リサイクル目的であれば、誰でも廃棄物の無償引き受けができるのか?

昨今、PETボトルを回収し、再びPETボトル原料として再生利用する「水平リサイクル」が盛んです。

現在の技術水準では、そのようなリサイクルが十分可能になりましたので、飲料メーカー等にはドンドンそれを進めていただきたいと思っています。

しかしながら、PETボトルの水平リサイクルは、廃棄物処理法の枠内で、飲料メーカーと廃棄物処理業者がタッグを組んで行っている適法な事業であり、「リサイクル」という理念だけを唱えれば、誰でもすぐに適法な事業が行えるわけではありません。

こうした「環境に良い事業をやっている」「理念が素晴らしければ、手段の是非は問わない」という理念だけで突っ走る人たちのことを、個人的には「リサイクル原理主義者」と呼ぶことにしています。

2025年現在、またぞろ過去の「リサイクル原理主義教」が復活の兆しを見せ始めており、SDGs風味を付け加えたさらに悪質な主義主張を目にする機会が増えました。

廃棄物処理業の許可を取得した上で、または適切な廃棄物処理業者とタッグを組んだ上で、廃棄物処理法の範囲内でリサイクルを進めることはまったく問題ありません。

あるいは、原材料として廃棄物を買い付けることに専念し、原材料の仕入れをしているだけ(廃棄物の回収に関与しない)であれば、廃棄物処理法に抵触しません。

やってはいけないことは、廃棄物処理業の許可を持たない事業者が、

  • 「リサイクルするから~」という理念だけで突っ走り、廃棄物を排出事業者から無償で引き取る
  • 「買い取れるものは買い取るので、全量を産業廃棄物処理するよりは安くつきますよ」と、ほんの一部の買取行為を誇張して営業する
  • 「地球に優しい取引なので、リサイクル協力金を負担してください」と、廃棄物処理料金に相当する金品を要求する
    等です。

先日初めて聞いた目新しい事例としては、
「排出事業者が抱えている廃プラスチック類を一度回収し、それを製品へと加工した後で再びその排出事業者に製品を渡す」という、一見すると「加工委託」にも似たキワドイ事業がプレスリリースされていました。

原材料を委託者がすべて提供し、加工後の製品及び原材料の残りをすべて委託者に返却する場合は、廃棄物処理ではなく加工委託と考えることも可能かもしれません。

しかし、加工委託の場合は、製品製造に適した原材料だけを提供することが通例ですので、「雑多な廃プラスチック類一式をすべて提供(回収)」というスキームは、加工委託ではなく、産業廃棄物処理委託と言わざるを得ません。

どうしても加工委託と言い張りたい場合は、ほんの一部を活用して作成した製品と共に、残ったすべての廃プラスチック類(不用物)を委託者に返却する必要があります。

ただそうなると、私が委託者ならば、「不用となった廃プラスチック類はわざわざ返却してくれるな」と考えること間違いありません。

そのため、リサイクル原理主義者は、「産業廃棄物処理の委託ではなく、加工委託を受けただけ」という言い訳をしつつ、大量の不用物を抱き合わせで受け取る(回収する)ことになり、ひどい場合は、不用物を不法投棄という最悪の選択をすることになりがちです。

だからこそ、廃棄物処理法では、「産業廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者」には、産業廃棄物収集運搬業の許可取得を義務づけ、見識や資金余力を持たない不適切な受託者(回収者)によって不法投棄されることを、制度的に禁止・抑制しているのです。

最後に、「無償回収」する場合はどうなのか?

無許可業者が廃棄物処理費を徴収してはならないことは、どなたでも知っている常識ですが、
無償で廃棄物を原材料として引き受ける場合は、無許可営業に該当するのかどうかという問題です。

一般的な行政解釈としては、「行政処分の指針」(現在の最新版は令和3年4月14日付)で示されている「総合判断(説)」に基づいて、その物品が廃棄物か有価物かを判断していくことになります。

このうち、「無償で引き取り」という部分が、「通常の取扱い形態」と「取引価値の有無」に関して、有価物扱いするには不利な判断材料になります。

実際のところは、無償引き取りという一点だけで、多くの自治体は「有価物ではなく廃棄物として扱うので、業許可を取得しない限り、無償回収してはいけない」という指導を行っています。

食品リサイクルに限って言えば、無償回収でも廃棄物処理委託として扱っていないケースがありますが、廃プラスチック類等の工業製品由来の廃棄物の場合は、無償回収すなわち廃棄物処理委託と扱われることが通例ですので、理念の美しさに惑わされずに、地に足のついた事業を行ってください。

「私たち(製造・販売事業者)自身は業許可を持っていないが、私たちが集めた廃棄物は許可業者に委託をするので、ドシドシ廃棄物を任せてください!」なら適法と考える人が多いようですが、これは廃棄物処理法が禁じる「無許可受託」に該当し、同法第25条第十三号の「5年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金、またはこの併科」の対象となります。

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