廃棄物処理制度専門委員会(第7回)の傍聴記

2016年12月15日に東京で開催された、「第7回中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会(以下、「専門委」)」を傍聴してきました。

※配布資料は、「中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会(第7回)の開催について」に掲載されています。

今回の会合の目的は、パブリックコメント募集の対象となる「報告書(案)」の審議でした。

そのため、今さら実質的な議論が起こるはずもなく、大部分が表現上の修辞といった各委員の個人的志向が空しく発露しただけでした。

肝心の報告書(案)ですが、前回(第6回)及び前々回(第5回)で提示された個別論点をそのまま転載しただけのものでした。

その個別論点の出所に遡ると、そのほとんどがヒアリング先の意見です。

ヒアリング先の意見や主張をそのまま載せるだけなのであれば、忙しい学識者や市民運動家の方から有難いご高説を拝聴する必要は無かったですね(苦笑)。

論点の出所が出所だけに、廃棄物処理法制度の問題を抜本的に解決できるような斬新な視点は皆無でありました。

さて、識見高い委員の方々の主要関心事は、「電子マニフェストの普及、あるいは義務化」、「太陽電池モジュールの安定型処分場での処分禁止」、「雑品と称されるスクラップヤードの規制」の3点でした。

面白かったのは、「紙マニフェストの交付状況報告は無意味なので廃止してほしい」という委員の方からの発言に対し、
環境省は、「電子マニフェストを運用していただくと、交付状況報告書を提出する必要は無くなる」と、論点を若干すり替えた答弁をしていたことです。

この発言により、環境省に
交付状況報告を廃止するつもりが無いことがわかりましたし、
電子マニフェストの普及促進のためにも、(嫌がらせのように)(無意味な)交付状況報告手続きを残し続けるつもりだとわかりました。

電子マニフェストを運用した場合、事業者には書類の保管スペースが不要となるメリットその他ありますが、環境省がそれを進めたい最大の理由は、
「行政による廃棄物処理状況の把握が格段に容易になる」ためです。

行政の理想としては、電子マニフェストの完全義務化です。

その手始めとして、報告書案p7に

より適切な管理が求められる一定規模以上の特別管理産業廃棄物を排出する事業者に対し、マニフェスト制度の運用状況に係る総点検も踏まえつつ、電子マニフェストの使用の義務化を検討するとともに、特別管理産業廃棄物の処理を受託する産業廃棄物処理業者に対し、電子マニフェストの使用の義務化を検討すべきである。

と、珍しくなかなか強い調子で改善案を提示しています。

これを実務的に考えると、なかなか難しい側面があります。

即ち、「一定規模以上」とは「特別管理産業廃棄物自体の量」なのか、それとも、「特定の有害物質を含んだ特別管理産業廃棄物の量」なのかによって、定義の仕方が大きく変わります。

「特別管理産業廃棄物自体の量」としても、年毎に排出量が変わることもあるため、「ある年は電子マニフェストが義務」「その翌年は電子マニフェスト運用の義務無し」となる可能性があります。

いずれにせよ、電子マニフェスト導入や運用コスト自体はそれほど巨額になるわけではないため、実際の区切り方はわかりませんが、義務化されたとしても、多くの事業者にとってはそれほど支障は無いものと思います。

その他、さらっと書かれていますが、報告書案5pの「(マニフェスト虚偽記載への)罰則の強化」には、処理業者の方は注意する必要があるでしょう。

非意図的にマニフェストの虚偽記載をしてしまっている処理業者は非常に多いのが現状ですので、罰則強化により、業界内で犯罪者が激増することのないように、正しい運用方法の周知啓発が不可欠と言えます。

もちろん、現時点においても、マニフェストの虚偽記載は犯罪となりますので、今すぐ正しい運用を維持する必要があります。

また、新たな法規制の創設をうかがわせる内容として、報告書案14pに、

そのような生活環境に係る被害が生じるおそれがある性状を有する物の保管や処分をしようとする者について、都道府県等の行政機関登録を受けるなど、都道府県等による一定の規制にかからしめるべきである。

と、雑品等のスクラップヤード規制の可能性が示されています。

「単なる届出だから行政の事務負担は少ない」の考えるのは早計です。

現状でも人手が十分とは言えない地方自治体の現場に対し、さらに煩雑な事務作業を押し付け、他のより重要な規制や監視がおざなりにならないことだけを祈ります。

最後に、筆者個人の最大の関心事は、報告書案18pの「親子会社間における自ら処理の拡大」でしたが、
「この特例の対象は、これから起こる分社化のみを対象として欲しい」という意見しか出ず、実質的な質疑は行われていない状況です。

少しだけ安心したのは、環境省が
「自ら処理の拡大については、廃棄物処理法の重要な部分に関係する内容なので、法制度面からも慎重に検討したい」と発言していたことです。

法律の条文でこのような特例を定義するのは非常に難しいと思いますので、「ひょっとすると、通知で解釈基準の変更を匂わせて終わりになるのではないか!?」という疑念を抱いていました。

実際には通知の発出だけで終わってしまう可能性もありますが、法律の根幹に関わる内容については法律の条文で規定するのが筋というものですので、環境省には慎重な検討を期待しております。

以上が主要な論点に関するまとめですが、
遅くとも来週中にはパブリックコメントの募集が始まり、年明け1月30日(月)の10時半に第8回の専門委が開催され、そこで報告書の中身が固まる予定となっています。

その後、(法改正が必要であれば)国会審議を経た後、改正法の公布という段取りとなります。

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