再委託の違法性の整理

今回は、再委託の違法性の整理です。

(第2回)「再委託されたことに気づくタイミング」で登場した企業に再登場していただきます。

・排出事業者(建設工事の元請事業者)
・株式会社下請商店(建設工事の下請事業者であり、産業廃棄物収集運搬業者でもある)
・適当処理株式会社(株式会社下請商店から再委託を受けた産業廃棄物収集運搬業者)
の3者です。

これから、各関係者ごとに、「再委託」に関する廃棄物処理法違反の有無を考察します。

再委託を無断で行った処理業者

まずは、一番わかりやすい、再委託を排出事業者に無断で行った株式会社下請商店から

廃棄物処理法第14条
16 産業廃棄物収集運搬業者は、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を、産業廃棄物処分業者は、産業廃棄物の処分を、それぞれ他人に委託してはならない。ただし、事業者から委託を受けた産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を政令で定める基準に従つて委託する場合その他環境省令で定める場合は、この限りでない。

完全にアウトです。

刑事罰としては、

廃棄物処理法第26条
 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第6条の2第7項、第7条第14項、第12条第6項、第12条の2第6項、第14条第16項又は第14条の4第16項の規定に違反して、一般廃棄物又は産業廃棄物の処理を他人に委託した者

「3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金」と、なかなかに重い罰が規定されています。

ちなみに、第12条第6項は、「産業廃棄物の委託基準」ですので、契約書を作成せずに委託をした場合も、第26条の対象となります。

また、排出事業者に無断で再委託を行った処理業者に対する行政処分としては、環境省は「許可取消が妥当」という判断を示しています。(実際には、事業停止処分でお茶を濁す自治体も多い・・・)

再委託を受けた処理業者

では次に、再委託を受けた「適当処理株式会社」はどうか?

少なくとも、適当処理株式会社は産業廃棄物収集運搬業者ですので、「無許可処理」をしたことにはなりません。

また、「再委託を無断で行った者」への罰則は先述したとおりですが、「再委託を受けた者」への「再委託を受けたこと」に関する罰則はありません。

ここで注意が必要なことは、「再委託を受けたこと」に関する罰則が無いだけで、廃棄物処理法違反が一切成立しないとは言い切れないことです。

たとえば、マニフェストの収集運搬業者欄には、排出事業者が別の業者(今回の例だと「株式会社下請商店」)を記載しているのに、排出事業者と無関係な業者が収集運搬をしても良いかという問題です。

「適当処理株式会社」に対するマニフェストは交付されていないとも言えますので、その場合は、「マニフェストが交付されていない産業廃棄物の引受禁止義務違反」に抵触することになります。

再委託受託者の違法性を問うのが難しいケースとしては、
再委託受託者(適当処理株式会社)も排出事業者の委託先の一つであり、
排出事業者がマニフェストを空欄のまま下請に交付し、下請にマニフェストの記入を委託した場合です。

この状況下では、下請が排出事業者に無断で、収集運搬業者として「適当処理株式会社」を記載すると、マニフェストの外形的には、適当処理株式会社が収集運搬受託者のように見えます。

こうなると、ドライバーが個別の契約状況を把握していることはほとんどありませんので、マニフェストも外形的には適正であるため、そのまま産業廃棄物を回収してしまうことがあり得ます。

また、外形的には、自社を収集運搬受託者と指定するマニフェストの交付も受けていますので、「マニフェストが交付されていない産業廃棄物の引受禁止義務違反」にも抵触しないことになります。

ゆえに、排出事業者としては、再委託を無断で行われないためにも、最低限、マニフェストの委託先業者は自分自身で記載をし、委託先業者欄を空欄のままでマニフェストを交付しないことが不可欠です。

排出事業者

最後に、排出事業者についてですが、
無断で再委託をされているため、再委託されたことに関する罰則はありません。

しかしながら、先の「再委託受託者」と同様、別の方面から廃棄物処理法違反が発生する可能性があります。

その詳細は次の記事で。

本記事は連載の一部ですので、過去記事もお読みいただくと、より理解が進むと思います。

(第1回)委託先業者に無断で再委託された場合の対応
(第2回)再委託されたことに気づくタイミング

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