設の状況
(令和4年度末現在)
施設数 1,016施設 (前年度1,027施設)[1.1%減]
処理能力 174,646トン/日 (前年度175,715トン/日)
1施設当たりの処理能力 172トン/日 (前年度171トン/日)
余熱利用を行う施設数 730施設 (前年度729施設)
発電設備を有する施設数 404施設 (前年度396施設)(全体の39.8%)
総発電能力 2,208MW (前年度2,149MW)[2.8%増]
総発電電力量
(約262万世帯分の年間電力使用量に相当) 10,331GWh (前年度10,452GWh)[1.2%減]

最終処分場の状況
(令和4年度末現在)
残余容量 9,666万m3 (前年度9,845万m3)[1.8%減]
残余年数 23.4年 (前年度23.5年)

令和4年度は、前年度よりもごみ総排出量が1.5%減少しています。

今回の統計発表より、上掲グラフ中に「△1人1日当たりの家庭系ごみ排出量」というデータが追記されています。

昨年度以前は、このグラフ中に「1人1日当たりの家庭系ごみ排出量」のデータがありませんでしたので、住民1人1日あたりのごみ排出量の大まかな推移がわかりやすくなりました。

「事業系ごみ」と「生活系ごみ」の排出量の推移は、次のようになっています。

「生活系ごみ」は、長期的には減少傾向にあります。

逆に、「事業系ごみ」は、令和3年度以降、僅かではあるものの前年度よりも増加しています。

前年度よりも増えたとはいえ、令和4年度の事業系ごみ発生量は、新型コロナウイルスが流行する直前の令和元年度のそれと比べると、まだ108万トン少ない状態です。

はたして、事業系ごみの微増傾向は今後も続くのでしょうか?

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2024年4月1日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:統計・資料

第3回「第3条 基本方針」再資源化事業高度化法

(基本方針)

第3条 環境大臣は、資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する基本的方向
二 再資源化事業等の高度化のための次に掲げる措置の実施に関する基本的事項

イ 再資源化事業の効率的な実施のための措置
ロ 再資源化の生産性の向上のための措置
ハ 再資源化の実施の工程から排出される温室効果ガスの量の削減のための措置
三 処分を行う廃棄物の数量に占める再資源化を実施すべき量の割合に関する目標
四 前三号に掲げるもののほか、資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する重要事項
3 基本方針は、地球温暖化対策の推進に関する法律第8条第1項に規定する地球温暖化対策計画及び循環型社会形成推進基本法第15条第1項に規定する循環型社会形成推進基本計画と整合性のとれたものでなければならない。
4 環境大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。
5 環境大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

独断と偏見に基づく注釈

国として「再資源化事業高度化法」の施策方針で定めるべき内容を規定しています。

逐条解説と銘打っているため、一応条文としてはご紹介しておりますが、「環境省の関係部署」以外の人にとっては、実務的な重要性はありませんので、第3条は読み飛ばしていただいて大丈夫です。

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あなたは”紙”を信じますか?

「再資源化事業高度化法」の逐条解説に勤しんでいる最中ですが、非常に扇情的な報道を目にしましたので、ツッコミを入れておきます。

2024年3月21日付 TBS 「“胎盤”や“血液”を処理せず長年放置「感染性廃棄物」処理請け負う廃棄物処理会社「処理した」とウソの報告も「前代未聞の事態」に渦中の社長に直撃取材

見出しから、「胎盤」「血液」と、スプラッター映画の1シーンを彷彿とさせる描写です。

宮城県の産業廃棄物処理会社で、病院から出た胎盤や血液などの「感染性廃棄物」が長年処理されず、放置されていたことがJNNの取材で明らかになりました。廃棄物の処理過程を管理する「マニフェスト」を偽造し、「処理した」とウソの報告も。「前代未聞の事態」。対応に追われる病院は…。そして、記者の直撃取材に会社の社長は…。

簡単に事件の概要をまとめておくと、
「宮城県の特別管理産業廃棄物処分業者が、実際には処分が終了していないにもかかわらず、産業廃棄物管理票に「処分終了」と虚偽記載し続け、宮城県から業許可を取消された」となります。

「件の業者が空マニフェストを発行し、それを流通させた」という事情が無いのであれば、「マニフェストの偽造」という表現は不正確だと思われます。

記者の方は、一応宮城県の事件現場に取材に行ってはいるものの、廃棄物処理法の基礎的な知識を持たずに取材に入ってしまったようで、取材対象者のコメントを鵜呑みにしてしまっています。

