廃品無料回収チラシの違法性を解剖してみる Vol.2
12/28 9:36 筆者追記
記事の全体をお読みいただけば、廃棄物のピックアップを推奨するものではないことをご理解いただけると思いますが、一部分のみを抜粋して解釈されてしまうと、誤解を生む可能性がありますので、追記しておきます。下記はあくまでも筆者の個人的見解であり、筆者の想定していない方法や場所で廃棄物のピックアップなどをした場合、窃盗罪や占有離脱物横領罪に問われる可能性がありますので、短絡的に解釈するのではなく、無料回収事業との対比として考えるための材料としていただければ幸いです。
昨日の、廃品無料回収チラシの違法性を解剖してみるの続きです。
昨日は、
廃棄物処理業の許可を持たずに、廃棄物を有料回収するのは違法。
無料であったとしても、廃棄物の拠出を不特定多数に呼びかけ、回収をするには、やはり廃棄物処理業の許可が必要。
という2点を中心に解説しました。
今日の主題は、昨日使ったチラシに書かれていない内容ではありますが、
最近各地で出没している、駐車場などを利用した廃品の無料回収事業(以降、便宜上「無人回収」と呼びます)は合法か否か、について解説したいと思います。
結論から先に述べると、私は「廃棄物処理業の許可なしに無人回収をするのは違法」と考えています。
昨日の記事では、無人回収と対比させる意味で、「粗大ごみ置き場から有用と思われる廃棄品を回収するのは合法」と書きました。
以降の記事では、このような回収を「ピックアップ」と呼びます。
無人回収とピックアップを対比させると、問題点がわかりやすくなります。
回収方法 | 回収対象 | 占有権の状況 |
ピックアップ | 有用物(と思われる物) | 無主物先占 |
無人回収 | 有価物と無価物が混在 | 元所有者からの占有移転 |
このように、無人回収とピックアップでは、物の占有権の状況が大きく異なります。
ピックアップの場合は、廃棄するため(所有権放棄)に一般廃棄物の回収場所に置かれた後の物品(無主物)を占有する行為です。
他方、無人回収の場合は、廃棄前提で廃棄物を回収事業者に引き渡す(占有移転)させる行為です。
ピックアップと無人回収のもっとも大きな違いは、「占有移転が生じるか」どうかです。
ピックアップする対象物は、粗大ごみ(あるいは不燃ごみ)の回収場所という、外形的に廃棄物であることがわかる場所に置かれた物ですので、誰も所有権や占有権を持っていないことが明らかです。
12/28 12:50 追記
「粗大ごみの回収場所は自治体が管理するものなので、そこから有用物をピックアップするということは、自治体の占有権を侵害するのでは?」というご指摘をいただきました。
筆者としては、このあたりの明確な判例や、具体的に言及した学説は現在存在しないと思っております。
ただし、どちらの見解を取るかによって、刑事罰が適用されるかどうかが明確に分かれますので、筆者とは違う見解も成り立ちうることを併記しておきます。
「駅前に自転車が長期間放置されていたので、ごみと思って自転車を頂戴したら、占有離脱物横領罪になった」
というのとはわけが違います。
ごみ置き場に置かれた物品の占有権を問題にしていたら、廃棄物回収が一切できなくなります(笑)。
もっとも、最近では、各地方自治体の条例によって、
資源ごみについては、回収場所に置かれた時点から抜き取りを禁止しているところがあります。
自治体指定の場所に置かれた古紙やくず鉄を抜き取る行為と、上記のピックアップ行為は別物として考える必要があります。
現在のところ、法的には、条例によって資源ごみのみの持ち去りが禁止されているだけで、粗大ごみや不燃ごみのピックアップは禁止されていません。
もちろん、有用品の選別のために、回収場所をごみで散らかす行為までが認められているわけではありません。
廃棄物の処理委託をする場合は、産業廃棄物を例とすると、本来は排出事業者に処理責任があるところを、処理業者に委託をして処理をしてもらうわけですので、廃棄物の引渡しと占有権の移転が同時に発生しています。
無人回収は、名目上の処理費を徴収していないだけで、元所有者が廃棄物の厄介ばらいをするために、自発的に回収事業者に占有移転をする行為ですので、やはり廃棄物の引渡しと占有権の移転が同時に発生しています。
ピックアップの際には、「廃棄物の引渡し」や「占有権の移転」が生じないことがポイントです。
回収される前に、廃棄物置き場に置かれた段階で、所有権が放棄された無主物となっているからですね。
こうして考えると、無償だからと言って、廃棄物処理法の適用を受けないとは言えないことがご理解いただけると思います。
「無償の引渡し(占有権の移転)」と「無主物先占」では、まったく意味が異なることに留意することが必要と考えています。
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2011年12月28日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:排出事業者の責任