ヘキサメチレンテトラミン騒動後始末 Vol.1

既報のとおり、昨日は東京まで遠征して、「第3回 利根川水系における取水障害に関する今後の措置に係る検討会」を傍聴してきました。

検討会の議題はそれまでの検討結果の中間とりまとめだったため、審議時間50分ほどで終了しました。

このような中間とりまとめの場では、1時間以内で審議が終わることが通例ですので、驚くべきことではありません。

しかし、現場にいたからこそわかったことがたくさんありました。

今回は、そのうちの1つ、「ヘキサメチレンテトラミンに関する情報提供が義務化されるのか」について触れます。

検討会の会場には、TBS・フジテレビの腕章をつけたTVクルーが取材に来ていましたが、フジテレビは報道しなかったようです(報道していたのならすいません。見落としです)。

下記に、報道各社のサイトで掲載されている内容を転載します。

TBSニュース ホルムアルデヒド原因物質、規制対象に

 今年5月、利根川水系の浄水場で国の基準を超える「ホルムアルデヒド」が検出された問題で、環境省は、原因となった化学物質「ヘキサメチレンテトラミン」を新たに規制の対象にすることを決めました。

 今後は、業者が廃液の処理を委託する際、この物質が含まれているかどうか契約書に記すよう義務付け、違反した場合は罰則の対象となることなどを、近く各自治体に通知する方針です。また、環境省は浄水処理の過程で、ほかにも有害物質が生じる化学物質がないか調べることにしています。(09日17:55)

NHKニュース 廃液処理 含有物質明示を義務づけ

利根川水系の浄水場の水道水から国の基準を超えるホルムアルデヒドが検出された問題で、環境省の検討会は、事業者が廃液の処理を業者に委託する際、ホルムアルデヒドを発生させる化学物質が含まれていることを契約書に明示するよう義務づけることなどを盛り込んだ再発防止策をまとめました。

この問題は、ことし5月、利根川水系の浄水場の水道水から、国の基準を超えるホルムアルデヒドが検出されたもので、群馬県の業者が処理した廃液に含まれていたヘキサメチレンテトラミンという化学物質が浄水場の塩素と反応し、ホルムアルデヒドが発生したとみられています。
この業者は、埼玉県の化学メーカーから廃液の処理を委託されていましたが、原因の物質が含まれていることを伝えられておらず、十分な処理が行われませんでした。
環境省が設けた有識者で作る検討会がまとめた再発防止策では、廃液の処理を業者に委託する際、ヘキサメチレンテトラミンが含まれていることを契約書に明示することを、事業者に義務づけるとしています
また、事故などでこの物質を含む廃液が河川などに流れ出た場合、応急措置を取ることや、都道府県への報告を事業者に義務づけることも、盛り込まれました。
環境省は、必要な政令改正などを行って、再発防止策を速やかに実施したいとしています。

奇しくも、赤字で書いている部分が、2社とも同じことを書いています。

しかし、中間とりまとめ案には、「今後検討すべき事項」として「WDSガイドラインの見直し等」と書かれているにすぎません。
具体的には

 WDSガイドラインの法的位置づけについて整理し、廃棄物処理法施行令及び施行規則で規定される委託基準等の改正の必要性について検討すべきである。
 また、今回の事案の発生を受けて、情報伝達に含める化学物質の選定に当たって、水質汚濁防止法、水道法、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律の規制対象との整合性を図りつつ、WDSガイドラインの見直し等について検討すべきである。

と書かれているにすぎません。

報道にあるように、一足飛びに義務化を明言しているわけではないのです。

確かに、委員である埼玉県の部長からの「今後、HMTに関する記載がないと委託基準違反になるのか」という質問に対し、
環境省産業廃棄物課の課長補佐が「そうです」と回答する場面がありましたが

その前に、
群馬県職員の委員から「HMTは現状でもWDSに掲載するべき物質であるはず。改めてWDSガイドラインに掲載するというのは、現状維持という趣旨か」という質問に、
上記の課長補佐が「HMTをガイドラインに特記することで、改めて注意喚起を図るもの」という趣旨の回答をしていましたので、
環境省としては、HMTを個別に施行規則に盛り込むつもりはないように見えました。

そう考えると、TBSの

この物質が含まれているかどうか契約書に記すよう義務付け、違反した場合は罰則の対象となることなどを、近く各自治体に通知する方針

というのは先走りすぎた表現に思えます。

もちろん、今回は「中間とりまとめ」というだけですので、今後環境省が一念発起して、施行令や施行規則の改正に踏み込む可能性もあります。

そのため、結果的には、TBSの報道のとおりに自体が動く可能性もありますが、それはあくまで可能性の話です。

少なくとも、「中間とりまとめ(案)」ベースでは、WDSガイドラインの改定だけが明確化されており、規則改正にまでは踏み込んでいません。

その他、検討会の開催前に、記者が事前に環境省の課長補佐に対して、
「HMTの記載を処理業者に義務付けるのですか?」という質問をしているのが聞こえてきました。

環境省の課長補佐は、「いえ処理業者ではなく、委託者に義務付けるものです」とちゃんと答えていましたが、
こうしたやりとりが前提となって、「HMT記載漏れが罰則の対象」という勇み足の報道になったように思います。

中間とりまとめ結果

中間取りまとめ案の項目のみを抜粋
(1)当面対応すべき事項
1)(水質汚濁防止法の)指定物質への追加
2)排水処理における留意事項の周知
3)要調査項目への追加
4)廃液の処理委託における情報提供の徹底

(2)今後検討すべき事項
1)HMT以外の物質に関する検討
2)WDSガイドラインの見直し等
3)自主的な排水管理の促進

という内容ですので、残念ながら、非常に形式的な取りまとめだけで終わってしまいました。

なぜそう思うかは、次回のブログで。

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コメント

  1. さくパパ より:

    この件、気になっておりました。
    契約担当者として、情報を集めていました。
    今日は環境省のHPが開けません・・・。

    情報ありがとうございます。

  2. 尾上雅典 より:

    さくパパ 様 コメントありがとうございました。

    今朝から環境省のサイトが一切閲覧できなくなっていますね。

    サイバー攻撃を受けてダウンしたのかと心配しています。


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