その最たる例が、見出しにも入っている「前代未聞の事態」です。

大変残念なことではありますが、こうした産業廃棄物管理票の虚偽記載事件自体は非常にありふれたもので、決して「前代未聞の珍事」ではありません。

感染性廃棄物だけに限定しても、わざわざ報道されていないだけで、地方自治体が医療監査に乗り込めば、この手の違反はゴロゴロ発覚するはずです。

また、15年以上前の話になりますが、そこそこ有名だった感染性廃棄物処理業者が、注射針その他を外国に不正輸出していたことが発覚し、当時の業界内を震撼させた実例があります。

率直に申し上げて、不正輸出の場合、単なる虚偽記載よりもかなり悪質な法律違反だったと思います。

報道の中でもっとも違和感を持った部分は

宮城県内の病院 担当者
「こっちとしては、そんな急に言われて、そんなどうしたらいいのかっていう形で。数十年にわたり不正をしていた可能性があると聞いているので、それなのに数年おきに認可の更新の許可をしていたわけですから、行政側は。責任を病院側に押しつけているようで納得いかないというのが本音です

病院側の「我々は被害者である」という思いが伝わってくるコメントです。

行政が法律違反の兆候を見抜けたかどうかはさておき、
委託した産業廃棄物の処分が実際には完了していない以上、廃棄物処理法では、排出事業者である病院の責任が問われて当たり前です。

ひょっとすると、多くの排出事業者が、産業廃棄物管理票の発行自体を業者任せにしていたのかもしれません。

言うまでもなく、産業廃棄物管理票の発行(交付)は、排出事業者固有の義務であり、「処理業者任せにしていた」という言い訳が通用することはありません。

実際の虚偽記載の状況を示す画像が、TBSの報道では紹介されていました。

まず、「受領欄」に「業者名」と「処理済 滅菌」というスタンプ印が押されていますが、ここは、「運搬担当者個人」あるいは「処分担当者個人」が、「産業廃棄物を受け取りました」という事実を証明するためにサインや押印をする場所です。

※「運搬担当者」が「砂押 プラリ」という名前の方だったならば適法。

産業廃棄物の受取りと同時に記名押印する欄ですので、受け取った瞬間に「滅菌」することは物理的に不可能なのです。

こういう記載というか押印をする業者も業者ですが、そのおかしさに気付くことなく、紙切れを有り難く保存することしかしなかった排出事業者の重過失でもあります。

この状況下で、排出事業者として法的に取るべき対処法は、

「受領欄」に「処理済み」というスタンプ印が押された産業廃棄物管理票が返ってきた時点で、
即処理業者に「何ですか?これは~」と詰問し、
宮城県知事に、虚偽記載された旨の「措置内容報告書」を提出

でした。

ここは産業廃棄物管理票の法定記載事項ですので、おざなりにしてはいけない箇所です。

また、「運搬終了年月日」と「処分終了年月日」が空欄のように見えます。

ただし、これは画像撮影のアングル上の問題かもしれませんので、真偽のほどは、産業廃棄物管理票全体を写した画像を見ないことにはわかりません。

最後に、「滅菌」とあることから、件の処分業者の処理方法は「滅菌」だったと思われますが、
「滅菌」は、あくまでも「滅菌するだけ」ですので、滅菌後に廃棄物自体が消えて無くなるわけではありません。

そのため、中間処理(滅菌)後には、必ず「残さ」が残り、それを再び「焼却施設」等に運び、改めて減量化する処理が不可欠となります。

である以上、この病院が発生させた感染性廃棄物の処分は、「滅菌」で終わりではなく、「滅菌後の残さの最終処分場所」を明記した産業廃棄物管理票E票が返送されてこない限り、最終処分終了とはなりません。

病院と滅菌処理業者との契約においても、「滅菌処理後の残さの最終処分場所」が法定記載事項として書かれていたはずですし、書かれていなかったのであれば、排出事業者は委託基準違反で刑事罰の対象になります。

こうした産業廃棄物管理票の基本的な事項をまったく守っていなかったのであれば、委託者である病院は、排出事業者としての責任を果たしていなかったと言わざるを得ません。

自らの責任を把握していなかった病院と、踏み込みの甘すぎる報道をしたテレビ局の猛省を促したいと思います。

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2024年3月28日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:news

第2回「第2条 定義」再資源化事業高度化法

(定義)

第2条 この法律において「再資源化」とは、廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第2条第1項に規定する廃棄物をいう。以下同じ。)の全部又は一部を部品又は原材料その他製品の一部として利用することができる状態にすることをいう。
2 この法律において「再資源化事業等の高度化」とは、次の各号のいずれかに該当する措置を講ずることにより、再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出(地球温暖化対策の推進に関する法律第2条第4項に規定する温室効果ガスの排出をいう。第四号において同じ。)の量の削減の効果が増大することをいう。

一 物の製造、加工又は販売の事業を行う者の需要に応じた再資源化事業(再資源化のための廃棄物の収集、運搬及び処分(再生を含む。第11条第4項第五号ロ及びハ、第16条第3項第六号ロ及びハ、第20条第3項第六号ロ並びに第23条第一号及び第二号を除き、以下同じ。)の事業をいう。以下同じ。)の実施その他の再資源化事業の効率的な実施のための措置
二 廃棄物から有用なものを分離するための技術の向上その他の再資源化の生産性の向上のための措置
三 再資源化の実施の工程を効率化するための設備の導入その他の当該工程から排出される温室効果ガス(地球温暖化対策の推進に関する法律第2条第3項に規定する温室効果ガスをいう。以下同じ。)の量の削減のための措置
四 前三号に掲げるもののほか、再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出の量の削減に資する措置

独断と偏見に基づく注釈

第1項
「再資源化」を「廃棄物の全部又は一部を部品又は原材料その他製品の一部として利用することができる状態にすること」と定義しています。

廃棄物を、「部品」「原材料」「製品の一部」のいずれかとして利用できるように、「加工」や「選別」することが不可欠となります。

「法案の概要」では、

「ペットボトルの水平リサイクル」「ガラスと金属の完全リサイクル」「使用済み紙おむつリサイクル」の3つがその具体例として挙げられています。

第2項
「再資源化事業等の高度化」に該当する措置として、4種類の措置を限定列挙しています。

  1.  物の製造、加工又は販売の事業を行う者の需要に応じた再資源化事業(再資源化のための廃棄物の収集、運搬及び処分(再生を含む。第11条第4項第五号ロ及びハ、第16条第3項第六号ロ及びハ、第20条第3項第六号ロ並びに第23条第一号及び第二号を除き、以下同じ。)の事業をいう)の実施その他の再資源化事業の効率的な実施のための措置
  2. 廃棄物から有用なものを分離するための技術の向上その他の再資源化の生産性の向上のための措置
  3. 再資源化の実施の工程を効率化するための設備の導入その他の当該工程から排出される温室効果ガスの量の削減のための措置
  4. 前三号に掲げるもののほか、再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出の量の削減に資する措置

第一号の「同法第11条第4項第五号ロ及びハ」以降の条文は、再資源化事業高度化法の欠格要件に該当した場合の規定ですので、事業内容を読み解く上では読み飛ばしていただいて大丈夫です。

「物の製造、加工又は販売の事業を行う者の需要に応じた再資源化事業」とされていますので、第一号は、製造・加工・販売事業者の需要ありきの措置となりますね。

第二号以下では、そのような「需要」の制限がありませんので、リサイクラー主体の事業計画にも当てはまる条件と言えます。

第2条の定義を読む限り、「リサイクル」あるいは「温室効果ガス削減」を目的とした事業であれば、ほとんどすべてを俎上に載せらせそうな気もしますが、メリットが非常に大きな特例措置ですから、後の回で見ていくこととなる、実際の申請条件や審査基準は非常に厳しく制限されることになるはずです。

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第1回「第1条 目的」再資源化事業高度化法

2024年3月18日付「再資源化事業者へのバフがキタァー「再資源化事業高度化法案」」でご紹介したとおり、新しいリサイクル法律案が国会に提出されましたので、恒例の(?)「まだ可決されていないのに、独断と偏見に基づく逐条注釈」を始めたいと思います。

第一章 総則

(目的)

第1条 この法律は、効率的な再資源化の実施、再資源化の生産性の向上等による温室効果ガスの排出の量の削減の効果が高い資源循環の促進を図るため、再資源化のための廃棄物の収集、運搬及び処分の事業並びに再資源化の実施に用いられる技術及び設備の高度化を促進するための措置等を講ずることにより、環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

独断と偏見に基づく注釈

法律の制定目的が定義されています。

「温室効果ガスの排出の量の削減の効果が高い資源循環の促進を図るため」に、
「廃棄物の収集、運搬及び処分の事業並びに再資源化の実施に用いられる技術及び設備の高度化を促進」し、
「環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与」することが目的となっています。

「温室効果ガスの排出削減」「再資源化技術・設備の高度化を促進」「環境保全と国民経済の健全な発展に寄与」が本法案のキーワードとなりそうです。

第1条を読んだ個人的感想としては、国が率先して「技術・設備の高度化を促進」というそもそもの法律の目的に、150年前の明治維新政府が採った「中央集権」的な臭いを感じてしまいました。

国(環境省)にしてみれば、「地方分権推進の流れに逆行することになっても、中央集権でスピーディーに高度化を進める必要があるのだ!」という強い危機感があったのかもしれませんが。

「地方自治体を軽視した復古的中央集権策」なのか?

それとも、「世界的潮流に対応していくための喫緊の国策解決手段」なのか?

条文をつぶさに見ていくことで、その答えがわかるように思います。

全条文は53条になりますので、全53回の連載になる予定です。
しばらくお付き合いいただければ幸いです。

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再資源化事業者へのバフがキタァー「再資源化事業高度化法案」

2024年3月15日付で、環境省から「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案の閣議決定について」という発表がありました。

新しい法律案が閣議決定されたため、法律案がようやく国会に提出される運びとなりました。

「再生材の質と量の確保を通じて資源循環の産業競争力を強化することが重要」と、なるほど、それは確かにそのとおり。

でも問題は、その競争力を高めるために、どうやって「再資源化の取組を高度化するのか」よね?

「再資源化の促進(底上げ)」と「再資源化事業等の高度化の促進(引き上げ)」と、「促進」が2回も使われているので、ここに環境省の狙いがありそうだわ!

特に、「国が一括して認定を行う制度を創設」「許可の手続の特例」は、太字かつ赤字で強調されていることに要注目かも?

これまで、「プラスチック資源循環促進法」その他リサイクル関連の法律が制定される度に、「許可の手続きの特例」が設けられてきましたが、今回の「再資源化事業高度化法(案)」では、これまでの諸法の弱点をすべて解消し、「対象となる事業者にバフをかけるんや!」という環境省の並々ならぬ意欲が感じられます。

ここで、「バフってなんだ?」と疑問に思った方が多いかもしれませんので、簡単にご説明しておくと、
ゲーム界隈で使用されている「能力やステータス値アップをもたらす効果」を示す用語です。

もっと噛み砕いた言い方をすると、「バフ」によって、一瞬にして能力値や特定のステータス値が急激に上がるため、ゲーム攻略が急激に容易になります。

ちなみに、「バフ」の反対が「デバフ」となり、「デバフ」されると、一気に弱体化してしまいますので、ゲームプレイヤーにとっては死活問題になりかねない環境変化となります。

詳細は、これから制定される法律や施行令を見ていくことが当然必要ですが、「再資源化事業高度化法(案)」の段階で、再資源化事業を検討している事業者にとっては「バフ」であり、既存の産業廃棄物処理業者にとっては「デバフ」となり得る条文があります。

再資源化事業高度化法(案)
第18条(廃棄物処理法の特例) 認定高度分離・回収事業者は、廃棄物処理法第7条第6項又は第14条第6項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、認定高度分離・回収事業計画に従って行う再資源化に必要な行為(一般廃棄物又は産業廃棄物の処分に該当するものに限る。)を業として実施することができる。
2~4 (略)
5 第16条第2項第七号に掲げる事項が記載された高度分離・回収事業計画について同条第一項の認定を受けた認定高度分離・回収事業者は、廃棄物処理法第8条第1項又は第15条第1項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、認定高度分離・回収事業計画に記載された当該廃棄物処理施設を設置することができる。

これまでのリサイクル関連の法律では、「処理業許可」については、特別法の規定により、廃棄物処理法に基づく許可を不要とするものが多々ありましたが、「都道府県知事から廃棄物処理施設設置許可を取得すること」までは免除されていませんでした。

しかし、この「再資源化事業高度化法(案)」では、とうとう、第18条第5項で「廃棄物処理施設の設置許可も不要」となり、いよいよ、国(環境省)の認定一本で、あらゆる「業許可」と「施設設置許可」の取得不要となります。

近時、多くの地方において、主に最終処分場や焼却施設等の設置で地域住民と事業者間で紛争が生じ、事業化がまったく進まないという状況が起きています。

「再資源化事業高度化法」が成立し、国一本の認定だけで良いとなると、たとえ地域での紛争があったとしても、住民の意思や地方自治体の思惑とは無関係に、施設の設置と再資源化事業の操業が可能となります。

考えようによっては、これまで培われてきた国と地方の役割分担や信頼をご破算にしかねない、極めて中央集権的な法律とも言えます。

もちろん、「再資源化事業高度化法(案)」の対象となる「認定高度分離・回収事業者」は、「あまねく全ての産業廃棄物処理業者」ではなく、「再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出の量の削減の効果が増大する」ような事業を行う者だけとなりますが、既存の産業廃棄物処理業者や、現在紛争状態の事業者にとっては確実に“デバフ(=不利な戦いを強いられる)”となる要因となります。

バフを受けた認定事業者は、地元説明会や数度に渡る地方自治体との協議をすっ飛ばして、いきなり全国展開も可能。

かたや、認定の対象事業にあてはまらない既存業者は、これまでと同様に、地元住民との利害調整と地方自治体との協議が不可避となるからです。

なんだか、明治維新直後の中央集権国家樹立のための諸政策の再来のようにも見えます。

「政商」のような権力と結託する輩や、外国資本に食い荒らされないような対策が不可欠であると思います。

その一方で、「再資源化事業高度化法」の対象となる事業を始めよう、あるいは拡大しようと思っている既存企業にとっても、大きなチャンスになります。

海外資本や怪しい資本に浸食される前に、志のある国内資本企業が速やかに地保を固めるきっかけにしていただくことを望みます。

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最終かつ究極の解決方法

1997年に大阪府北部の豊能(とよの)・能勢(のせ)両町で発生した高濃度のダイオキシン類を含む焼却灰の後始末が、ようやく進むことになりそうです。

2024年3月4日付 NHK 「ダイオキシン廃棄物問題 豊能町に最終処分場つくり埋め立てへ

大阪・豊能町と能勢町で作る組合が管理するダイオキシンを含む廃棄物の処分をめぐる問題で、大阪・豊能町は町内に最終処分場をつくり廃棄物を埋め立てて処分する方針を固め今月(3月)から現地でボーリング調査を行うことを明らかにしました。

「豊能町内に焼却灰を埋めるためだけに管理型最終処分場を設置するのですか?そうなるとコストパフォーマンスが悪すぎるけど、町民の理解が得られるのだろうか?」と、部外者ながら勝手に心をざわめかしましたが、NHKの報道を読み進めると、

豊能町の上浦登 町長は4日の町議会で、仮置きしている場所近くにある老朽化した公共施設の再編工事にあわせて、地下に最終処分場もつくり埋め立てて処分する方針を明らかにしました。
組合によりますと、最終処分場は地下5メートルの深さにコンクリート製の構造物をつくりそのなかに廃棄物を入れて処理する計画で、来年3月までに完成させたいとしています。

とありますので、どうやら「遮断型最終処分場」を設置し、そこで焼却灰を永久に保管するという計画のようです。

過去の報道を検索すると、2021年1月25日付朝日新聞「最終処分場に地元反対 決着遠く 豊能ダイオキシン問題」で、

19年の豊能町長選で初当選し、現在は組合管理者を務める塩川恒敏氏は鉄筋コンクリートで仕切った遮断型最終処分場を造って処分する方針を示してきた。20年度組合予算にはボーリング調査費など計約2500万円を計上した。

と、2021年時点から遮断型処分場設置の構想が明らかにされていました。

遮断型最終処分場であれば、雨水が処分場内に浸透することはありませんので、廃棄物の管理手段としては最高の安全性能を期待できます。

その代わりに、焼却灰からダイオキシン類が消えたり、焼却灰自体が雲散霧消したりすることは有り得ませんので、文字どおり永久に保管(封じ込め)し続ける必要があります。

「遮断型最終処分場」は、廃棄物処理法における専門用語ですので、具体的なイメージが湧きにくい方は、
国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センターが公開している「循環・廃棄物の豆知識」の「遮断型最終処分場」を読んでみてください。

簡潔、かつ平易に要点を解説してくれていますので、遮断型最終処分場の概要がわかると思います。

さて、これから設置される予定の遮断型最終処分場は、まさに前世紀の負の遺産である「コンクリート固化された焼却灰」を封印し続ける場所となりますので、数十年後には「文化遺産」になっている可能性もあります。

上述したとおり、遮断型最終処分場はこれから永久にも等しい長期間の管理が必要となりますので、管理型最終処分場ほどではないにしても、それなりの管理コストが掛かります。

そこで、「記念館」や「記録センター」としても整備をし、見学者から入場料を徴収しつつ、遮断型最終処分場を教育や啓発の場としても活用してはどうでしょうか?

過去に起きた出来事を無かったことにはできませんが、現実を直視した上で、苦難から学んだ教訓を後世の人に伝えることには大きな意義があります。

「未来に向けてどのような記録や教訓が残せるか?」という視点に立つと、豊能町及び豊能町民の遮断型最終処分場を設置するという決断(もちろん、町民の総意というわけではないと思いますが)には、歴史的な偉業となる可能性を感じました。

遮断型最終処分場を「負の遺産」あるいは「負債」ではなく、何らかの「資産」として活用していただくことを期待しております。

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2024年3月6日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:news

産業廃棄物管理票(マニフェスト)の返送期限

基礎中の基礎のお話ですが、意外と誤解をしている方が多いため、詳細を解説したいと思います。

マニフェストの返送期限だって?
産廃管理検定3段(通信講座)の僕にとっては愚問。

答えは、「収集運搬終了後10日以内に、僕の手元にB2票が届かない場合は、即、収集運搬業者の違反」

よって、その収集運搬業者には始末書を提出してもらう必要があるね!

収集運搬終了後10日以内に排出事業者に必着ですと!?

あなたは「廃棄物処理法」の条文を読んだことが無いのですか?

それとも、「産廃管理検定(筆者注:架空の検定試験です)」の教科書にそう書かれていたのですか?

正しくは、

廃棄物処理法第12条の3 第3項
 産業廃棄物の運搬を受託した者(以下「運搬受託者」という。)は、当該運搬を終了したときは、第一項の規定により交付された管理票に環境省令で定める事項を記載し、環境省令で定める期間内に、管理票交付者に当該管理票の写しを送付しなければならない。この場合において、当該産業廃棄物について処分を委託された者があるときは、当該処分を委託された者に管理票を回付しなければならない。

(運搬受託者の管理票交付者への送付期限)
廃棄物処理法施行規則第8条の23
 法第12条の3第3項の環境省令で定める期間は、運搬を終了した日から10日とする。

とあるように、

「運搬終了後10日以内に写しを送付しなければならない」であり、「排出事業者に10日内に写しを到達させねばならない」ではありません。

つまり、収集運搬業者が運搬終了日から10日以内にB2票を送付していさえすれば、排出事業者に運搬終了日から11日後にB2票が到達したとしても、何の問題もありません。

「送付」と「到達」の定義について、
「『管理票の交付の日から90日以内』に、産業廃棄物管理票の写しの送付を受けない」場合に必要な「措置内容報告(廃棄物処理法第12条の3第8項)」と混同してしまっている人が多いように思えます。

「送付」と「写しの送付を受ける(=到達)」とは、意味するところが大きく異なりますので、法律の条文を正しく理解しておきたいところです。

また、そもそものお話として、
産業廃棄物管理票の写しの返送日がそんなに気になるのであれば、紙の産業廃棄物管理票ではなく、電子マニフェストを1日でも早く導入すべきだと思います。

電子マニフェストであれば、
・処理業者にとっては、産業廃棄物管理票写しを返送するための「郵送費」が不要
・オンラインで即時の処理終了報告が可能
・処理終了報告が所定の期間内に未完了の場合は、自動的にアラート通知が来る
等の大きなメリットがありますので、生産性を向上させるためにも、紙から電子へと切り替えをすべきだと考えます。

以上、今回は基礎中の基礎のテーマではありましたが、実務上頭を悩ませる方が非常に多い内容でもあるため、皆様の所属先においても改めて確認と活用の機会としていただければ幸いです。

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